炎節
ゲートをくぐりぬけたとたん、ふわっとした空気に包まれた。
オープンエアの空港では、南国の太陽に照らされて、ぼんやりとしたベージュの噴水も、土っぽさが残る彫像も、水が足りなさそうな木々の葉も、何もかもがカラフルに輝いている。
そんな日差しの下へ向かって一歩進むごとに、「タクシー?」と聞かれる。ここでは目的地に行くまで、少なくとも20回は同じ質問を受けないといけない。
予定より2時間遅れてヴィラに辿り着いた。旅の5割は不毛だ。車道はバイクと車で膨れ上がり、観光地では値段をふっかけられ、挙げ句の果てに疲れで連れとけんかになる。
それでも、南国のジリジリとした太陽の下では、すべてがカラフルに彩られてしまう。
星空が近づき、ふわっとした空気はさらっとした手触りに変わった。
ここでは一日のなかで夏が生まれ、夏が終わってゆくのだ。
日々、生まれては消えてゆく夏を慈しみ、夏を惜しみながら、耳元を南風が通り過ぎていった。
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