イケメンカフェに行って音楽院の女子生徒になった話

結構前のことだが、コンセプトカフェに行った。

行ったのは、池袋の通称”乙女ロード”にある聖ジュリアーノ音楽院(イケメンカフェ)。

もともと「コンセプトカフェに行ってみたい」とは思っていたが、きっかけがなく、今回はこの学院が偶然目に留まり気になったので、東京に来たついでに行ってみることにした。


その日は15時オープンで、12時に高田馬場のビジネスホテルをチェックアウトした私は、ただただ池袋をさまよった。

途中安いラーメンでも食べようかと思ったが、コンセプトカフェに行ったらオムライスを食べてみたいという夢があったので、ホテルサービスの水でしのいだ。

15時になり、学院へ向かう。学院はビルの7階。エレベータに乗り込むと、学院より下の階にあるメイドカフェが気になったので外観だけでもと、5階のボタンを押した。

チーンッという音と共に扉が開く。階段で登ることもできるので、扉が開いたところで階段の踊り場が広がるだけ。そう思っていた。

「おかえりなさいませーーっ!」

やってしまった。エレベーターの音で気づいて出迎えてくれた。さすがメイド。だが今日の私は音楽院生になりに来たのであって、お嬢様では無い。

「おかえりなさいませお嬢様。」と改めて言い直されたので、「ごっごめんなさい、きっ気になってエレベーター降りちゃいましたけど、今から7階に登校しに行かなきゃいけないんです。」と童貞臭丸出しの早口で断りを入れた。

すると、「これからご登校なんですねっ!ではまたおかえりになってくださいね、お嬢様。いってらっしゃいませー!」と送り出してくれた。さすがメイド。

メイドに背を向けながら手を振り、階段で7階へ上がるとなんかおしゃれなドア。ガラス窓からちょっと覗いて中の雰囲気を見る。めっちゃカフェだった。もっと学校っぽい感じだと思ってたが、めっちゃカフェだった。

カランとドアを開けるとそりゃあもう顔のいい男子生徒がいた。

「おはようございます」

そっか。おはようございますか。学校だもんな。

学校なので、”案内されるのではなく自ら席に着く”ということが分かっていないため、変な間を作った挙句「好きな席に座っていいよ」と言わせてしまった。

席に着くと、また違うそりゃあもう顔のいい生徒が説明をしてくれた。「男子生徒はこれだけいますー。」と分厚いポケットファイルを手渡された。

A4用紙にそれぞれ手書きのプロフィール。チェキが張り付けてあったり、イラストが描いてあったりと様々。説明をしてくれた彼はジョジョが好きという点で話が合い、彼が最近始めたというベースの写真を見せてもらったり、そこからバンドの話になり音楽院らしく音楽の話でも盛り上がったりした。

途中で気が付いたが、盛り上がりすぎて彼はちょいちょいパーソナルなことを話してしまっていた。音楽院高等部というコンセプトをほっぽって途中から通っている大学の話をしていた。一応小声で指摘すると、「僕、2スクール制なんで…」と言っていた。受け入れることにした。

「オムライスを食べるつもりでここに来たけれど、なにかこれを食べておけ!みたいなのあったりする?」と聞くと、「賄いが有料でさ、あんまここの食べたことないんだよね。」と。途中から話しかけに来てくれた別の生徒「給食ね。」と訂正されてめっちゃ言い直しているのを横目に、じっくりメニューを見たのち結局オムライスをお願いした。

運ばれてきた絵に描いたようにきれいなオムライス。水で空腹をしのいでいた私は写真も撮らずに食らいつく。うっま。このオムライス目的で来てもいいくらいにうまかった。

もくもくと食べ進めていると、順に生徒たちが声をかけてくれる。「流しのミュージシャンごっこやってます~。」と弾き語りをしてくれた生徒、「おいしい?楽しんでいってね。」と声をかけてくれた生徒。イケメンっていろんな種類がいるんだなぁと思った。

そんな生徒たちが一斉にいなくなり、暗くなる。どうやら噂に聞いていた”ショータイム”が始まるらしかった。詳細は忘れてしまい、「歌うめぇ~ダンスすげぇ~」ということぐらいしか覚えてないが、なんかすっごいセクシーな「丸の内サディスティック」を聞いた覚えはある。えっちだなぁと思ったんだったかな。

