【無料公開】原体験ドリブン(はじめに)
やりたいことが見つからない、自信がないあなたへ
■「自分はこうしたい」がない子どもだった
「しょうがない。ここまで育ててもらったんだし、言われたとおりにするか。ほかにやりたいこともないし」
19歳のとき。大学入試で失敗し、親に言われるがままに浪人生活に突入した僕は、父から言われて予備校通いをやめ、父の会社に入ることにしました。
大学に落ちるのはあたりまえでした。僕自身は大学に行きたいとは全然思っていなかったのだから。父が僕を、大学に行かせたがっていただけでした。
予備校でも勉強に身が入らなかった僕は、パチスロにばかり行っていました。これで合格するはずがありません。
そんな僕を見かねたのでしょう。「予備校はやめて、うちの会社で働いたらどうか」。会社を起業したばかりの父はそんな提案をしてきました。
大学に行きたい気持ちがないのだから、これ以上、浪人を続けるのは無意味でした。かといって、ほかにやりたいことがあるわけでもない。
予備校をドロップアウトした僕は、父の会社で働くことにしました。
幼いころから「自分はこうしたい」がない子どもでした。
小学6年生のとき、「将来なりたい職業」を書く時間があり、となりの席の友人が「公務員」と書いたから、じゃあ僕も公務員にしよう、と思うような子どもでした。
中学校、高校に入っても自分の意思がないのは変わりませんでした。中学校では身長が高かったから、なんとなくバスケットボールをはじめました。とくにバスケが好きだったわけではありません。高校ではバスケはやめて、バイトをしていました。大学に進学する意味はわからなかったのですが、父が行けとうるさく言うからなんとなく受験して失敗し、なんとなく浪人をすることになりました。
自分の軸がなく、周りに合わせて行動がころころ変わる。十代の僕の行動は、やることなすことブレまくっていました。
■初めて「自分軸」で考える
そんな僕が初めて自分の意思らしきものをもったのは、工作機械を製造する父が経営する会社で働きはじめてからです。とはいえ、やっていた仕事といえば、工場の掃除や機械の組み立てなど、雑用ばかり。何の知識も技術もなく、やる気もない僕ができることはそれしかありませんでした。
そんな雑用をこなすなかで「このままでいいのだろうか」との思いが初めて浮かんだのです。大学に行くのは気が進まないけれども、自分でやりたいこともない。何だかんだいって親離れのできていない自分に、さすがに嫌気がさしてきました。3年ほど働き、これからは自分のやりたいことをやろう。そう思いました。「親」や「友人」でなく、初めて「自分軸」でものごとを考えたのです。
ITベンチャーが続々と立ち上がり、メディアをにぎわせていたころでした。自分にしかできない表現に興味があったこと、これからはウェブサイトをつくる仕事が増えるだろうと考えた僕は、デザインの専門学校に入学します。デザインやホームページの制作はおもしろく、自分の意思で初めて勉強したのがこの時期でした。
友人からクラブのフライヤーのデザインを頼まれたのを機に、クラブでVJ(ビジュアルジョッキー)をはじめたのもこのころでした。VJは、DJのつくり出す音に合わせて映像をつくり、演出をする仕事です。ヒップホップが好きだったのでヒップホップ専門のVJとなり、このニッチな分野で次第に目立つ存在になっていきました。ライブで海外に行ったり、雑誌に取り上げられたりもしました。
このクラブで活動していた時期、僕は重要な人との出会いを果たします。それがプロダンサーのUCCI(ウッチー)さんです。彼との出会いがきっかけで、僕は「原体験」というものを初めて意識するようになったのです。UCCIさんがいなければ、僕がこうして原体験の本を書くことはなかったでしょう。
くわしくは第1章でお話ししますが、僕がUCCIさんとの出会いで気づいたのは、人間なら誰しももっている、「原体験」を意識することの重要性でした。
原体験を意識すると人は強くなれる。
外的要素でなく自分の原体験をよりどころにすることで、自分を主語にして人生を歩んでいける。
UCCIさんは、そのことを僕に教えてくれたのです。
もっとも、僕が「原体験」の言葉を頻繁に耳にするようになったのはこの2,3年です。UCCIさんとの出会いが「原体験を意識するきっかけだった」とわかったのも最近のことです。
しかし、ふり返ればUCCIさんと出会って以来、僕はこの原体験を意識することの重要性を何度も痛感させられることになります。そしてこの原体験こそが、私たちにとって唯一のブレない原点であり、人生の軸になると気づきはじめるのです。
■「原体験」は自分の「一番の原点」
