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関西吹奏楽コンクール2022 中学校の部A 感想記録

8月27日(土)に行われた関西吹奏楽コンクール 中学Aについて、オンライン配信を鑑賞したので備忘録的に感想を残しておく。
各団体文末のA/B/Cは僕の好み。(28団体なのでA9/B10/C9の相対評価)
団体名の横に金/銀/銅賞。

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【前半の部】

1.大阪府 関西創価中学校 銀賞
課:Ⅱ 自:富士山-北斎の版画に触発されて- 作曲:真島 俊夫
 朝1っぽいすこし固めな課題曲。音程が上ずるところ、リズム体にブレるところがありながら、基準としては非常に良好
 自由曲は大人気の富士山。卒なくこなしている。これが金よりの銀になれば、総じてレベルの高いコンクールになりそう。(B)

2兵庫県 姫路市立山陽中学校 銀賞

課:Ⅳ 自:交響曲第3番より 1、3、4 作曲:J.バーンズ
 全然人気のない課題曲Ⅳは、曲の構築が難しい割に良さをあまりアピールできないように思う。テンポ感、ノリ、各パートのバランス、正解はいつ聴けるのだろうか・・・。中学生にしたらポップで取り組みやすいのかもしれないが、完成させるのは非常に困難と思われる。
 自由曲はバーンズ。音圧で勝負できないと厳しい昨今のコンクールにおいてはやや力感不足か。音程の問題か、そもそもの問題か・・・。(C)

3兵庫県 西宮市立上甲子園中学校 銀賞
課:Ⅱ 自:三つのジャポニスム 作曲:真島 俊夫
 高木先生の時には関西金賞もとっていた上甲子園中、去年は県落ちだったんだね。先生が変わるタイミングでコロナになると持ち直すのは大変だ。
 課題曲は少しリズム体に不安定なところがあったのが残念。徐々に落ち着きを取り戻していった。
 自由曲、この曲を「三ジャポ」と略す宗派とは縁を切っている。正しく響かせるのは難しいねえ(B)

4京都府 宇治市立東宇治中学校 銅賞
課:Ⅲ 自:「GR」よりシンフォニック・セレクション 作曲:天野 正道
 この課題曲は「どこまで鳴らすか」自体が解釈の範疇にあって、もうそれを聴き比べるだけで楽しい。ここは中学生らしくハツラツと鳴らしている。どこまでいってもハーモニーをどこまで作れるかだなあ。
 少人数でスケールは見せているように思えた。音程ではじかれちゃうかなあ。(C)

5大阪府 大阪市立鯰江中学校 金賞・代表
課:Ⅱ 自:交響詩「ローマの祭り」よりチェルチェンセス、主顕祭 作曲:O.レスピーギ 編曲:森田 一浩
 ちょっとしんどい演奏が続いたからか、卒なくこなしているだけでありがたいように思えてくる。これは出演順で得したんじゃないか。
 チルチェンセスの冒頭のTpよく頑張った。課題曲が短いぶん、1楽章が長めであまり聴かない部分もあり新鮮さがありましたね。全体的に粗さはあるものの、勢いと華があり良好。(A)

6兵庫県 加古川市立加古川中学校 銀賞
課:Ⅱ 自:ブリュッセル・レクイエム 作曲:B.アッペルモント
 特に何もない、といった感じ。ここは配置をキュッとまとめてぶつけてくきている。このホールはどっちがいいんだろう。
 支部レベルでこの自由曲を聴くのは初めて。やっぱり聴き映えほどむずかしくないんだろうな。そしてもうそれはバレているはず。(B)

7兵庫県 宝塚市立宝梅中学校 金賞
課:Ⅲ 自:吹奏楽のための第3組曲(バレエの情景)より 2,3,4 作曲:A.リード
 はじめの響きはとても良かった。この曲はずっっと集中していないといけないので、そこの綻びが少し出たか。
 こちらもはじまりの響きはとても良かった。やはり途中崩れそうになるところはあったけれど、全体としてとても教育的だった。(A)

