【G1@Clubhouse⑮】2050ゼロエミッションに向けて真正面からエネルギー政策を論じよう
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【G1@Clubhouse⑮】2050ゼロエミッションに向けて真正面からエネルギー政策を論じよう

「GLOBIS知見録」編集部

2月12日22:00 ~23:00に行われたG1@Clubhouse⑮の内容のポイントをご紹介します。*本記事は2021/2/10に公開した知見録の記事を転載しています。

テーマと出演者

テーマ:「2050ゼロエミッションに向けて真正面からエネルギー政策を論じよう」。

出演者:竹内純子(国際環境経済研究所)、大場紀章(エネルギーアナリスト)、堀義人

発言のポイント

※上記出演者のご了解を得たうえで、記録、公開しています。

1)2050年ゼロ・エミッション達成時の、エネルギー源のイメージ

・菅総理が2050年ゼロ・エミッションを掲げたのは良いタイミングだった思う。2050年ネットゼロは世界的にもデフォルト化している。あとは実現性の問題。国民の方々にとって、これはなかなか難しさが分かりにくい問題かもしれない。

・日本の最終エネルギー比率は、電気が3割弱で、あとはガソリンや重油といった非電力。ネットゼロを実現するには車も含めて徹底した電化を進めるとともに、電気自体も再生可能エネルギーや原子力からつくる必要がある。ガソリン、製鉄で使う石炭、家庭で使うガス、産業用ボイラーの重油等、残り8割のエネルギー源を電気や水素にして、その供給体制もインフラも変えるというチャレンジになる。

・再生可能エネルギーを少し増やすとか、省エネをもう少し頑張るといった次元の話ではない。ネットゼロにするということは、ガソリン車は1台も走っておらず、家庭の給湯もガスではなくなっているということ。産業であれば、その分野自体がなくなっているか、すべて電化あるいは水素などを活用しているという意味だ。しかも、その電気や水素が低炭素でつくられている、と。また、実際には輸送用燃料の半分ぐらいがトラック等の物流で消費されており、そうした領域までEVにしなければいけない。

・2050年に電力の総生産量がどれほど増えるかを見通すのも難しい。電化やデジタル化によって2割増えると予測していたが、政府からは5割増との試算も出ている。電力需要という最もプリミティブな見立てすら、今はそんな風に大きな開きがあるなかで、電源に対する投資は悩ましいものになる。

・発電所から出るCO2を回収して地中に埋めるカーボンキャプチャーという技術はあるが、埋めるためのエネルギーのほうが大きくなってしまったら無意味だし、コストやエネルギーのバランスという点ではなかなか難しい。CO2に値段を付けて取引するカーボンプライシングおよびトレーディングでも配慮すべきことは多い。日本はカーボンプライスの負担が低いというが、たとえばFITで再生可能エネルギーに払う補助金等も一種のカーボンプライスなので、こうしたものを足すと結構な負担になる。また、鉄鋼会社や電力会社にだけ負担をかけても結局は行動変容につながらない。CO2に価格が乗ることで消費者の行動変容を起こさないといけないので、負担を見える化することに政治が覚悟を持って取り組む必要がある。

・現在の電源構成は、化石燃料が7~8割で、再生可能エネルギー8%、原子力6%、水力5%といった状況だ。7~8割の火力をゼロにするため何ができるか。また、電力生産をゼロ・エミッションにできるのか。再生可能エネルギーは調整力を必要とする。その変動性にどう対処するかという問題が常につきまとう。蓄電池での対応や電気自動車による調整といったアイディアもあり、コストやビジネスモデルの確立が急がれている。

・化石燃料を使わない火力発電もある。たとえば水素を、再生可能エネルギー、天然ガス、あるいは石炭でつくり、そこで発生したCO2は地下に埋めるというものだ。そのうえで水素から火力発電をすると、煙突からは水蒸気しか出ない。再生可能エネルギーと「ゼロ・エミッション火力発電」という合わせ技で全体のバランスを取るというのも1つの方向性としてはあると思う。

2)2050年時点で日本の電力構成はどうあるべきか

・現在はコストや実現性も含めて明確な形ではどこからも示されていない。非常に難しい課題だ。政府でもエネルギー基本計画の見直しに向けた議論は行われているが、今は電力需要が見えないことに加え、原子力や再生可能エネルギーのコストと可能性、あるいは水素をどれだけ安くつくれるかといった話を含めて、変数が大変多い。