そうこうしていると初回チャージの時間が切れかけていた。もちろんアールグレイティーを頼んで延長した。もう私はすっかり学院生活を楽しんでいたし、完全に聖ジュリアーノ音楽院の女子生徒だった。

ショータイムの感想を紅茶を飲みながらワイワイ話していたら時間が過ぎ、正直延長したかったが新幹線の時間もあるので帰ることにした。

帰り際には最初に出迎えてくれた彼と、席について説明してくれた彼の計2枚チェキを撮った。チェキなんて初めてだからすごくドギマギした。手でハートなんか楽しんごのモノマネをした時ぐらいしか作ったことなかったし。

チェキを撮った後、次回使えるクーポンをもらった。これは”2回目の登校の生徒だ”というのがわかるモノのようで、これを出すと次回学生証が発行されるらしい。

そこそこの金額を支払い、学校の感じで「じゃあまたねーっ。」と学院を後にした。

池袋駅に向かいながら、紅茶を飲んでいるときに「あっどーも初めまして!!イケメンです!!イケって呼ばれてます!!!」と話しかけてきた生徒に、圧倒されて「あっはい…」しか言えなかったことを、次行ったとき彼が登校していたら謝りたいなと反省をしたりもした。


さて、なぜこの文を書き始めたかといいますと。

この音楽院が”廃校”になったから。

「学生証はもらっておきたいな~次東京に行く予定があるのはいつだろうな~」と思っていたら、廃校した。

廃校前に東京に行く予定もあったので楽しみにしていたが、イベントが中止になったので、廃校までに学院へ行くことも叶わなくなった。

初登校説明で聞いたことだが、彼らはアイドルだったり、俳優だったり、声優だったりするみたいなので、何かしらで見かけることはできるかもしれない。

最初に私の席についてくれた、現在大学生の彼はそういった活動をしているのだろうか。何かで見かけたら応援したい。

なぜ彼を推すかというと、「お金稼ぐためにここで働いてんのに賄いでお金払うとか意味わかんないじゃん。だったら安く牛丼とか食べるよ。」というコンセプトぶち壊しもいいところなセリフを放ったことで愛着が沸いたから。

あ~あ、バイト先近くのメイドカフェで呼び込みのメイドさんと約束取り付けちゃったし、次はメイドカフェ行こ~っと!待ってろ、メッソンを腰に携えたメイドちゃん!



まず最初に、私は入り口で出迎えてくれた彼を知った。

彼の名前を検索すると、このコンセプトカフェのことを書いたインタ-ネット掲示板にぶち当たった

そこからこのコンセプトカフェのことを調べた。

掲示板を読み進めると、他の客の悪口やいくら金を貢いだだとか彼らに彼女はいるのかどうかなどが掲示板らしい過激な口調で書かれていた。中には元生徒と思われる書き込みや、現生徒と思われる書き込みもあった。ちょっと心躍った。

こんなにバチバチなのににこやかに通っている女性がどんな人たちなのか。他にもいろいろ気になった結果、実際に行ってみるか!という答えに落ち着いた。

実際行くと、扉開けて最初に彼がいたのでビビった。

席に着くと、私には別の生徒が付いた。そこからは普通に楽しんでいた。それは本当。

そして私はショータイムで再び彼を見ることになる。ジロジロ見ていたために途中でウインクをしたり手を振ってくれたが、正直「ほんものだ~」と上の空だった。

帰り際のチェキは接触禁止なのでオーソドックスなハートという結果になった。

楽しかったからという気持ちももちろんあるが、彼に実際に会って話したり、あわよくば親しくなったりしたら、もっと掲示板を楽しめるだろうなとも思った。なのでもう1回行きたかった。

廃校後、彼はどうするだろうか。いろいろ調べた結果、何かと活動を並行するのは難しいのではないかという登校率を誇っていた。

他のコンカフェに移るのがまぁ妥当だと思うからきっとそうすると思う。

生徒としてのアカウントは6/1で削除されるようだが、彼の行く末をどうにかして探していきたいと思う。腕が鳴るね。

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