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『俳句特訓塾』(ひらのこぼ)の例句がいい件

俳句のハウトゥー本をときどき読みます。

俳句のハウトゥー本で一番有名なのは藤田湘子でしょう。わたしは湘子の『実作俳句入門』が大好きです。

俳人の生駒大祐さんが最近藤田湘子の『20週俳句入門』について「内容の面白さを”湘子の口調・言葉遣い”が打ち消してしまって全く楽しめない……。合う合わないってやっぱりありますね。。」とツイートされているのをお見かけしました。

しかしわたしはあの湘子独特の、ちょっと説教臭いおじいちゃん口調がけっこう好きです。多少強引でもはっきり言い切ってくれるので、迷いがなくなって、気持ちがすっきりしてくるのがいいのかもしれません。つくづく合う合わないってありますね……。

ひらのこぼさんの『俳句特訓塾』は読みやすくてわかりやすい良書でした。

特に「デイリートレーニング編」という、日常生活を丁寧に見つめて、俳句を詠むことをすすめる章がよかったです。そちらに掲載されている日常生活を鮮やかに切り取った例句に好きな句がたくさんあったのでいくつか書き残しておこうと思います。

朝のゴミ出し
白木槿ごみを出すにも蝶むすび  片山由美子
春暁や無数の黒いゴミ袋  対馬康子

朝の食卓で
牛乳を飲む万緑に負けぬやう  辻美奈子
サラダさつと空気を混ぜて朝曇  正木ゆう子

朝の化粧のひととき
雛より遠き眼をして紅を引く  斉藤史子
マニキュアの指を扇風機にかざす  深見道子

会社の昼休み
十秒で牛丼と夏来たりけり  蓜島啓介
着ぶくれてビラ一片も受け取らず  高柳克弘

職場で
質問がなければ飯や雲の峰  加藤静夫
叱られに会社へ戻る秋の暮  杉原祐之

自宅でくつろぐ
仏壇のメロンを今日も押して嗅ぐ  池田澄子
わが書架の前に立ち読み麦の秋  鷹羽狩行

来訪者を詠む
大西日やけに立ち入る私生活  石山正子
送り出て又立話初時雨  深見けん二

夕餉の支度
湯の中にパスタをひらく花曇  森賀まり
包丁を持つて驟雨にみとれたる  辻桃子

書きものをして
書きさしの手紙の横の桜餅  涼野海音
辞書割るといふこと遠し昭和の日  櫂未知子

テレビを見て一句
梅雨深しテレビに燃ゆる本能寺  工藤克巳
おもしろくなし敬老の日のテレビ  右城暮石



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