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読書感想文「もっと知りたいバウハウス」

実は少し前からイラストのオンラインスクールに入っているのですが、その中で「バウハウス」に出会いました。「全ての造形活動の最終目的は建築である」というバウハウスの理念が何故か頭に残り続けもっと知りたくなりこの本を手に取りました。

書籍情報

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タイトル「もっと知りたい バウハウス」

著者:杣田 佳穂 アート・ビギナーズ・コレクション

バウハウスとは?

1919~1933年の14年間しかこの世に存在しなかった学校がバウハウスです。バウハウスの意味は「建築」。「全ての造形活動の最終目的は建築である」という理念の元に、新しい造形教育とデザインを目指して次々と柔軟にシステムを変え、教師も学生も一体になって試行錯誤を続けた、学校と呼ぶにはあまりにも型破りなスタイルはデザインをかじった程度の私でも非常にそそられるものがありました。

バウハウスの何が凄いのか?

私たちの日常の生活用品や当たり前の価値観にもバウハウスが影響していることが凄いと思いました。ガラスや鉄などの素材が見えていたり、装飾のないデザインは今でこそ当たり前でオシャレですが、120年程前は真逆だったのです。1900年ごろのドイツの雑誌を見てみると細かな装飾に彩られたシャンデリアが最新のデザインとして紹介されています。この当時は「装飾」こそが美しく、美しいものはそこに付属している装飾があるために美しいと思われていたのです。これを聞いて私は美女と野獣に出てくる燭台やティーカップ、時計、衣装棚などが思い浮かびました。そしてこの日用品達が住んでいるのは王子の城、つまりこれらの品物はとても高価で、ベルや私達一般市民には決して手が届かないものだったはずです。

「装飾が豪華な品物が美しい、それらは上級国民だけのもの」という価値観が当たり前の社会でバウハウスが打ち出した作品達が示したメッセージは「素材と形態、構成そのものに美がやどる」というその当時の美意識とは真逆すぎる新しい美意識でした。そして装飾が取り外されたことで生み出された品物達は私達一般市民にも手の届く価格にも関わらず機能性もあり、さらに美しいとあっては当時どれだけの衝撃だったか計り知れません。バウハウスは当時のさまざまなモダニスト達や芸術運動と連動、失敗と成長を繰り返しながら私達が今手にする品物と新しい美意識を私達にプレゼントしてくれていたことを理解した時バウハウスの凄さが一段と身に沁みました。バウハウスの存在がなければニトリの商品はこの世になかったのじゃないかとさえ思えます。

バウハウスを読んでその後

実はバウハウスの作品を最初に見た時の感想は「なんだ、普通にその辺にあるじゃん」という大変失礼なものでした。「今ある当たり前」を作った存在がいるという概念が全くなかったのです。私は最初この本の中で素晴らしいデザインに出会えることや制作のヒントとなるようなものを見つけられることを期待したのですが「歴史を知ることで今ある当たり前のすごさに気づけるんだ」という気づきを得たことが一番勉強になりました。よく歴史を知ることが大事といいますが、日本史や経済史などはどうにも苦手意識があり本を開く気にもなれなかったのですが、この本を読んだいまは積極的に色々な歴史に触れて何が変わったのか、それが今にどう繋がっているのかをもっと知りたいと思えるようになりました。

もちろん、パウルクレーやカンディンスキーなど現代でもオシャレなアーティストを知ることが出来たのも創作意欲を掻き立てられたのでデザインやイラストに興味を持っている人にはぜひ一度読んで見て欲しいです。


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