原体験とは、自分のルーツです。私たちのあらゆる行動、考えのもと、「一番の原点」あるいは「根拠」になりうる大きな体験です。
あなたが今もっている判断基準や価値観は、原体験をもとにつくられています。そして、この原体験を意識すれば、「自分の軸」をつくることができます。
自分の「原体験」を知らない人は、自分の軸をもっていません。
軸をもたないまま生きていると、周りの状況が変化するとそれに合わせて行動するようになります。つまり生き方の基準が自分ではない。外的要素に合わせて行動がブレていきます。
自分の「原体験」を意識すると、自分だけの軸が決まります。自分がそのとき、なぜそのような行動をしたのか。自分に対しても人に対しても、説明できるようになります。
自分の選択にも自信がもてます。「この選択は正しかったのか」「今のままでいいのか」といった不安にさいなまれることがなくなります。
自分で選んだ道だから、少々の困難にぶちあたってもすぐ投げ出したりしません。
ブレない人は「原体験」を知っている。
果てしない自己分析や自分探しの旅はもう終わりにしていい。
あなたの人生のすべての答えは「原体験」にあるのです。
■もうブレない、ふり回されない
原体験を意識するようになってからの僕は、ブレなくなりました。流行りやそのときの状況、人の言うことにふり回されることがなくなっていったのです。
僕も日々変わりゆく状況に合わせて手段を変えることはあります。しかし、人生の目的、仕事の目標はブレませんから、一本の軸を通すことができます。
原体験を常に意識しておくと、すべての行動は原体験がもとになってきます。そうなると、周りから投げかけられるあらゆる「なぜ?」に自信をもって答えることができます。原体験という自分だけの根拠があるから説得力が出て、周りが納得してくれやすくなります。共感も得られ、人を巻き込む力が大きくなります。
僕は今、「パーソナルベンチャーキャピタル」という会社のCEOをつとめています。ブランディング(企業のブランドを創り上げるための取り組み)という手法を使い、スタートアップ(創業して間もない企業)を支援する事業をおこなっています。これまで、企業のブランディングパートナーや社外CBO(最高ブランディング責任者)として100社近くのブランディングに関わってきました。
原体験は、スタートアップのブランディングにとって非常に重要です。そのため、僕が支援する起業家には必ず原体験を見つける「原体験ジャーニー」をしてもらいます。自分の原体験を意識し、ブレない自分だけの軸をつくってもらうためです。
原体験ジャーニーをやっておくと、起業家はあらゆる場面で事業の目的やその意義を「自分ごと」として語ることができるようになります。とくにスタートアップの起業家は、「なぜあなたがこのビジネスをやるのか?」「このビジネスはどう社会を変えるのか」など、投資家をはじめとする人々の無数の「なぜ?」にさらされます。原体験を意識しておけば、起業家はそうした問いに自信をもって答えることができるのです。
つらく苦しいことがあっても、状況が変わっても、ブレない自分の軸があると、かんたんにあきらめたりしなくなります。僕自身も、起業家のそのブレない軸を信じ、めいっぱい支援し続けることができます。
スタートアップの支援をはじめるようになってから、原体験を意識していない起業家は事業に失敗しやすいこともわかってきました。だから僕は今、原体験に価値を見出してくれる人としか仕事をしないと決めています。
こうしてスタートアップの支援に原体験を活用してきた僕ですが、原体験は、起業家だけのものではありません。
原体験は、どんな人にとっても大きな価値をもつ概念なのです。
原体験によって自分の軸をもてれば、進学や就職、転職、結婚といった人生の大事な場面で納得のいく選択をできるようになります。原体験を仕事の現場で活かすこともできます。
苦しい状況におちいることがあっても、原体験をよりどころに歩いていけます。周りの状況や人にふりまわされることがなくなります。やりたいことを見つけて邁進している人が近くにいても、自分と比較してあせったりしません。自分のやりたいことがそもそもわからない、などということもなくなります。
この本では、そんな「原体験」を原動力に変えて生きる「原体験ドリブン」の方法をお伝えしていきます。
やりたいことが見つからない、今やっていることがそもそもやりたいことなのかどうかもわからない――。そんな人にこそ、ぜひ読んでほしい。
あなたが原体験をもとに自分だけのブレない軸を見つけ、外的要素にふり回されず、自分らしい生き方を導き出すことを心から願っています。
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