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能村登四郎全句集② 『合掌部落』

第2句集『合掌部落』は、昭和32年登四郎46歳のときに出版されました。第1句集『咀嚼音』からわずか2年半です。後記には「それだけに粗い作品もあり、独りよがりのものもあると思うが、ぼくの作家成長の上にこうしたファイトに充ちた時期があったことは、何らかの意義があることと思う。」とあります。(一人称が「ぼく」なのが新鮮。)

露の終駅更に奥へと工夫たち
きのふより母の座があり茸飯
わが似顔黒板に消す冬の暮
荒塩に妻の指跡春逝けり
わかものの匂ひ燃えをりキャンプの火
白川村夕霧すでに湖底めく
世はやすく教師を責めき冬の鵙
冬雲をみてゐて教壇をふみはづす
保険屋とバス待つ焚火ともにする
なづな粥もの言へぬ母神のごとし
病む母に母の漬菜の水あげたり
眼を病みて夏黄昏の色愛す




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