周子essay

【2月課題】 コラボレーション

わたしは「この人と何をやったら一番楽しいかな」というところから作曲を始めるのが好きです。よく誤解されるんですが、そこには、上手いとか下手とかは(ほぼ)関係ない。オープンマインドな人であれば、噛み合う地点が絶対あるのです。

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以前も載せたのですが、このパーカッションの曲は、impulsアカデミーの一週間ワークショップの一貫でした。ペアになったのは二十代前半の学生(スペイン男子二名とポーランド男子の計三名)でプロとやるのとはまた全然違います。

いろいろ試した結果、ストラクチャード・インプロビゼーションにして、それぞれの集中力の高さや、果敢さ、自由さ、発想、キュートさ、あと身体の特性(背が大きくてパワーがあるとか、表情が豊かとか)を生かすことにしました。いくつか決まりごとを設定して(トムとバスドラは初めから指定があった)、あとは本人たちが即興で自由に作るかたち。特に最終のパブリック・プレゼンテーションではそれまでにないことを彼らがやり出して、わたしは客席で大爆笑しました。

インプロの(ひとつの)利点は、能動的・自発的な行為をひきだせること。「やらされる」のではなく「(自分で)決めて、やる」ことは、エネルギー量や爆発力といった点でものすごいポテンシャルを秘めている。ただ、そのぶん、管理することが重要になってきます。方法を見出して、彼らの制作プロセスをナビゲートしてコントロールすることが、一週間、私が作曲家として担った役割でした。

ちなみに(初演が終わってからだけど)楽譜もつくったので、やりたい人がいれば誰でもできます。この「楽譜を作り、再演可能な形にしておく」ことは作曲家として大切にしています。

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その一方、音楽の高いレベルでの実現にみっちり取り組んでくれたのが、Ellen Fallowfield(エレン・ファロウフィールド/チェロ)とStephen Menotti(ステフェン・メノッティ/トロンボーン)によるTwo New Duo。エレンは、マルチフォクニックス奏法等を網羅したオンラインサイトCello Mapの作者としてご存知の方も多いと思います。

2014年に曲を頼まれたとき、トロンボーンについてはまったく知らなかったので、基本からぜんぶ教えてもらいました。スライドを移動させるとなんでピッチが変わるのかとか(きほん中のきほん)、同じピッチで違うポジション、ノーテーションを変えたら解釈がどれくらい結果音が変わるかとか。

そのような工程を経て、最終的にはかなり複雑かつ技術要求が高めな作品となりましたが、それはもともと興味があったというより、楽器や記譜に関して正確に把握できたこと、また超絶技巧レパートリーを彼ら(特にスティーブ)がすでに持っていたことの方が大きかったです。難しければ難しいほどエキサイトして練習を頑張ってくれるのでは?という間違った考えも持っていました。今となっては何て馬鹿だったんだろうと思います。

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Facebookのディスカッションより。

この後、冨田さんがわたなべエッセイへのレスポンスで(上のはryoさん投稿へのコメ)「抽象的な段階で働く想像力」と「具体的な段階で働く想像力」という風に表現されていて、なるほどなあと思いました。

確かに後者のデュオ曲における共同制作の過程はとても実践的で、そこから組み立てていった要素が多くありました。上記リストだと「フォーマットの実現」にあたるのかな、記譜なども含めて。パーカッショントリオはそれに比べ、「空間の質」「奏者の関係性、信頼の構築」に特化していたといえるのかもしれません。なんせ具体的な動きやその結果として鳴る音の多くをパフォーマー任せにしてしまっているので。

もちろんこちらの読みが外れて、あるいは奏者とのコミュニケーションがうまくいかなくて、目も当てられない大惨事を招いたことも何度もあります。最近投稿されたわたなべさんによる打楽器奏者、渡邉理恵ちゃんへのインタビューで、彼女はパフォーマーとしての自分を次のように評していました。

曲によっては、演奏家の魂を見せるような作品もありますよね。技術的なものであったり、身体を見せるようなものであったり。そういうものが求められる作品は、自分はもしかしたら向いてないんじゃないかなって思ったりします。そういうカリスマ性がある演奏家と、オーガナイズもできる演奏家と、色々な演奏家がいて良いのではないでしょうか。

ー 渡邉理恵に〇〇について聞いてみた(1) より

奏者の方も、向き・不向きや、得意・不得意といったものを感じているんだなあ、と面白く思いました。わたしが理恵ちゃんとやるなら、何をどうやって作るんだろう。

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長くなりましたが最後に。 横浜能楽堂での山口晃さんの個展「昼ぬ修羅」がすばらしかったです。独自の目的や、歴史や、決まりごとがある建物空間でインスタレーションを行うっていう。コラボレーションとはきっと言わないけれど、こういうサイト・スペシフィック(基本的にあまり好きじゃない、招聘自治体の意図やお金の動きが透けて見える感じのものが多いから)なの、いつかがっつりとやってみたい。じゃあ「ダムで!」とか言われても頭抱えそう...。


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Chikako Morishita、作曲家です。ちかこと読みます。https://chikakomorishita.com/

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