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能村登四郎全句集④ 『民話』

能村登四郎の第4句集『民話』は、昭和47年、登四郎61歳のときに出版されました。収録句数は440句。第3句集『枯野の沖』からわずか3年ほどでの出版です。この間に主宰誌「沖」を創刊しています。

旅の句よりも、身近な虫や食べ物を詠んだ句に惹かれました。

雪見るや始終を肩に手を置かれ
綿虫の消ゆる刻来て青を帯ぶ
逝く春の雨や遠火の朴葉味噌
泳ぎ来し人の熱気とすれ違ふ
人息に粒くもるなり黒葡萄
襞のふかみで考へてゐる夜の胡桃
雪に応へて階段裏の葱にほふ
夏痩せて身の一筋のものやせず
汗の肌より汗噴きて退路なし
板前は教へ子なりし一の酉
夭折の花輪を倒す春疾風
離れゐて父子耕しの鍬そろふ
花茣蓙に臥て胸につく花の痣
朝涼や明治ずしりと梁・柱
菊を焚くうしろを通り声かけず




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