見出し画像

憲法と仲良くなりたい(答案編)

お久しぶりです。だいぶ暑くなってきまして、そろそろローの夏季入試の時期ですね。半ば発狂しながらロー入試に挑んでいたのももう一年前なのかと思うと、時の流れの速さに驚かされます。これからロー入試の方、頑張ってください!応援しています!!
さて、私の方はといいますと無事に前期が終了し、夏休みに突入です。半期なんだかんだで大変でした…
とまぁ前置きはこのくらいにして。

今回と次回に分けて、憲法と仲良くなりたい、得意にしたい人に向けての記事を書いていきます。
私の受験記にも記した通り、個人的に憲法はすごく勉強しづらい科目だなと思っていました。とにかく答案の書き方、勉強法がわからず、という感じ。が、なんとかそこを脱却し、入試を終え、ローの期末試験も終えて、少なくとも今の自分の憲法の学習法、考え方みたいなものは間違ってはいないだろうな、ということで、特に学部で憲法の試験がこれからある方やロー入試を控えている方に向けてこの記事を書いてみたいと思います。
あくまで一私見ですが、少しでも参考になれば嬉しいです。


あてんしょん

・本記事は激し目にちいむすめの独断と偏見を含みます。ローに受かって期末試験でまぁ悪くない成績を取っただけのロー生の記事ですので、その点ご留意ください。
・本記事の主なターゲットは学部で憲法を学習した人です。ロー生は回れ右してください(土下座)。多分目新しいことは書いていないです。
・本記事で紹介する憲法答案の型については、人権編の法令違憲審査かつ三段階審査が使え、目的手段審査をするという場合のものです。14条、20条、25条等の問題にはこちらの型をそのまま使うことはできません。ご注意ください。


答案の書き方がわからないのだが??

という人、結構多いと思います。かくいう私もそうでした。
それもそのはず、憲法だけは他の科目のような三段論法(問題提起→法解釈→あてはめ)の構成では書けないんですよね。もっとも、厳密には憲法答案の中にも三段論法はあるのですが。

ではどのような構成で書くのかというと、
①問題となっている権利は憲法で保障されるものか?
②その権利は制約を受けているといえるか?
③その制約は絶対に許されないものか?
④制約が許される場合があるとしても、それはどのような場合に認められるべきか?(審査基準定立)
⑤あてはめ
という流れになります。これがいわゆる三段階審査というヤツですね(こうしてみるとどこが三段階なんだ、という気もしますがそれはさておき)。

 私の場合は、とりあえず構成用紙に①から⑤と書いて、事案を読みながら事実をそれぞれのところにメモをし、そこから答案にしていくという流れで答案を書き上げていきます。もちろん、メモ(答案構成)を作らずに書く人もいるらしいので、その辺はお好みですね。

・・・ということで、この先抽象的に説明することが著しく困難であると判断しましたので諦めて事例と一緒に説明していきます。

【事例】
 Xはとある犯罪を犯したことにより刑務所に収監されていた。従前からXは自費で新聞を購入し、刑務所内でこれを閲読していた。ある朝、いつものように刑務官が新聞を持ってきた。Xはこれを受け取り、早速読もうとしたところ、どういうわけか新聞の第一面が真っ黒に塗りつぶされている。
 …数時間前。いつものように新聞配達員から新聞を受け取った刑務官はその一面の内容を見て顔をしかめた。今日の一面は、昨日とある国で起こった大規模な脱獄事件を詳細に報じるものであった。事件が起こった刑務所の名前、脱獄を果たした者たちの氏名やプロフィール、さらには、驚くべき脱獄方法までもが事細かに記載されていた。そこで、刑務官は上司に報告した上、新聞の一面を黒く塗りつぶした。というのも、法律上、「刑務官は脱獄を助長・促進するような物を在監者に交付してはならず、また、交付しないことができる」と定められていたからである(以下、「A法」とする)。 
 さて、この1週間後、Xは刑務官が勝手に自分が買っている新聞を黒塗りにし、当該記事を閲読できなくすることを要請するA法の規定は、Xの権利を不当に侵害するものであると考えた。そこで、Xはその根拠となったA法の規定は違憲であると主張して裁判所に訴えを提起した。

構成メモ

①問題となっている権利は憲法で保障されるものか?
 Xの新聞閲読

②その権利は制約を受けているといえるか?
 黒塗り読めない、制約あり

③その制約は絶対に許されないものか?
 在監者、脱獄方法載ってる →制約余地あり

④制約が許される場合があるとしても、それはどのような場合に認められるべきか?(審査基準定立)
 権利大事、一切記事読めない、他媒体無理=直接・強度の制約 →厳格審査

⑤あてはめ(目的手段審査)
 目的:刑務所内の秩序維持 →大事
 手段:黒塗り →まぁ仕方ない?代替手段なさそう

とっても味気ないメモですが、リアルを追求したらこんな感じが関の山だと思います。
では、上記メモをさらに膨らませる形で、答案に何を書くべきかを検討していきます。

①問題となっている権利は憲法で保障されるものか?

