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アイドルは恐ろしく、アイデンティティは守りたい

ほとんど完成してる下書きがあったので、仕上げて供養する
2年くらい寝かせてあったのでコクがでてるかもしれない


仕事中のお昼は外食をすることが多い。

外食と言っても、中華料理屋か小汚い喫茶店の2択しかなく、大体は中華料理屋に行く。
小汚い喫茶店は本当に小汚くて、出てくるおしぼりに謎のシミがついていたり、こぼしたお冷やを拭おうとしておしぼりを使うとズボンに大量のホコリがくっついたり、稀に千切りキャベツに髪の毛が混入していたりするので、あまり行かない。からあげが美味しいことが唯一いいところ。

それで中華料理屋に行くと、たまに総務のパートのおばさん(40代後半、ティーンの娘が2人いる)が先客でいることがあり、見かけたら相席してお喋りする。
この人は仕事や家庭生活を堅実にやるタイプのわりにはハジけたところがあるというか、結構アクティブな人で、習い事でダンスをしていたり、平日に飲みに誘ってもノリノリでOKしてくれたり、フィットネスジムに通って身体を動かしていたりと、日々楽しそうに生きている印象がある。

で、タイトルのアイドルの話がやっと出てくる。麻婆飯と台湾拉麺を食べながら聞いた話。

彼女が通っているジムは、世の大多数のジムと同じく様々なフィットネスプログラムがある。インストラクターさんも複数いて、その中にダントツで人気の先生がいると。教え方も上手いが、何よりイケメンで、常連さんの中には彼目当てで通う人もいるとか。
いい歳をしたオバちゃんたちが、運動そっちのけでスタジオで出待ちしていたり、集団になって彼に話しかけに行ったり、新しいウェアを着てはしゃいでいたりするらしい。

そのフィットネスプログラムはコロナの影響で長らく中止されていたのだけど、最近になってオンライン配信で再開した。もちろんイケメン先生のプログラムもある。

配信なので、コメントが付けられる。タイミングが合えば反応を返してもらえる。あと距離が近い。先生がカメラに寄れば、相当なガチ恋距離になる。ハロウィン前の配信では、仮装まで披露したそうだ。全くアイドルさながらだし(実際「会いに行ける身近なアイドル」と公式に言ってるらしい)、いやはやフィットネスジムにこんな知られざる世界があったとは。

「見て~!これ!」と仮装した先生の写真を見せてくれた。見て、喉の奥で変な声が出そうになった。イケメン先生は本当にイケメンで、仮装のための濃いめのメイクがとてもセクシーだった。30代と聞いていたけど、かなり若く見える。危なかった。この人が適度なユーモアをまじえながら快活に喋り、こちらを見て愛想を振りまいてきたら、私も魂を持って行かれるところだった。静止画で助かった。

そう、ようやく辿り着いた本題。優れた容姿には、本能にダイレクトで訴えてくるパワーがあって怖い。特にアイドルは、それを価値として不特定多数に力を振るってくるじゃないですか。プロなので、手法も洗練されているし。
画面越しでこの威力だなんて、絶対に直接お会いしたくない。私はイケメン先生の面影を振り払うのに必死だった。

素直に容姿の魅力に溺れられないのはなんでだろう。
私は中途半端に大人になってしまったみたいで、他人に心の芯を揺さぶられると、恐怖が先に来てしまう。アイデンティティが他者に依存しそうだっていう怖さ。「所詮はアイドル」と割り切れない予感。
気持ちをアタマで考えて、都合の悪い感情は全てなかったことにしたい。

でも、心の変化を拒む気持ちってイケてない。とも思う。
人を好きになるのも、趣味に夢中になるのも、自分を見つめ直すのも、綺麗なものを「綺麗だ」と思うことすら、心が柔らかくないとできないことだし。

心が柔らかすぎると生きるのが大変だけど、心を固く守っても生きるのがつまらない。
一生かけて、ほどよい塩梅を探すの、しんどいような、一周回って面白いような。

何の話かよく分からなくなった。
少なくとも私は生きること自体には前向きみたい。

今日はここで終わりです。それでは。

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