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大学入試現代文の道標③~C現代文力の高め方(4月~夏休み前 各論1“一文の理解”)

 皆様、こんにちは。現代文科予備校講師の竹中です。

 前回の記事では、4月から夏休み前での現代文勉強法の概要を示しました。以下でおさらいしておきましょう。

〈4月〜夏休み前までの道標〉
 ①まずは「読む力」!=短めの評論から始める
 ②「読める距離」を伸ばして行く!(文→段落→全体)
 ③「読む」ための語彙力を増やす! 

 これらの項目について具体的な勉強法などを紹介していきます。

 ①については、前回の記事でその狙いなどは書いていますので、確認してみてくださいね。今回の記事では、②「読める距離」を延ばしていく!について、詳しくみていきましょう。

◎一文に対する意識のオンオフ!

 「一文なんて、簡単に読めるし!」とお考えの方もいると思います。確かに、普段の日常会話レベルの一文では、僕たちは特に文の構造など気にするまでもなく、文意を自然にとることができます。例えば、下のような文があったとして

(例)今朝は天気が良いので、息子とともに公園で遊んだ。

 まさか、この一文の意味を取るのに「ふむう、主語は省略されているが、息子という名詞から考えると、ここは『私』だな。そして述語は『遊んだ』。修飾語は『公園で」・・」などと、いちいち考えないですよね? おそらくこの一文を見た瞬間に、何も意識せずとも自然に意味が頭に入ってくるはずです。

 自然に意味がとれる文は自然にとっていけばよいだけです。文法研究などの別途の目的でもない限り、文構造に意識を向ける必要はありません。でも、評論文はこのように自然に意味が取れる文ばかりではありません。例えば、下の文を見てください。

(例)意志といえば何か特別なる力があるように思われているが、その実は一の心像より他の心像に移る推移の経験に過ぎない。(西田幾多郎『善の研究』より)

 こうなると、「うっ・・」となる方もいるのではないでしょうか?明らかに先ほどの一文に比べると、すこしとっつきにくい文ですよね。評論文ではこうしたとっつきにくい一文が多々出てきます。こういう一文を見たとき、無意識に意味が取れてしまうような簡単な一文ばかりに慣れている方は、なかなか対応できません。ここが、「読める人」と「読めない人」の最初の差だと思うのです。とっつきにくい一文が出てきたときに、少しでも意識を向け、意味を読み取ろうとする姿勢が大切になるのです。

 ★簡単な一文 
  →意識せずに、自然に意味をとっていく

 ★とっつきにくい一文
  →意識を向けて、意味を読み取ろうとする

 この意識のオンオフの切り替えが、「読める人」は自然にできる(習慣化している)のです。

 ◎文末に意識を向ける!~文末決定性

 では、とっつきにくい一文が出てきたとき、どこに意識を向けるのでしょうか? 

 それを理解するためには、まずは一文の成分を確認する必要があります。小中学校の国語の授業で教わっていると思いますが、覚えていますか?  簡単にまとめてみましょう。

《文の成分》
①主語(主部)=文の主題を示す
②述語(述部)=主語を結論づける。文末で示される。
③修飾語(修飾部)=主に用言を詳しく説明する。
④接続語(接続部)=前後をつなぐ。順接、逆接など。
⑤独立語(独立部)=他の部分から独立している。呼びかけ、感動など。

 以上の5種類です。ああ!あったなぁ~と思いだす程度でOKです(ちなみに、「~語」は一分節、「~部」は二文節以上の時に用いる名称ですが、あまり気にしなくても大丈夫です)。

 では、これらの成分のどこに意識をむければよいのでしょう?

それは、「述語(述部)」です。

「述語(述部)」は、その一文の意味を決定づける極めて重要な働きをもっています。「述語(述部)」は基本的に文末にきます。つまり、日本語は述語のある文末にて意味が決定される言語なのです(このことを「文末決定性」といいます)。その述語にまずは意識を向け、そこから広げていく。こういうイメージで、とっつきにくい一文の一文を理解していきます。

 さきほど例として挙げたこの一文を題材にしてみますね。

(例)意志といえば何か特別なる力があるように思われているが、その実は一の心像より他の心像に移る推移の経験に過ぎない。(西田幾多郎『善の研究』より)

 この一文であれば、

◎文末に意識を向ける!~「推移の経験に過ぎない」

 →「何が?」推移の経験に過ぎないのか? 
  →主語に意識を広げる

 →「何から何に」推移したのか?     
  → 修飾語に意識を広げる

という順番で、少しずつ内容を捉えていきます。

★とっつきにくい一文は、まず文末に意識を向け、そこから広げていく。

 こうした一文の重要性を示しているものとして、柳生先生の本がおすすめです。

 こちらの本では、一文の要素の説明だけでなく、評論、小説の展開パターンまで、非常に読みやすい文体で説明されていますので、初学者の方に特におすすめですよ。問題数は少なめですから、そこまで時間もかかりません。


 いかがでしょうか。一文の理解というと、多くの方が語彙力に目を向けがちです。もちろん語彙力も非常に重要ですし、この記事でもまた説明の機会を設けますが、言葉がどのように扱われているのか、それを決めるのは文章であり、もっといえば一文(もっともっと言えば文末)であることも忘れてはいけません。英語の勉強が「単語」と「文法」の両輪で成り立つのと同様、日本語の理解にも「語彙力」と「文の要素(特に述語)」の両輪が求められるのです。

 さて、これで一文についての各論は終了です。次は、距離をのばし、段落→全体 へと進んで行きましょう。


 



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