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第5回 失われつつある遺伝資源を利用する事で保全する:よみがえる梨遺伝資源 ‘イワテヤマナシ’

2013.05.09
片山寛則
食資源教育研究センター 植物遺伝資源開発学 准教授

概要
現在消失されつつある東北地方に自生する野生梨、イワテヤマナシを、食資源教育研究センター(農場)にてジーンバンク保存してから利用する試みを続けておられます。今回はヤマナシジャムの試作やイワテヤマナシの委託栽培先での取り組みなどを紹介から、6次産業にむけた夢を語っていただきました。

第5回A-launchは
片山寛則先生(農学研究科植物遺伝資源開発学准教授)をお迎えし

「失われつつある遺伝資源を利用する事で保全する:
 よみがえる梨遺伝資源 ’イワテヤマナシ’」

と題して
食資源教育研究センターのジーンバンクや
6次産業のお話をしていただきました。

現在日本で流通している梨のほとんどは「20世紀」という
品種を改良したものです。

そのため遺伝子に偏りがあり、生じる問題があります。 

一つ目は、新しい品種開発が困難であるということ。

二つ目は、新しい病気への抵抗性が低下する可能性があるということです。

これらの問題を解決するために
さまざまな品種が保持されているジーンバンクという施設があります。

流通している梨が持っていない機能を持つ
東北地方に自生する野生梨「イワテヤマナシ」もジーンバンクで
育てられており、片山先生はこれを利用して
6次産業化を進めていく取り組みをされています。

元々片山先生は学部生時代に麦の研究をされていましたが
梨の研究へと移られました。

というのも、日本固有の種があるのは栗と梨だけであり
その上、梨は岩手県で宮沢賢治に取り上げられたり
地元の人の名前を付けられたりと
地域に根差したストーリーを持っています。

しかし
梨についての研究は麦などの主要な作物と比べてあまり進んでいません。

誰もしていないことに取り組むことで一番になろう
という思いから、片山先生は梨の研究に取り組まれました。

地域に根差したストーリーを持つ梨であるからこそ
地域の方から愛着を持っていただけます。

1次産業、2次産業、3次産業の産業を結合・融合させたものを
6次産業といいます。

「地域からの愛着のある梨はこの6次産業に非常に活用しやすい」
と考えられたのです。

イワテヤマナシを原料としたジャム「ヤマナシジャム」の商品化に
あたっても、片山先生は「想い」を大事にされていました。

何十もの企業とヤマナシジャムの商品化を進めましたが
最後まで残った企業は一社だけでした。

「自分の想いと作る人の想いが一緒でないと
 追及して良いものは作れない」

と先生はおっしゃいます。

また、東日本大震災の際には
ジーンバンクにあったイワテヤマナシを
東北地方にシンボルとして移植する活動を行われていました。

これが実現したのも、実際に地域に入って調査をしていたからだ
とおっしゃっていました。

6次産業化には
地域の作物に対する愛着が大事であることを知ると共に
研究者されている方も
とても熱い気持ちを持って取り組まれていることを知ることが出来ました。


中塚万智

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