・また、日本は2030年までに13年比CO226%削減という目標を掲げているが、欧州は1990年比で55%減。バイデン政権もこれから50%減に近い数字を出すのではないか。どちらも実現性は低いが、日本が欧米の半分近い数値で良いのかとの見方もある。そこで仮に目標を引き上げるとなると、いよいよ解を描くのが難しくなる。

・当然、再生可能エネルギーも増やすが、日本の太陽光発電量はすでにアメリカと中国に次いで世界3位。今後ボリュームゾーンである洋上風量発電を増やすにせよ、周辺海域は遠浅の渚が少なく風況も欧州からは全く劣るなど環境的に難しい部分もある。今は「ありとあらゆる手段を尽くす」という描き方しかできないように思う。

・FIT導入によって家庭では電気代の10%強が再生可能エネルギーの賦課金に払われるようになった。消費者と産業界が支払う総額は年間2.4兆円。大変な負担だ。一方で、100万キロワット級の原発1基を代替するのに必要な太陽光パネルの面積は山手線内とほぼ同じ。風力ではその3.4倍が必要という。こうした状況でゼロ・エミッションが本当に実現できるのかと思う。「2050年に再生可能エネルギーを50~60%に」というのは、ある種、理想的なスローガンで、そこに積み上げ的な根拠はない。

3)ゼロ・エミッション達成に向けて必要なこと

・今はエネルギー政策がイメージで議論されてしまっている。原子力や石炭・火力の話をすると、「再エネ100%は可能なのに邪魔をしている」と言われたり。原子力を使うリスク、温暖化のリスク、再生可能エネルギー支援のコスト負担で経済を疲弊させるリスクを比較考量しなければならないが、たとえば「ある程度は石炭を併用しつつ低炭素化を出来るかぎり進めよう」といった現実的な移行プランの議論がなかなか交わらない。

・ビル・ゲイツは原子力について、「カーボンフリーで24時間稼働する拡張性の高いエネルギーであり、気候変動への対処として理想的な技術」と言っている。その必要性は多くの人が分かっていると思う。使わなくて済むならそれが1番だが、他の方法でゼロ・エミッションを実現できないなら使う必要がある、と。「2050年ゼロ・エミッション実現には新設を含めた原発利用が必要」と言う議員の方もいる。こういう話はSNSで大炎上したりするが、堂々と議論すべきだと思う。

・いずれにせよ、リスクを伴う発電の投資はロングタームで行う必要がある。そこで政府の方針が明確に出ないのであれば、正直、企業や産業界は動きづらい。政府がゼロ・エミッションを宣言したわけだから、その絵姿も明確に示すべきではないか。

・2050年ゼロ・エミッションに日本は自由化された状況で進もうとしているが、リスクが高い電源に誰も投資はしたくない。再生可能エネルギーのように政策として保護されるものにはお金が付きやすい。しかし、「天然ガス火力に切り替えよう」と言われても、30年後ゼロとなるものに誰が投資をするのか。電力自由化というのは、本来は民間企業が自由に電源を選ぶこと。「電源構成をきちんと出しましょう」という考え方とは、本質的には矛盾している。結果責任が自由化によってなくなってしまっているので。

・2050年ネットゼロのビジョンが掲げられたことでイノベーションが進むことを各国とも期待しているし、それを成長戦略に結び付けようとしており、日本もしたたかさが必要。

・バイデン大統領も気候変動問題に高い関心を持っていると言われるが、その公約はかなり獏としている。5年間で5億枚の太陽光パネルを設置するとか。「どうやって実現するのかな」と思うが、そうした高い数値設定というのは目標でなく挑戦なのだと感じる。それによって、これまで動かなかったものを動かすことが大事なのだと思う。

今後の予定

G1@CH㉒「日本社会の機会平等を担保する-その2)各課題解決の為の具体的行動」カタリバ 今村久美 × リディラバ 安部敏樹 × 東京大学大学院教授 柳川範之 × フローレンス 駒崎弘樹 × 堀義人

G1@CH㉓「河野大臣との対話#2:規制改革の進捗共有」行政改革担当大臣 河野太郎 × 東京大学大学院教授 柳川範之 × サキ・コーポレーション 秋山咲恵 × 堀義人

G1@CH㉔「デザインとコミュニケーションの未来」(coming soon)

G1@CH㉕「アフターデジタル大放談」(coming soon)

G1@CH㉖「障害者が見たコロナ禍」(coming soon)

G1@CH㉗「コロナ禍にバブル後最高値更新:世界経済と金融市場に何が起こっているのか?」(coming soon)

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