三月十五日 化す
縁側に茶色く 猫の眠り
撫でるてのひら 背中にすべる
呼吸がすぅーっと聴こえるほどの
入陽の前のしずけさのなかで
その仔がぴくりと動くのは
魚の焼ける匂いがしたとき
いつの間にか日がのびて
夕方の訪れは少しずつゆっくり
それでもご飯にはまだ早い こんな時間にお魚を焼くのは
マンション一階、通路奥のTさんの家
Tさんがいないときだけここにきて
撫でさせてくれるその猫の
現金さごとつかまえて
抱っこしてしまう
(ダメ、いかせないよ)と。
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