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能村登四郎句集 『寒九』

能村登四郎の第九句集。昭和59年から昭和61年までの400句を収録。

あとがきに、
【妻を喪って三年になる。人から明るくなったとよく言われるが心が自在になった故であろうか。】とある。なんていうか凄い。

気の乗らぬ旅二日目に山法師
左からのみ顔撮らせ花卯つ木
すつ飛んでゆく形代は我のもの
竹婦人抱かせてもらひすぐ戻す
夏痩せて釘散らしたる中にをり
眼球に血の一筋や雲の峰
鷹の眼をもつ若者とひとつ湯に
略図よく書けて忘年会だより
妻なきを誰も知らざる年忘れ
浴室の湯気が洩れゐる更衣
水着ショーなど終りまで見てしまふ
昔むかしの種痘の痕のまだ痒し
男同士もいいなあと見て松の花
弟子になるなら炎帝の高弟に
菊人形裏に菊師のまだをりて

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