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能村登四郎全句集① 『咀嚼音』

能村登四郎全句集を購入したので、第一句集から好きな句を挙げていくことにします。

能村登四郎は明治44年(1911年)生まれ。

年譜によると、水原秋櫻子の「馬酔木」に投句をし始めたのが昭和14年、登四郎28歳のとき。特に目立つわけでもなく、1、2句入選の境をさまよっていたとのこと。戦争で一時中断した俳句を再開するも、あいかわらずの成績。「馬酔木」のなかで徐々に登四郎の句が評価されていったのが40歳近くになってからで、兄弟子の石田波郷の奨めにより第一句集『咀嚼音』を出版したのが昭和29年、登四郎43歳のときでした。

『咀嚼音』は、自らの職業・教師と、家族(妻、こども)を題材にした句が多い印象でした。貧しい暮らしを描いた句も多かったです。

莢豌豆貧しさなれて子を欲りす
夜の新樹子を得て隣はなやげる
氷菓もつ生徒と会へりともに避け
教師やめしその後知らず芙蓉の実
菊にわが同齢教師老目立つ
三ヶ日つかはぬ葱のにほひ来つ
春暁のわが息と知りしづかにす
巣燕や学僧も来る共同湯
教師らの黄裸ならべり透視室
レースの襟ほのかに黄ばみ少女司書
落第を告げくる葛餅の折提げて
老教師酔へるを送る夜の辛夷
風船をくれるを待てり聖樹蔭
白鳥の翅捥ぐごとくキャベツもぐ
ロマンスカーに教師がさらす昼寝顔

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