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GLOBIS男性育休経験者座談会vol.2 「じゃあ次は私」休める風土のつくり方

まだまだ多いとはいえない男性の育休取得。前回は、体験者それぞれの、取ろうと思った理由や不安に焦点を当てました。今回は、実際にどんな休暇だったか、取得に際しての課題は何かに迫ります。連載第2回です。(全3回)

育休中は「育児だけ」ではない

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齋藤:育休期間はどのように過ごしていましたか?

黒木
:9ヵ月あったので時期によっても違いますが、産後1ヵ月、とくに生まれて最初の1週間がものすごく大事な時期でしたね。産後のお母さんは、医師や看護師さんから様々なことを教えてもらうんですよね。そこに立ち会ってはいませんが、病院に通って妻から教えてもらい、同じ知識を持って一緒に育児を始めました。妻も初体験のことに自分もちゃんと入るために、認識のズレを防げたのは大きかったですね。

次の1ヵ月は、多くのことが同時に走ります。役所や病院の手続きとか、1つずつは大きくなくても、移動が必要だったり同時に進めないといけないことがあって。産後で体が本調子でないなか妻一人でやるのは大変です。これも育休の意義ですね。

齋藤
:夜泣きが大変だったとか、ご苦労はありましたか?

黒木
:夜は寝るタイプの子どもだったので、すごく助けられました。新生児の時は3時間ごとに授乳が必要なので、最初の方は一緒に起きてオムツを代えたりしました。だんだん妻に任せるようになって、その代わり昼間は私が動くようにしていましたね。

齋藤
:退院後の床上げまでの3週間、サポートしてくれるのは嬉しいです。佐々木さんはどうですか?
  
佐々木:私は上の子をメインにみることにしていたので、朝ごはんづくりと遠方にある小学校の途中まで送っていっていました。上の子が学校へ行っている間は妻と2人なので、下の子をつきっきりで見る必要がなく、自分の時間も結構作れたんですよ。

当時ワールドカップがあったんですけど、サッカーを見たり本を読んだり、一人で散歩に行ったりカフェに入ったり。自分のキャリアを考える時間も作れました。もちろん、妻と交代で子どももみて、上の子が学校から帰ってきたら宿題をみたりしてもいました。

齋藤
:パートナーの反応はどうでしたか?
  
佐々木:第二子の育休は妻のリクエストでもありましたし、精神的な安心感があったとは思います。1人目はグロービスとは別の会社に在籍していましたが、生まれて2~3ヵ月で私が海外出張へ1週間行く、などがあったので……。実は1人目の時は結構不安だった、と言っていたんです。

齋藤
:第1子の時には世間的にも男性の育休はあまりなかったですか?

佐々木
:そうですね。その時も、上司からは「取りなよ」と言われたのですが、社会人2年目でまだ貯金も少なかったですし、それこそお金の面で考えられなかったですね。情報もまだまだ少なかったですし。

スベン
:私は諸手続きがメインですね。外国人なので、おそらく日本人の3倍くらい手続きが必要です。育休の2週間のうち4日間ぐらいは、手続きに関わっていました。区役所、入国管理局、大使館……。妻も外国人なので大使館は2ヵ所。名前もミドルネームがありますから、日本の制度だといろいろ不具合が出ます。子どもが増えると保育園の手続きも重なるのでかなり大変です。第三子の時には、2週間のサバティカルがあっても、ほぼ半分くらいは手続きで使いました。

齋藤
:スべンさんの周りのご友人で、育休が取れなくて大変、という方はいますか?

スベン
:ほとんど外資系に勤めているせいか当たり前に取っています。一人の友達は、もう1年以上休暇を取っていますね。エンジニアで、そもそも自分のチームを持っていないから、長く取れたんですね。仕事の種類や、チームを持っているか否か、マネージャーかどうか、などによって育休の取りやすさは変わるのではないでしょうか。

「取りたいけれどウチは無理」をいつまで続けるか?

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齋藤:スベンさんが育休を取った時は、チームを持っておられましたよね。それでなかなか長い期間は取れなかったと伺いましたが、休むことで周りの人達へはどんな影響がありましたか?

スベン
:自分のチームはヨーロッパ風の文化にして、日頃から「みんな必ず2週間休みを取って」「早く帰って」と伝えていたので、部下の理解はわりとあったと思います。夏休みをとるにしても、普段からエクセルでスケジュールを共有しながら、すごく忙しい時期を避けつつ、みんながちゃんと2週間休みを取れるようにしています。

年間20日の有給も、たとえば数日間しか取らない人もいますよね。「振休ばかり取っていました」と言うから、「それはあなたが土日働いた振休だから、有給と関係ない。ちゃんと有給は100%消化しよう」というルールを作って、MBO(目標管理に向けたコミュニケーション)でも言うようにしています。ただ、日本人にとっては、「え、こんなに休めるの?」「でも仕事の量が増えるんじゃない?」という声もあって。文句、ではなくて、「うーん……」という戸惑う反応ですね。

齋藤
:文化の違いは乗り越えたいと思いますが、実際に1人がお休みされると、周りへの負担や配分が発生するのは、日本も外国も一緒ですよね。外国の人たちが当たり前に取得するとき、チームメンバーはどんな反応ですか?

スベン
:スタンスとしては「じゃあ次は私ですね」という感じです。夏休みもそう。1カ月間の夏休みを取るにも「私は7月、あなたは8月」とバトンタッチでとるので、文句は出ないです。当たり前のことですから。

グロービスでも、社長の堀さんが「2週間休みを取ってね」と言っています。それなのに日本人の同僚は取らない人がまだいるのが驚きです。「社長が言っているのになぜ取らないの?」「いや、ここ日本だから」と。社長が創っている文化なのだから、取ればいいのに。

齋藤
:トップはそうでも、まだまだミドルが追いついていない。

スベン
:中途採用だと、前の会社の文化が残る方もいますよね。私は24歳からずっとここにいるから、グロービスの社風をよく理解しています。だから、私の「部下の育て方」も大事ですよね。

齋藤
:佐々木さんはどうですか?

佐々木
:多分、全く参考にならないです。私は自分が開発を担当しているGAiMERi(AIの学習支援サービス)がまだ世に出ていない段階で休んだので、周囲への負担という意味では、特段大きな影響はありませんでした。

齋藤
:逆に言うと、戻ってきた時に期待されるものがあるからこそ、1ヵ月休めた、という感じですか?

佐々木
:そうですね。入社して9ヵ月ぐらいの頃でしたが、ある程度の成果を出せていましたし、次にやることも明確になっていたというのはあるかもしれません。

齋藤
:例えば今、仮に育休を取るとなった時、課題はありそうですか?

佐々木
:私が抜けると多分、GAiMERiの仕事は何も進まなくなります。なるべく属人化を排するようにはしていますが、なかなか難しいところはありますね。

先ほど有給の話がありましたよね。私は今年度残すところ3カ月でまだ10日残っているので、1月からは週休3日制。木曜日は毎週休みにしました。

齋藤
:黒木さんはどうですか?仕事への影響が出ないような具体的に動きなどあれば。

黒木
:そもそも前職では、属人化を排した状態になっていて引き継ぎは特に必要ない状況だったので、スムーズでした。

今だと状況は違います。スクラム形式で開発をしていて、マスターみたいな役割でやっているので。それをなるべくなくして、チームで順番に回していけるような体制にしてからなら、抜けても大丈夫かなと思えます。

次回、育休が自身のキャリアや組織にどのように影響を与えるのかをお聞きします。