8滋賀県 野洲市立野洲中学校 銅賞
課:Ⅲ 自:蒼き三日月の夜 作曲:樽屋 雅徳
 こうなってしまうのか、恐ろしい曲だな・・・。どんちゃんしてしまった。
 樽屋の太鼓ドコドコ和風音楽はもう禁止にしよう、全部一緒だから。(C)

9兵庫県 加古川市立浜の宮中学校 銀賞
課:Ⅲ 自:吹奏楽のためのエッセイ2 作曲:福島 弘和
 人数少なくなっちゃったなあ浜の宮。音の力強さは感じられる。ミスしてしまうと目立つのが少人数のつらいところ・・・。
 自由曲は自分の編成を活かした音作りができている。定数の半分でも大編成でやってくる気概は全国的に、評価を難しくさせるポイント。(B)

10大阪府 豊中市立第十一中学校 金賞
課:Ⅱ 自:トリトン・エムファシス 作曲:長生 淳
 入りのファンファーレは後で怒られるんだろうな。音色や響きがやはりここまででは段違いに良い。いやあでも粗いなあ、支部ならこんなものでも通るという計算だろうか・・・。
 こちらも途上、随所にいい響きはみられるなあ。これで全国行けるなら、調整8割でも素材の良さで押し切っちゃう競走馬みたい。(A)

11京都府 精華町立精華西中学校 金賞
課:Ⅱ 自:巨人の肩にのって 作曲:P.グレイアム
 安定感のある課題曲。もう飽きてきたんだけどこの曲・・・。そして謎のアウフタクトはやっぱりだれも綺麗にできない。譜面自体が悪いのか・・・?
 巨人の肩に乗って、もいい演奏をたくさん聴いてきた。スケールは大きくないけれど、安定感のある演奏。個人的には豊中十一より好きだが、これ以上伸びしろがあるかと問われたらそれはまた別の話。(A)

12兵庫県 姫路市立大白書中学校 金賞
課:Ⅲ 自:歌劇「タイス」より  作曲:J.マスネ 編曲:宍倉 晃
 軽い解釈。これは新鮮。音が開き気味ではあるものの、好感の持てる演奏。
 非常に整った演奏、迫力もあるし、時たま崩れかけるところさえ直せば、すごく教育的だし正統派な音作りに称賛。(A)

13和歌山県 和歌山市立西和中学校 銅賞
課:Ⅲ 自:「小組曲」より 1、4 作曲:C.ドビュッシー 編曲:加養 浩幸
 少人数でも頑張っている。比較的綺麗な演奏。しかし油断するとフラットな不協和音を発生させるのがこの曲の恐ろしいところ。
 もはや少人数が大編成で勝負する定番となっていくのだろうか。令和元年の桑山中の演奏は衝撃的だった。比較対象がアレなのは実はとても酷なのではないか。全体としてはとても優秀な演奏。(B)

14滋賀県 守山市立守山南中学校 銅賞
課:Ⅲ 自:ル・シャン・ドゥ・ラムーム・エ・ドゥ・ラ・プリエール 作曲:松下 倫士
 平凡なのが今度は逆に良い印象につながらない順番。健闘。(C)

[前半の部・総評]
序盤は今年の中学生のレベルを心配したが、実力校はしっかりいい演奏をしてくれてよかった。課題曲Ⅱは「卒なくできれば」、課題曲Ⅲは「いかに統一的な解釈で演奏できるか」というところが重視されるべきだと思った。
個人的には豊中十一の評価が非常に心配なところだが、杞憂なのだろう。後半も期待。

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【後半の部】

15大阪府 大阪市立堀江中学校 金賞
課:Ⅲ 自:交響曲第3番「カラー・シンフォニー」より第1、2、5楽章
 作曲:P.スパーク
 音色のズレで響きが濁ってしまうのをどこまで審査員は許容するのだろうか・・・。まっすぐな解釈。
 2016年初演のスパークの作品。キラキラ感をどのように出していくかが聴きどころと思っているが、そこまでには至らず。難しい曲。(B)

