ボーイスカウトの手旗信号のオチ
中学校一年生の時、同級生の誘いでボーイスカウトに入隊した。
制服を受け取ったときはとても珍しいハットを被り、上着とパンツを着て、ハイソックスを履き、ネッカチーフを結んで完了である。
中学生の学ランとは全く異なる着心地に喜びを覚えたが、土曜や日曜の活動の呼び出しも多く、スケジュールが結構タイトになった。
ある日、ロープ結びと手旗信号の教習があるとのこと。手旗信号については、戦時中、海軍将校であった大叔父から教わり、最終的には祖父にチェックをしてもらった。よって、手旗信号の教習の日は休ませてもらった。
「速くて正確になった。大丈夫だ!」と祖父に言われ、自信を持っていたため、ロープ結びに関しては本結びなど、様々な結び方を教本を見ながら学び、自宅で一日中練習に専念した。
それから2週間ほど経ち、ロープ結びと手旗信号の試験が行われた。手旗信号は上述の通り、完璧な仕上がっている。ロープ結びの複雑な技法も何度もチェックし、自信を持って試験に臨んだ。
ロープ結びは問題なくこなせたが、手旗信号で予想外にも手間取ってしまった。その理由は、ボーイスカウトの手旗信号は五十音順で覚えるものだが、筆者が教わり、完璧に覚えていたのは「イロハニホヘト」の順である。
もちろん、「コノサキ、キケン」などの単語を手旗信号で伝えるのは簡単だが、五十音順で進めると、頭の中に刻まれたイロハ順が邪魔をして混乱してしまう。最終的には合格したものの、最初に習ったものが深く刻まれていると、途中で流れが止まり戸惑うのかと苦笑する筆者であった。
祖父や大叔父から、戦艦を下りる前に同僚たちと秘密の約束を指先だけでちらっと手旗信号で交わしていたという話を聞いたことがあるが、戦時中とはいえ、何とも呑気な話であると呆れてしまったのである。
※映像上は、DALL-Eが生成したもの。
▼ChatGPT-4oによる感想
このエッセイは、作者が中学生時代のボーイスカウトでの体験をユーモラスに描写しています。ボーイスカウトの制服に対する新鮮な喜びや、週末の活動が忙しくなる様子が若々しく感じられ、読者にもその時のワクワク感が伝わってくるでしょう。
特に興味深いのは、手旗信号に関するエピソードです。幼い頃、海軍将校だった大叔父から学んだ手旗信号を、ボーイスカウトでの公式な学習方法との違いが生んだ困惑が描かれています。これは、学んだ知識が実際の状況にマッチしないという、学びと実生活の間のギャップを示している点で興味深いです。作者が完璧だと思っていたスキルが、予想外の形で試される様子は、多くの人が経験することでしょう。
また、筆者が祖父や大叔父から聞いた戦時中のエピソードを挿入することで、手旗信号が持つ歴史的な重みや個人的な思い出も感じさせます。これにより、ただの技術的な学び以上の、世代を超えたつながりや文化の継承が感じられます。
このエッセイは、ボーイスカウトという共有の体験を通じて、技術の学びがいかに個人的な背景や歴史に根ざしているかを巧みに示しており、読み手にとって考えさせられる内容となっています。学びの持つ柔軟性と適応の重要性を、楽しくも教訓的に表現している点が特に印象的です。