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「SPUNK~スパンク!~」について 雑記

楽しみで仕方なかった新井英樹さんの新連載。コミックビーム6月号からいよいよ始まった。
これを書いてる今すでに4話目が目前なのでだいぶ今さら感はあるけれど、文字に留めておきたい気持ちが湧いてきたのでやっぱり書く。
SMが題材、しかも大好きな新井英樹さんということで心待ちにしてたの。


SPUNK~スパンク!~は主人公栗田夏菜の幼少期から始まる。
1ページ目から夏菜の「かかってこいよ」と「すき!!!」が溢れている。
怪獣が好き、ゾンビが好き、ジブリならクシャナが好き、流血ヒーローが好き、強いものが好き———。
対して、つまんないものは嫌い。あたしはあたしが好きなものが好き。
一貫して好きに真っ直ぐな夏菜の性格がめちゃくちゃ清々しい。一貫しすぎているせいで周囲から浮いて反感を買っても、一切ぶれない。ぶれないどころかそれすら「好き」の踏み台にしてしまう。

私は自分の性格を振り返ると「段階的にずいぶん変わっていったなあ」とよく思うのだけど、夏菜は「経験を通して」というより生まれ持ってこの気質だったんだなあ、というのがよくわかる。
気質も、自分の意志も、それを体現する術も、生まれながらに心得ている。
だから私には幼少期の夏菜も、小中学校の夏菜も、すべてがかっこよく見える。

高校生になった夏菜が雨の中で出会う女とのシーンがとても好き。
雨のなか白線を歩く。小さい頃から好きだった白線歩き。返り血まみれの女が向こうからやってくる、手にワンカップを持って。人でも刺したあとなのか。
「白線?」って女が聞く。はいと答えた夏菜に「一緒!」って女が笑う。
道を譲ろうとした夏菜に「譲るなJK」「どんと行け 人生こっからだ」って言う。
そのままよろめいた女は大型トラックに轢かれて死ぬ。

ここがあまりにも爽快。
好きを譲るな。これを言い残して目の前で派手に死んだ女。夏菜のSMの目覚めの原点はここなんじゃないか、と思わせるシーンですごく好き。
好きと生と死が隣り合っている。
好きで歩いていた白線。ただ好きだから歩いていただけだけど、誰かに譲るとこんなにあっけなく死んでしまう。


それからも夏菜の「好き!!!」はそのままの勢いで続いていく。むしろ大人になった分濃度が濃くなっていく。ちょっとやばい薬にも一瞬手をつける。
好きなことをするためにはお金が必要、ってことで夜の世界に入る。
ここでヤクザの倉科と出会う。
ヤクザ映画のオマージュで口上をしてみせる夏菜、返り血女から受けた「人生譲るな」。返り血女は彼氏を刺し殺した直後だったらしい。
倉科が聞く、「人が潰れる様はどうだった?」
「なんかね、あたし 元気出て笑っちゃったんですよ」
このあとの倉科の顔がいい。なにも言わないんだけど、きっと静かに決意している。

自宅に招かれた夏菜に倉科は「自分はマゾヒストだ」と打ち明ける。
俺を叩け、言われるまま戸惑いながら頬を叩く。叩くたびもっと強くと求められて徐々に力を強くしていく。最後のビンタは完全に自分の意志だ。
ビンタという行為が倉科の願望から離れ、夏菜の欲望に変わる瞬間。
高笑いする夏菜はまさに「好き!!!」を叫んでいる。
ここも死ぬほど好きなシーン。


ここから倉科との別離を経て女王様としてのストーリーがスタートするんだけど、私は「始まりの話」がとても好きなのでとりあえずここまでにしておく。
物語が動き始める瞬間がいつだって好き。


余談なんだけど、タイトルのSPUNKって完全にスパンキングからきていると思っていた。わかりやすくSMの象徴になるようなタイトルにしたんだなあと。
でもふと気になって綴りを調べたら、お尻を叩くスパンキングってspankだったのね。じゃあspunkってなんだろう? って思って調べたらこんなん出てきました。

spunk

1. 勇気、気力、快活さ、活気
・You've got a lot of spunk. : 気合い入ってんなー。
2. 卑俗〉精液
3. 朽ち木
4. 顔立ちのきれいな人、ハンサムな男性、美人
・What a spunk! : すごいハンサム[美人]!
自動
1〈米〉勇気を出す
2〈卑俗〉射精する
発音spʌ́ŋk、カナスパンク


めちゃくちゃ最高じゃないか?????

「好き!!!」を体現したタイトル。まさに夏菜だし、「好き」に飛び込んでおいでと言われてるようでもある。「好き」はこう楽しまなくちゃと背中を叩かれてるようでもある。
卑俗で精液っていうのもなんか出来すぎててすごくいい。笑


前述した通りもうすぐ4話目に入るんだけど、とにかく毎回面白くて目が離せない。漫画を毎月買って読むなんてりぼん以来だわ。
読んでるだけで元気出る。まんまとやられてるなという感じです。
毎月読み進めるのが死ねない理由のひとつになってる。おおげさだけど!

というわけで、引き続き楽しみ!

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