16兵庫県 豊岡市立豊岡北中学校 銀賞
課:Ⅱ 自:吹奏楽のための風景詩「陽が昇るとき」より2、4 作曲:高  昌帥
 テンポが揺らいでしまうのが非常に惜しいところ。また、クラリネットの音色って大事なんだなあと、卒業してから実感している。
 自由曲も木管の音色。雰囲気は作りやすい曲だけに、音圧を作り出すのは豊かな音色っていうところを充実させたい。(C)

17和歌山県 海南市立第三中学校 銅賞
課:Ⅳ 自:マードックからの最後の手紙(2021年版) 作曲:樽屋 雅徳
 全国大会にⅣが1団体でもあるといいなあ・・・。音の素軽さはコメディの質に直結する。
 音色・音程。和歌山と滋賀はどうしてもねえ・・・。(C)

18京都府 長岡京市立長岡第二中学校 銅賞
課:Ⅲ 自:「マ・メール・ロワ」より 3、5 作曲:M.ラヴェル 編曲:鈴木 英史
 いや、最初30秒の音程で色が決まってしまうな。あとは審査員も聴いてくれない。
 自由曲の編曲者が課題曲の作曲者と一緒だと、どうしても響きが一本調子になってしまう。それぞれの曲を解釈しなおして、音色を作り直す必要があるんだなあ。(C)

19奈良県 生駒市立生駒中学校 金賞・代表
課:Ⅲ 自:吹奏楽のための風景詩「陽がのぼるとき」より1,4 作曲:高 昌帥
 迫力がありながら安定感のある力強い演奏。綻びもほとんどないし、安心して聴ける。余裕を感じさせる演奏。
 それにしても今回は打楽器をほとんど上にあげて、左右は敢えてスカスカ、キュッとした体系。まっすぐ音を届けようという意図か。音の立ちが抜群。(A+)

20兵庫県 宝塚市立中山五月台中学校 金賞
課:Ⅱ  自:風紋(原典版)  作曲:保科 洋
 整理のついた音色。五月台は昔からずっと、めちゃくちゃクリアで上品な演奏をずっと続けてくれていて好きだなあ。
 自由曲も同じく整理のついた演奏。個々の力に限界が見えてしまうけれど、統率感、一体感は失われていない。生駒とは好対照の演奏。(A)

21奈良県 香芝市立香芝東中学校 銀賞
課:Ⅱ 無辜の祈り 奇跡の一本松~再び海へ~ほんとうの幸福 作曲:樽屋 雅徳
 強い2校のあとはさぞかしやりにくかったろう。音色の点でやはり見劣りしてしまうのがつらいところ。体裁は一定保った秩序のある演奏。
 そしてまた樽屋が太鼓をたたいています。これは禁止してください。(B)

22滋賀県 立命館守山中学校 銀賞
課:Ⅱ  自:復興  作曲:保科 洋
 卒なし。全国常連校特有のきらびやかさってどうしたら出るんだろうねえ。
 もさっとした音色だと、復興できないんだなあ。特に感想が出てこないくらいだと銀賞になりそう。(B)

23大阪府 大阪市立城陽中学校 銅賞
課:Ⅱ 自:森の贈り物  作曲:酒井 格
 ファンファーレの乱れ、そのあと入るメロディの音程、ここで色が決まってしまうのはもう全中学生がわかっていることなんだけど、なかなか難しい。
 この自由曲、良い演奏の率が低いと思うんだよなあ、仕上げにくい何かがあるんだろうか・・・。(C)

24大阪府 吹田市立豊津西中学校 銀賞
課:Ⅳ 自:喜歌劇「小鳥売り」セレクション 作曲:C.ツェラー 編曲:鈴木 英史
 快速に飛ばすことで色を出してきた。これはこれでアリなのかもしれない。そもそもこのⅣを真面目に演奏すること自体がナンセンスなのかも。
 自由曲も終始楽しげで好感。各個人が楽しんで曲に取り組んでいるのならそれ以上のものはなにも要らない。(B)

