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岩田奎句集 『膚』

岩田奎さんの第一句集『膚』(はだえ)。一読して句の上手さに引き込まれ、最後まで一気に読みました。佐藤郁良さんによる跋は、岩田さんの出自や俳句遍歴が詳しく書かれてあり面白かったです。

見たものを見たままに詠んでいるのに、言葉の選択ひとつで、こんなにも句に華が生まれるのである。これは、奎君の俳句の最大の強みだと言ってよいだろう。

『膚』 跋 佐藤郁良

特に印象に残った15句を。

鶯やほとけを拭ふ布薄き
電車より水垂れてくる秋の暮
メーデーや反りて臭へる罐の蓋
国鉄のころよりの雛飾りけり
ナイターのなかぞらに雨見えてをり
墓洗ふ燐寸の箱の桃印
あとはもう案山子に着するほかなくて
昼の子のものの囲める夜学かな
にはとりの歩いてゐたる木賊かな
雲を見るほかなく角の伐られけり
落椿の気持で踏めよ踏むからは
靴箆の大きな力春の山
ハイビーム消して螢へ突込みぬ
立てて来しワイパー二本鏡割
流氷をかち割る船のなか尿る


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