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【絵日記】こんなコロナなご時世ですが#こんコロ2021

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2021年4月25日から、「こんなコロナのご時世ですが2 #こんコロ2 」を連載します。 2020年春、緊急事態宣言発令を受け、mokumoku studioはこの未曾有な時間を…
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#創作

【絵日記#こんコロ-DAY50】 裸足きもちいい

文 掛田智子 絵 ちから 裸足になって砂浜を歩いた 太陽であったまった砂が心地よくて なんでもっと早くこうしなかったんだろう なんで自分にこうさせてあげなかったんだろう あまりの気持ち良さに 自分に申し訳なかった 海の水はまだ冷たくて 足をずぶずぶ砂浜に埋めて 波のとらえられない模様と 泡泡を見ていると 時間を忘れられた 私は自分に気持ちが良いこと させてあげてなかったんだ なんて無理ばっかり させていたんだろう 自分に申し訳なかった 砂浜は気持ち良くて 貝殻の

【絵日記#こんコロ-DAY49】 穴のはなし

文 掛田智子 絵 ちから 私がもっと若かったころ 女性として欲される事によって 自分が肯定されている 自分は存在している と感じていた なぜかわからないけれど 大きくぽっかり空いた穴があって 自分にはその穴をのぞき込む勇気はなく ただ埋められるのを待っていた あるいはその穴の上に きれいな絨毯を敷いて しばらく穴が無かったかのように ふるまうこともあった その穴は確実にまだ存在する 穴との付き合い方もみんなそれぞれで 大小あれど持っているかもしれない 埋めるので

【絵日記#こんコロ-DAY48】 デイリー脱力プラクティス

文 掛田智子 絵 ちから 海にプカプカ浮く夢を見た 砂浜はなくて そこはもう海で 勇気を持って 両手を広げた 焼けちゃうわと不安になりながら あまりの気持ちよさ あまりの解放感 これこれ これを探し求めていたのよ 海よ 私は全身の力を抜けられてた? あなたという存在に 全体重全精神あずけられてた? ヨガのプラクティスでも 力を抜ききるのが難しい 日常生活でも ギアを上げることは簡単にできても 自分の解放難しい こわい でもひゅっと力を抜くことができれば もっとら

【絵日記#こんコロ-DAY47】 大人のかお 子どものかお

文 掛田智子 絵 ちから ときどきある 小学校のときの同級生の大人バージョンに出会うとき 広島で通った学校の同級生に東京の道端で出会う可能性は少ない その人の事を日常で思い出す事なんてまったくないけど なぜか道ゆく見知らぬ人を見て あの子が大きくなったらきっとこんなふう そう思うことがある その子が着ていた服や持ち物まではっきり思い出す 得意だった教科 言い放ったジョーク 冷たい瞬間 つながれた瞬間 自分が覚えてると思ってることなんて結構あやふやで 忘れてたことも

【絵日記#こんコロ-DAY30】 広島名物 メロンパン -坂の途中の緑の看板

私はあまりパン食いではないのだが 広島に帰省すると追い求めるパンがある 広島県呉市 メロンパン 看板商品のメロンパンはずっしり重く、甘いクッキー生地の中に メロン風味のクリームがたくさん詰まっている もったりずっしり感は他のメロンパンとは一線を画す。 ナナパン、平和パンという伝説の強者たちも名を連ねる 母の実家が呉であるため、祖父母宅への道中でよく立ち寄った 車で行ってもとても不便なところにある 決して洗練されていて、美しいと褒めたくなるような街ではなく 市民の派手で

【絵日記#こんコロ-DAY29】 今週は忙しい。(明日から働きたくない)

なんだってどうだって。 今週が終われば、来週だけは。 これこれは私のキャリアにどうのこうのでコロナだのなんの。もう正しいタイミングなんて。 ビールは梅雨の時期こそどうの。 オリンピックは今年は安全だとかどうの。 あなたは私の感情逆撫でていかが。 日も暮れあなたとわたし。

【絵日記#こんコロ-DAY28】 今日も洗濯物が乾かない

朝目覚めて、空を見上げる。 ああ、今日も洗濯物が乾かない。 いや、天気予報がどれだけ雨と叫ぼうとも どんより雲が空を覆ってても 決めたんだ。私は今日洗濯すると。 決心は揺るがない。 お風呂上がりにふわっとしたタオルに顔をうずめたい。私欲野望に溢れたこの世で、ささやかな望みじゃないか。それには太陽さんの力が必要なんだ。 私は洗濯が好き。 気持ちがさっぱり「やった感」があるからだ。 洗うが易し。干すが易し。 乾くのが、こんなに大変だとは。 少しだけ、おひさまがさして