25大阪府 大阪市立喜連中学校 銀賞 
課:Ⅰ 自:第六の幸福をもたらす宿 作曲:M.アーノルド 編曲:瀬尾 宗利
 かつては全国大会で金賞を取っていた中学校。そのとき先生は前半の鯰江中の南先生。どういう思いで各校の演奏を聴いているのだろうか。
 本日はじめての課題曲Ⅰ。小規模のアンサンブルのパートもあり、全体を響かせる部分もあり、なかなか聴きどころの多い曲だが、よくまとまっている。
 第六は名演を聴きすぎているのが悪いまである。しかしいい曲だよなあ、中学生が取り組むのに何の無理もない。みんなもっと採用してほしい。(B)

26奈良県 平群町立平群中学校 銅賞
課:Ⅱ 自:プラトンの洞窟からの脱出 作曲:S.メリロ
 これくらいの完成度の中学校がたくさんあるってことなんだよな、ほんと県大会は紙一重だと思うし、なにを重要視して練習するかで全く変わってくる。(C)

27兵庫県 加古川市立中部中学校 金賞・代表
課:Ⅲ 自:キリストの復活~ゲツセマネの祈り 作曲:樽屋 雅徳
 落ち着いているけれどハーモニーの精度はまだ途上か。流石の味付けで魅力はある。やはり全国を見据えている団体は曲を作っていく順番が違うのかもしれない。
 この自由曲けっこう採用されているけど、聴きどころの軸が分からないんだよな・・・。響きが物足りないような気がするが、会場ではそんなこともないんだろうと思う。最終盤の畳みかけは見事。(A)

28大阪府 大阪市立梅香中学校 銀賞
課:Ⅰ 自:歌劇「トゥーランドット」より 作曲:G.プッチーニ 編曲:渡辺 秀之・中田 慎哉
 2校目の課題曲Ⅰ、少人数パートになると音色のレベルがばれてしまうきつい課題曲。明日の高校はどうだろうか・・・。全体の響きは統率感がある。音の仕舞い方を今後詰めていくことになるんだろう。
 なんだか今年の全国大会では何回か聴くことになりそうなトゥーランドット。少し疲れが見えたところで乱れがあり、惜しい。ここ数年の全国大会の審査員よろしく、Aが余ったのでここで使っちゃうやつ。(A)

【後半の部を含めた全体の総評】
金賞、代表を狙える実力の団体と、府県大会で落ちても全然不思議じゃない団体とで二分されている印象。またコロナ以前より少人数の団体が増えており、先生方も指導に苦心されていると思われ、ただただ感服。曲選び、編成、配置、どれかを間違えればここには今日立っていなかっただろう子どもたちに、正当に感謝されていればいいが。
 全体としての響きは生駒中が最も正統派な演奏で好感を持った。あとは個人的な趣味で中山五月台、あとは大白書中学校も好きでした。それでもポテンシャルを見せてきた豊中十一、安定感のあった加古中、例年通りこのへんが選ばれるのではないかと思いながら、結果発表を楽しみにしたいと思います。

明日は高校の部、全国金・銀の2団体が出る最終ブロックは取れなかったけれど、1~3ブロックを現地鑑賞。アクリエの新しいホールがどんな感じなのかも楽しみ。朝、しょっぱなに両洋、洛南と続くのが心理的に疲れそうだけれど、しっかり堪能してこよう。姫路のグルメも・・・。

【結果発表を受けて】
鯰江中学校、おめでとう。課題曲も自由曲もともに中学生らしい溌剌とした演奏で好感を持っていたので、評価されてうれしい。まだまだ粗いところがあったので、全国大会でどうなるか非常に楽しみ。
生駒中学校、圧巻だった。全国金賞を確信させる出来だったので、2か月後をワクワクしながら待とうと。
加古川中部、これは評価が分かれるところだと思う。随所にいい響きが見られたものの、まだまだ途上。これが全国大会までに完成していれば、とんでもない演奏になると思う。
そのほか、豊中十一、精華西、大白書、中山五月台と、大混戦だったのではないか。はたから見る分には目がキラキラしてくるし、当人たちのことを思うとしんどくなってくる。特に豊中十一は全国金賞の後、コロナを挟んで2年連続で支部落ち、これは辛い。来年返り咲いてくれることを願う。

しかし中学校は絶対的な学校が存在しないので、エンタメとして面白すぎるなあ。また来年、全然違う勢力図になっていくのかもしれない。

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