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熊本地震前に、十八間櫓の中央部が膨張していたという事実。
2016年4月14日、16日に熊本県を襲った熊本地震。写真のように、威風堂々とした難攻不落の名城と言われた熊本城の、殆どの櫓や石垣が崩落したのである。
上下のモノクローム写真だが、これは熊本地震の半年前に撮影したものだが、十八間櫓の石垣中央部(上の赤い○を参照)にとても違和感を持った筆者であった。
石垣の薄い上層部は、以前復元される時に積まれた石垣。その下が、昔から残る石垣である。石垣の反りは『武者返し』(むしゃがえし)と呼び、外敵が城内に侵入し難く設計されている。
熊本地震前までは、毎週のように熊本城内の櫓や城郭を撮影していたが、熊本地震第1波翌日の4月15日に様子を見に行ったところ、この十八間櫓の崩落を最初に目にしたのだった。
歩道を行き来する人たちが、立ち止まり呆然としていたことを思い出す。この美しい石垣が瓦礫と化している。手前の公道近くまで石垣の大きな石がゴロゴロと転がってきており、非常に危険な状態であった。
しかし、この時点で、翌日4月16日に、更に強い地震に見舞われるとは、全く予測していなかった。その後、再び足を運び入れた時は、不落の名城が想定外にダメージを受けていた(最後の写真参照)。その被害の大きさに、体も思考も固まってしまった。
同地震後に、公益財団法人 文化財建造物保存技術協会(東京)の重鎮より連絡が入り、筆者が撮影していた地震前の写真を提供してはどうかとの提案があった。よって、後日、熊本城復興事業所へ、百数十枚の地震前の熊本城写真を寄贈したのである。
その後、何も連絡がないので、役に立ったかどうかは分からないが、少なからずとも、何らかのデータとして使って頂いたと思っている。
しかし、地震は怖い。轟々という地鳴りと共に、急に体全体にショックを受けて、脳が揺れる。安全地帯へ行きたくても、即座に足が動かない。生きた心地がしないとは、こういうことなのだろうと、思い出すだけでも鳥肌ものだ。
二度とこのような地震に遭遇したくはないが、自然の脅威に遭遇し、身の危険を感じたのは、30年ほど前の台風19号以来二度目であった。
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