田中裕明全句集 その4
田中裕明の第五句集『夜の客人(まろうど)』よりすきな句を20句挙げます。
木枯やいつも前かがみのサルトル
ぼうふらやつくづく我の人嫌ひ
さみだれのあつまつてゐる湖心かな
杖つかぬ桂信子やほととぎす
風呂敷につつむ額縁鳥の恋
象老いて小さくなりぬ春の風
墓に置く大きな鞄漱石忌
日脚伸ぶ重い元素と軽い元素
空へゆく階段のなし稲の花
目のなかに芒原あり森賀まり
爽やかに俳句の神に愛されて
浮寝鳥会社の車かへしけり
寒卵しづかに雲と雲はなれ
くらき瀧茅の輪の奥に落ちにけり
みづうみのみなとのなつのみじかけれ
ちよとまづいもの食べてをり女正月
あした逢ふ人に文書く余寒かな
草かげろふ口髭たかきデスマスク
法師蟬見知らぬ夜の客人と
水澄みて傷つきやすき銀の匙
以下、岸本尚毅さんによる解説からの引用です。
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