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第7回 佐渡でふれあういのちのつながり 〜人とトキが暮らす島を孫の世代へ〜

2014.10.24
星信彦
資源生命科学専攻 応用動物学講座 教授

概要
環境中に放出・蓄積された残留化学物質が生態系や動物の健康に被害を及ぼし遺伝子発現にも作用しています。その影響は世代を越え,種の保存を脅かす地球規模での重大かつ深刻な問題となっています。
星信彦教授は、これらの危機に面して解決の可能性を追求する分子毒性遺伝学的研究を行っています。
研究室の学生とともに、ネオニコチノイド系農薬がトキの生態及び繁殖能力に及ぼす影響の評価に、取り組まれた様子をご紹介くださいました。

第7回A-launchでは
性分化や環境ホルモンについて研究をされている
星信彦先生(農学研究科応用動物学講座教授)をお迎えしました。

「佐渡でふれあういのちのつながり 〜人とトキが暮らす島を孫の世代へ〜」

と題して
ネオニコチノイド系農薬がトキの生態及び繁殖能力に及ぼす影響の評価
に取り組まれたお話を伺いました。

日本では野生生物の保全をすすめている一方で
ほとんどの農家が農薬を用いており
最近までは世界一の農業使用大国でした。

近年、その使用量は減っているものの
ネオニコチノイドいう少量で効き目が高い農薬が出現しました。

ネオニコチノイドは
神経伝達物質の受容体に結合し
神経を興奮させ続けることで昆虫を死に至らしめる農薬です。

トキは野生絶滅種で特別天然記念物でもあります。

中国から寄贈および貸与された個体を用いて飼育下繁殖が続けられ
新潟県佐渡市を中心に野生復帰訓練が始められました。
しかし、その繁殖成功率は低く
卵は産まれても全く孵らない状況が4年続きました。

その要因として環境化学物質の影響があげられました。

そこで星先生は研究室の学生とともに
ニホンウズラを用いて
ネオニコチノイド系農薬が生体や各器官に与える影響の評価、交配試験
を行われました。

その結果

「ネオニコチノイド系農薬は
 ニホンウズラの繁殖機能に影響を与えていることが判明し
 トキにも何かしらの影響を与えているのではないか」

と示唆されました。

この結果を地域の方に発表されたことにより
佐渡市ではネオニコチノイド系農薬は使用されなくなり
環境保全に力を入れ始めました


農薬の使用と直接の関係は証明されていませんが
それ以降トキの卵が孵るようになったそうです。

「農薬とどのように向き合って農業に取り組んでいくのか」

がこれからの課題だと星先生はおっしゃっていました。


中塚万智

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