なにが理想的だったの?ーー2

さて、なにが自分にとって理想的な暮らしなのか。

私が思いつく第一のことは、自然の豊かさ、四季の美しさ、広大さ、そういったことのようだ。

夏は湖で泳ぐのがちょうどいいくらいの暑さで、車で10分くらいの湖に、毎日のようにそこに暮らす障がい者のひとたちと一緒に泳ぎにいった。ちゃんと監視員のいる、遊泳許可のある湖だ。シャワーやトイレ、小さな売店もあった気がする。どこかから砂を運んできた人工の砂浜が一部に作られていて、その周囲がロープで囲んだ遊泳場になって、監視員もいたのだ。砂浜に寝転んで過ごすことも、小さな木陰で座っていることもできた。ぼんやりのんびりと、午後の数時間を過ごしたものだった。

冬には雪が50㎝くらいは積もったかな。湖は今度は歩けるほどに氷が張る。それどころか氷上用のヨットを滑らせることができた。大きな木製のそりの上にヨットが乗って帆を張ったような乗り物です。実際にはその日は風がなくて、乗って楽しむのではなくて、皆でヨットを押して回ったのだった。氷の張った湖の上で、ふつうの運動靴で歩き回るというのは、それだけで不思議な体験だった。滑るし。

そういえば、いわゆる五大湖から来た人は、五大湖では冬は、湖の上を自動車を走らせて遊ぶのだと言っていたよ。普通の自動車で湖の氷の上を走るのだそうだ。それでわざとスピンさせて、自動車ごとくるくると回って楽しむのだとか。私がいた地域では、そこまでするには氷の厚さが足りないとその人が言っていた。ちょっといろいろ怖い。

湖、小川もあるので、滝もあった。車で20分ほどの範囲に二カ所。一つは高いところから綺麗に落ちて来る滝。そこに行くまでが少し雑木林の中を歩くことになる。もう一つはそんなに高くはないけど、滝つぼで泳ぐ人、そこから川の中を歩いて楽しむ人がいるような楽しみ方ができる滝だった。

思い出すだけでも、自分がそういう場所で暮らしていたことが信じられないくらいの幸運だと思えます。関東地方に住む今となっては、ここで幸せに暮らすのは無理、という結論になってしまうと困るのだけど。まあとにかく。


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