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私のオススメ本【にじいろガーデン】

ああ、どうして小川糸さんの描く情景はこんなにも美しいのでしょうか。【ライオンのおやつ】で小川糸さんに魅せられた私は、次々と読んでは溜息をついています。そこで今回は【にじいろガーデン】を紹介したいと思います。

自分の心に正直に生きる

私は勝手に、この本のテーマは「人はどう生きるべきか」なのではないかと思いました。

子持ちのシングルマザーである主人公泉はレズビアンの女子高校生千代子と駆け落ちします。

この物語は、一組の女性カップルが家族として生き抜いた記録です。

性的少数派

一般的に家族とは、男性と女性が結婚しやがて子どもが生れることで成立すると考えられています。

しかし、この物語の主人公泉と千代子は2人とも女性、そして子どもが2人という家族です。

一般的ではありませんが、それでも強い絆で結ばれた家族なのです。

一般的ではない、ということは罪でしょうか?そんなはずはありません。罪ではない、けど受け入れるのは難しい。どこか遠い国で暮らす人の話なら「同性愛に偏見はありません」と綺麗事が言えても、目の前にいる人がそうだと戸惑う。私だってそうです。

泉と千代子は偏見に負けず時間をかけて周りを理解者に変えていきました。

その強さとお互いを愛する気持ちに、私は心打たれました。

地域で生きていく

私が思う小川糸さんの魅力のひとつは、情景の美しさです。

小川糸さんの文章を読んでいるだけで、満天の星空、瑞々しい棚田、雪に包まれた里山が目に浮かび、泉さんの手料理の匂いを感じます。

自然豊かな地域では、そこに暮らす人も大自然そのもののようになにもかも優しく包み込むか、というと、人の世はそれほど甘くはありません。

奇異な目で見られたり、あからさまな悪意をぶつけられたり、それでも2人は「自分たちの心に正直に生きる」ことをやめません。

地域の人たちを味方に変えたのは、そんな2人のひたむきでブレない心だったのだと思います。

草介のストーリー

物語の始まりでは6歳の男の子だった草介は、物語とともに成長していきます。心優しい少年は、その優しさを失わずに大人になります。

めったにワガママを言わない男の子、物わかりが良く、苦しみを抱える人の話を聞きその心に寄り添う...私の息子が草介だったら、どんなに育てやすいことでしょうか。

しかし、私はずっと心配でした。草介は優しすぎる、いい子すぎではないか。物語が進むにつれて、その心配はふくらみます。

最後、草介は周りや家族の気持ちよりも、自分の心に従った行動をとりました。

その結果は草介をようやく自由にしたのではないか、と私は思いました。

自分の心に素直に生きることと、我慢して生きること

この物語では対照的な生き方が描かれていました。

レズビアンであることを隠さず、周りからの偏見にもめげずに自分の心に正直に生きる泉と千代子。

天真爛漫に、自分の感情をそのまま周りにぶつける宝。

そして、自分よりも周りの幸せや平和を願い、自分の本当の気持ちを押し殺して生きる草介。

物語が進むにつれ、登場人物たちは自分の生き方の結果を受け入れることになります。

物語を読むことで、私たちはそれぞれの生き方の責任と結果を疑似体験します。

人はどう生きるべきか、読み終わった後に深く考えさせられる物語でした。

私のオススメ本です。



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