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よく弾むアフリカマラウイの手作りサッカーボールのヒミツ

マラウイの手作りサッカーボールの中身

「よく弾むな」

マラウイの先輩協力隊員の任地を訪問した時、子どもたちが蹴る手作りのサッカーボールを見て、そう思った。見た目はただのゴミを丸めた球。

よくよく見ると、表面をビニール袋で覆った上から、丈夫そうな素材のひもを器用にしばってふくらみを押さえ、形を整えていた。自ら手に持って地面にバウンドさせると、やはりよく弾んだ。

「中に何が入っているの?」と聞くと、
「チシャンゴだよ」とボールの持ち主の小学生の男の子が答えた。

小学生男子の手作りサッカーボール

「チシャンゴ・・・?」
意味がわからずにいると、
「コンドームのことだよ」と、近くにいたマラウイ人の青年が教えてくれた。

チシャンゴはマラウイのチェワ語で「盾」の意味

草むらに落ちていたのを拾って、膨らませて使っているのだそうだ。もし使用済みのものだとしたら、衛生面のリスクが大きすぎるが、きっとこの子にはそこまでの知識はない。丈夫でよく弾むボールを作るための、最良の材料でしかないのだ。

チシャンゴは、マラウイではよく野外に落ちていて、小学生によく拾われ使われている材料なのだそうだ。ただただサッカーが大好きで、本物のサッカーボールに近づけるために、純粋に改良を重ねてたどり着いた材料が、リスクがあるコンドームだとしたら、何とも言えない気持ちになる。

リスクを回避するには、チシャンゴの代わりに布が中に入った弾まないボールで我慢するしかない。本物のサッカーボールに手が届くマラウイの小学生は、限りなくゼロに近い。

モスキートネット(蚊帳)の使い道

外側に使われていた緑色の丈夫なひもは「モスキートネット(蚊帳)」の切れ端だという。蚊が媒介するマラリアで毎年多くの命が失われるマラウイでは、モスキートネットは1つの生命線だ。

にもかかわらず、モスキートネットはその丈夫さから、漁網に使われたり、洗濯物を干すロープとして使われたり、井戸の水桶をおろすためのロープにしていたり、様々な使われ方をしていたのを目の当たりにした。まさか子どもたちのサッカーボールにまで使われているとは思わなかった。


「先生、〇〇がないからできません」

マラウイでは、自然のものや廃材を利用して、遊び道具を生み出す子どもたちを、そこかしこで見かけた。

すぐに使えるモノがないと「先生、〇〇がないからできません」と、潔くあきらめてしまう日本の子どもたちと比べてしまうと、マラウイの子どもたちのしたたかさが余計に際立つ。

日本の小学校で、子どもたちがドッジボールをしようとしたとき、「石灰が倉庫にしまってあって、鍵がかかっていたから用意できませんでした」なんてことがあった。

石灰がなければ、足で地面にあとをつけてラインの代わりにでもすればいい。聞くと、高学年のその子たちは足でラインをひいたことがなかったのだという。石灰のラインがないとドッジボールができないなんて、なんだか残念だ。

マラウイの人気スポーツは、男子はサッカーで女子はネットボール(バスケに似たスポーツ)。大好きなスポーツをするのに、石灰がないくらいでは、もちろんあきらめることはない。そもそも石灰なんてものはほぼ用意できないから、木工屋さんから分けてもらった木くずをまくか、木の葉を並べて置いてラインとしていた。

木屑は木工屋さんからもらってくる
ネットボールのコートの準備をする女子生徒たち
サッカーのコートを木の葉で作る大学生

「ないからできない」ではなく「どうやったらできるのか」へ

モノがあふれている日本。それに慣れてしまっていつもあるはずのものがないと、「ないからできない」思考に陥ってしまうことがある。

そんな時には、ないないづくしの環境で学んだ「どうやったらできるのか」という思考パターンを思い出したい。

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