日本って世界で121位なんだよ #男女格差
コロナでStay Home中、卒論を提出して学生生活が終了しました。
40ページ分の努力を教授に点数を貰って終えるだけじゃ物足りないし、特に私の日本の友達に読んでもらいたくてnoteでサクッとシェアしようと思います!
卒論の内容はタイトルにもある通り、性差別についてです。
男女格差とか、今の時代もうないでしょ?って思ってる人は少なくないと思います。
けど、153国中121位って、かなりひどくないですか?(World Economic Forum調べ) ちなみに、アラブ首長国連邦より一個下です。
男女平等指数が低い原因は、女性政治家と経営者の割合が圧倒的に少ないことや、法律や制度で女性が活躍しずらくなっていることがあげられています。
それと同時に、個人的に気になった部分が日本人の”男女格差に対する意識”です。差別的な構造の裏には思考や概念の問題があるはず...
だって、こんなに酷いのに、あまり重要な問題として認識されてない気がするんです。
そこで、去年流行語大賞にもなった「#KuToo」をテーマにツイッターを分析しました。
#KuTooを知っていますか ?聞いたことはあるけど、あまり詳しくないという方が多いと思います。
ざっくりまとめると、職場でハイヒールを女性に強要するのは性差別にあたるので廃止しましょう、というフェミニスト運動です。ネット上で3万人以上の署名を集めたことでもニュースになっていました。
この運動がツイッター上でどのように議論されているか?
#KuTooというフェミニスト運動に関する発言から 、日本人のジェンダーに対する考えを分析するといった研究です。
ツイートから6つのフレームパターンを摘出
#KuTooのハッシュタグを使ったツイートをランダムに摘出し 、内容分析という方法でツイートを調べました。
結果、ツイートから6つのフレームパターンにたどり着きました。(「フレーム」とは、写真のフレームやフィルターのように人が物事を理解するための観点のこと。一つの事実でも異なるフレームから見ることによって違う解釈が生まれる)
1. 「労働問題」フレーム
2.「対立」フレーム
3. 「性差別と戦う」フレーム
4. 「女性の選択」フレーム
5. 「社会規範」フレーム
6. 「政治的問題」フレーム
今回は、そのうち特に目立った1,2,4に注目します。
「労働問題」フレーム
一番多く見られたのが、ヒールの強要は性差別の問題ではなく、労働・健康・生産性の問題と捉える「労働問題」フレームです。例えば、
・#KuTooは社会運動である必要はなく、会社と従業員の間で解決するべき
・男性も同じくネクタイや革靴を強要されているので女性に限られた問題ではない(性差別ではなく、規制が「時代遅れ」なだけ)
・ヒールの強要を廃止するべきなのは、主に健康面・安全面で害があるから(もし健康面・安全面が改善すれば、強要は問題ない)
・ヒールの強要を廃止するべきなのは、主に仕事の生産性が損なわれ、社会全体として損失になるから
このように、ヒールを強制することを問題視しているが、労働問題と認識しているケースが多く見られます。
「対立」フレーム
次は、#KuTooを社会運動として議論するより、流行語大賞になったことや中心人物である石川優実さん個人に対する賛否を争う「対立」フレームです。例えば、
・#KuTooが流行語大賞を受賞したことについての疑問
・支持者 vs 反対者 の争いとして自分のスタンスを主張し、相手を非難することが趣旨
・#KuToo運動ではなく、石川さんに対する個人的な攻撃
この様に、性差別の問題から論点がずれていることがわかります。
「女性の選択」フレーム
最後に、ハイヒールの着用は社会的問題ではなく、女性自らの責任であると想定する「女性の選択」フレームです。例えば、
・ヒールを強要されることが気に入らない場合、女性は職種・勤務先を変えるべき
・ヒールを強制されることが問題なのは、女性が自分の足に合わないヒールを履いているから(足に合ったヒールを選べば問題はない)
・ヒールは実際に企業側から強制されていなく、女性が暗黙のルールで自身を押しつけている。このルールを破ればいい
・女性は、女性らしさを磨く為に好んでヒールを履いている
など、ヒールの着用は社会的問題ではなく女性の自由な選択次第で解決出来るという主張が多くみられます。
フレームからわかること:政治色を避ける傾向
調査前は、あからさまに#KuTooに反対する「アンチ」ツイートが目立つだろうと想定していました。
ところが、多くのユーザーは「ヒール強制を廃止すること」に賛同しているため、表面上は#KuTooは支持を得ている様に見受けられます。
しかし、#KuTooを肯定しつつも女性差別の問題として扱っていないことや、ヒール強制は差別だと認識しつつも社会運動としての必要性を否定する意見から以下の男女関係に関する固定概念が潜在していることがわかります。
1. 職場の規制は「ビジネスマナー」として男女共に従わなければいけないものであり、女性は過剰反応している
→「女性差別の問題」という軸をなくすことで、「ヒール肯定派vsヒール反対派」の議論になる。#KuToo賛同者は「たかがヒールで文句を言う」ヒステリックなフェミニスト、というレッテルを貼られる
→ 男女共に従わなければいけない基準があるので、女性は静かに我慢するべき
2. 全体的に、政治色を嫌う傾向。容易に物事を「差別」とみなすことに抵抗
→ 労働・健康問題として扱えば、一般的な理解を得やすい。しかし、女性差別だという主張は、既存する男女関係や社会の一体性を崩すので避けるべき
→ フェミニズムの運動は過激とみなされ関わりずらい
3. 女性の問題は公的な場(社会運動・著名活動)ではなく、私的な場(社内・女性自身の行動)で解決するべき
→ 女性の問題は人権問題として扱う価値がない
→ 社会運動として受け入れないことで女性は個人で戦わなくてはいけなくなる
→ 流行語大賞という大衆向けの域に社会運動が含まれることに違和感
よって、一見#KuTooに賛同しているように見えるツイートも、女性差別という軸を否定することで、本質的な問題解決に繋がっていないことが明らかです。
ヒールを強制する制度がなくなれば解決する問題ではない
署名活動の効果もありか、企業がヒールの強制をなくす報道も見られました。
それは#KuTooの成果に違いはありませんが、構造的な男女格差の問題は解決されているのでしょうか?
たくさんの疑問点は残ります。
・ヒールは無くされても、女性は男性よりも外面的に求められることが大きい(「職場の花」としての立ち位置は変わらない)
・政治的な発言や行動をする女性に抱くイメージが圧倒的に悪い(ただ注目を浴びたいだけ、女性らしくない、過激派、等)
・フェミニスト運動に対するメディアの注目度が低い
など。
性差別に対する概念が変わらないと、規制で差別はなくなりません。
しかし#KuTooを通して職場の女性差別が初めて認知されたり、声をあげる人が増えたことも事実で、日本で女性差別の議論がやっと始まったとも言えます。
もっと話をしよう
この記事を読んでくれただけで、日本の男女格差の実態について少しわかってくれたと思います。
もっと興味が沸いたなら尚更嬉しいです。
男女格差に限らず、日常の会話では避けてしまう問題についても意見を交わし合うことが当たり前な社会になったらいいな、と思います。
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