本事例で問題になっているのは、Xの新聞閲読の権利だと考えられます。答案では、このような権利が憲法上保障されているといえるかを論述していくことになります。
上記権利をドンピシャで保障するという条文は憲法上どこにも存在しないので、解釈が必要です。

閲読の自由は、「21条1項の趣旨、目的からいわばその派生原理として当然に導かれる」(よど号ハイジャック記事抹消事件)とされています。そうすると、Xが当該新聞記事を閲読する自由(権利)は21条1項の保障範囲に含まれており、憲法上保障されているといえそうです。

②その権利は制約を受けているといえるか?

XはA法のせいで当該記事を閲読することができなくなっています。したがって、Xの権利は制約を受けています。
ここはこのくらいあっさりでいいような気がします。個人的には、制約で厚く論じなければならない事案はあんまりないのではないかと思っています。

③その制約は絶対に許されないものか?

では、Xの権利を制約するA法は絶対に許されないものでしょうか。感覚的・直感的に言えば、在監者に対し、A法のような規制をかけること自体は許されるべきな気がします。 
答案ではこの感覚的なものを法的な理屈に引き直して(?)論じていくことになります。すなわち、「監獄は、多数の被拘禁者を外部から隔離して収容する施設であり、右施設内でこれらの者を集団として管理するに当たっては、内部における規律及び秩序を維持し、その正常な状態を保持する必要があるから、この目的のために必要がある場合には、その者の身体的自由及びその他の行為の自由に一定の制限が加えられることはやむを得ない」(よど号ハイジャック記事抹消事件判決)というわけです。
そうすると、法Aは絶対に許されないわけではないといえます。

④制約が許される場合があるとしても、それはどのような場合に認められるべきか?(審査基準定立)

ようやくここで、審査基準を決めます。いわゆる、厳格審査基準、中間審査基準、合理性の基準のうち、どれを選ぶか、という段階です。
この判断に際しては、権利の重要性や保障の程度、制約の仕方、強度などを掛け合わせて考えます。

まず、閲読の自由は、重要な権利であり、その保障の程度も高いといえます。  一方、制約の方法としては、法Aの規定に該当する物を交付しないとしており、情報媒体である新聞を黒塗りにしているということで直接的な制約となっています。また、Xは収監されているため、当該新聞以外の媒体から記事の内容を知るということも困難です。そうすると、法Aによる制約は、Xが当該情報へアクセスすることを完全に断つものであるため、制約の程度は強度であるといえます。

これらの事情から審査基準を考えるに、厳格審査が妥当でしょう。もっとも、このあたりのさじ加減は人それぞれではあると思います。ただ、合理性の基準は流石にゆるすぎるのでナシかなとは思っています…
ということで、目的がやむにやまれず、手段が必要不可欠、かつ、最小限度のものであるかどうかにより、A法の合憲性を判断することにします。

⑤あてはめ(目的手段審査)

目的審査
たいてい、法令違憲を検討する場合には立法事実や、法の1条(目的規定)が参照条文として挙げられています。目的を検討する際は、そこに注目です。そして、その法律・条文の目的が何かがわかれば、あとはその目的がいかに重要であるかを丁寧に論じればここはOKです。
単に、「目的は〇〇である。これは重要である。」とするだけだと、あてはめ点めちゃめちゃ下がるので注意。

今回は、目的規定等々端折っていますが、A法の目的は、刑務所内の秩序維持といったところでしょうか。
刑務所内の秩序維持がなぜ、いかに重要であるかは検索したら出てくると思うので、ぜひ調べてみてください(丸投げ御免)。

手段審査
手段については、法令違憲の場合は当該法条による効果に注目します。手段を確定したら、あとは、当該手段が上記目的を達成するために必要不可欠で、しかも必要最小限度のもの(=代替手段がない)といえるかどうかを検討していきます。

A法によれば、脱獄を助長・促進するような物を入手できないという手段が取られています。
刑務所内の秩序維持という目的達成のためには、このような手段が必要不可欠か、また、必要最小限度か、まぁ考えてみてください(丸投げ御免)。


まとめ

というわけで、ざっくり答案作成の仕方について概観してきました。
①から⑤を足がかりに考えていけば、内容的にも形式的にも憲法答案らしくなるのではないかと思います。もちろん、判例との異同など、詰めなければならない点は端折りまくりましたが(次回触れる予定です…!)、形式は上と変わりません。
それから、あてはめは丸投げしまくりましたが、若干弁解しておくと、あてはめは本当に色々な評価の仕方があるので、あえて明言することは避けた、というわけです(そういうことにさせてください)。
あてはめを考える時はいつも一般教養的な部分が試されている感じがひしひしとしてきます。普段の演習の時はググることもあるくらいです。試験の時はもう仕方ないので作文ですが…
いずれにしても、できるだけ丁寧に、なぜそう評価するのか示すことが大事かなぁと思います。

さいごに、上記事例は憲法判例でも有名な「よど号ハイジャック記事抹消事件」(最判昭和58・6・22 民集 第37巻5号793頁)をアレンジしたものです。百選はもちろん、ネットでも判決文を読むことができるのでぜひ。
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52137

と、いうわけで、だいぶながーーくなりましたが、前編は以上です。
後編は判例について書いていこうと思います。よければ見にきてください〜

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?