【絵日記#こんコロ-DAY27】 もやもやをもやもやのままにする勇気

スーパーのお惣菜売り場をぐるぐるする。 お腹がすいていて、今日は何も作りたくないとわかっている。 他の店を探求する時間も体力もない。 お惣菜売り場に並ぶ品物は美味しそうではあるが、どれもピンとこない。 ぐるぐる何度まわっても品物が変わるわけではない。 結局妥協していくつか晩酌のつまみになりそうなお惣菜を選び、カゴにいれる。 何を食べてもしっくりこない。体も心も満足していない。 朝、出かける前に鏡の前で格闘する。 何を着ても似合わない。 何を着たいのかわからない。 この

【絵日記#こんコロ-DAY26】 年齢、ぐわんぐわん

私もいよいよ、社会的な定義だと「いい歳」と呼ばれる年齢になったのだろう。 大人がよく言う、歳のこと。 歳をとったから歳なのだから歳なのに。 私は無関係だし、これからも関係なく生きる。 身体の変化を感じる。 私の皮膚、血液、髪、爪。 一緒に生きて、呼吸してくれてる。 皮膚は私と社会を結びながら隔て、髪は私とは何者かを私の代わりに静かに叫び、胃は私の心が食べすぎたなにかを懸命に消化する。 時にははしゃぎすぎてる夏の子どもであり クリスマスを待ちわびる老婆であり 制服をカ

【絵日記#こんコロ-DAY25】 雨の日のイノベーション

雨は嫌いではない。 雨音を聞くのが好きだし、雨のにおいも好き。 車が走り去る時の音も好き。 だけどどうしても雨の日はめんどくさい。 荷物がひとつ増えるからだ。 可愛い傘を広げればよい。だけど、雨という地球の歴史が始まってから変わらずあるであろう自然現象に対して、人間の雨を避けるという、あるいは濡れないようにする、という方法はどれぐらい進化しているのだろうか。 こんなにデジタル化が進み、不可能が可能になる世の中なのに、「傘をさして雨を避ける」という方法はあまりにも古典的

【絵日記#こんコロ-DAY24】 犬の耳の裏のにおい

新聞の記事で「動物園のにおいがきついのでなんとかして欲しい」という苦情に対して、その動物園の園長さんがブログで「消臭剤や芳香スプレーにあふれる現代では、ネットで動物の画像を検索して楽しめば良いのかもしれない。でもにおいは動物にとって大切なコミュニケーション方法で、『嗅ぐ』ことも楽しんで欲しい」と回答をしていた。 実家にいる犬に会いたくて、毎日のように写真を見てはニヤニヤしているのだが、やっぱりにおいはどうにもならない。あのなんとも言葉では説明できない、耳の裏の匂いを、肉

【絵日記#こんコロ-DAY23】 漂流教室と今年の梅雨

日本の一部では例年よりも随分早く梅雨入りしたそうだ。 これから去年のような長雨が続くと思うと、世界で指折りの楽観主義者の私でさえも気が落ち込んでしまう。 最近ふと思い立ち、楳図かずお先生の名作「漂流教室」を読み返した。最後に読んでから10年以上経過していると思う。 1970年代に描かれたその作品では、ある小学校が学校ごと未来の東京に移動してしまい、変わり果てた環境の中で小学生達が必死で生き延びようとする様が表現されている。 未来の世界は、スモッグで空が覆われているため

【絵日記#こんコロ-DAY22】 昼寝はべつ腹

私は昼寝が好きだ。 もっと正確に言うと昼寝で得られる感覚が好きだ。 昼寝は夜のそれとは異質で、より現実の体験を引きずっているのか夢を見ても妙になまなましい。 科学的な事はわからないが、脳がまだ半分覚醒している状態で眠りに落ちるからか、「映画を見ている感覚」で、夢を見ている自分を客観視している自分さえもいる。エンターテイメント性がある。ああ、興味深かった。と満足して目覚める時もある。 昼間の光を取り込んで、昼間の夢を見ることも多いし、奇妙にも明るい雰囲気に満ちているこ

【絵日記#こんコロ-DAY21】 私はさか上がりと跳び箱ができないそして今は誇りを持っている

体育の授業は苦痛だった。運動神経がそれはそれは悪い私は、何をやってもダメだった。ドッジボール、マット運動、徒競走。良い思い出が全くない。 さか上がりがどうしてもできなくて、母と放課後の学校の運動場で泣きながら特訓したのだけれど結局一回もできたことがない。 明日は跳び箱をやります。それは地獄への招待状。一晩中憂鬱な気分にさせた。家で布団を敷き詰めて、母にマット運動を教えてもらったっけ。後ろ回りができなくて。熱が入りすぎた母は、頸肩腕を痛めてしまった。 縄跳びの二重跳び