見出し画像

『ビジュアル・シンカーの脳』を読んで

↑視覚思考者の視点が知りたい人はこちらのほうがより詳しく書いてます。

視覚思考者の中でも絵で考えるタイプか、図で考えるタイプか。
この本の用語では、物体視覚思考者、空間視覚思考者の違いが知りたくて本も読みました。特に印象的だったところの備忘録です。

「物体視覚思考者、空間視覚思考者」という言葉だけでは違いがよく分からなかったのですが、要約上手さんがいらっしゃった。

視覚思考はさらに具体的なイメージで考えるタイプと、パターンや抽象的な概念で考えるタイプに別れる。

言語思考で理屈思考|honeshabriさんのnoteより引用

・具体的なイメージで考える:物体視覚思考タイプ
・パターンや抽象的な概念で考える:空間視覚思考タイプ
この紐付けを持って読み進めるとよりわかりやすいです。

それぞれの分野でいう具体と抽象の例が載っていてわかりやすかったです。


(どこかに第1〜3章についてのコメントがあるわけではなく、既知だったので省略してます)


第4章 補い合う脳―コラボレーションから生まれる独創性

世の中には言語、物体視覚、空間視覚の三種類の思考者がいて、それぞれに得意なスキルをもっていることがわかれば、三者がどんなふうに補い合えるか理解しやすいだろう。これは、科学研究からコンピュータサイエンスなどの工学、芸術まで、さまざまな分野で見られる。

ビジュアル・シンカーの脳|著 テンプル・グランディン|訳 中尾ゆかり|P126

言語思考タイプの作詞家と空間視覚思考タイプの作曲家の協力から名曲が生まれたのだ、と。

ビジュアル・シンカーの脳|著 テンプル・グランディン|訳 中尾ゆかり|P128

工業デザインの分野でも互いに補い合う関係が見られる。
工業デザインの企画では、美術と作図に重点が置かれ、数学はそれほど重視されない。工業デザイナーは、製品が作動する仕組みや外観の構想を練る。一方、機械エンジニアは、負荷テストや物理的な力という数字に関わる面に目を向けて製品の機能を計算する。工業デザイナーは設計し、機械エンジニアはそれを機能させる。

機械エンジニアと工業デザイナーは周りの世界を見る目が違うのかどうか、南オーストラリア大学とコネチカット大学の二人に研究者が調査した。
〜中略〜
調査の結果、機械エンジニアにとって「外観と性能は密接に関連しているようだ」。それぞれの椅子の機能性を美しさと同じように評価する傾向があった。ところが、工業デザイナーは美しさと機能性を分けて考えた。つまり、エンジニアにとって形と機能を切り離すことは難しく、一方、デザイナーは美しさと機能性を上手に区別した。
この研究から、美しさと機能性は、物を区別する基準になるだけではなく、見る人によって評価が大きく異なることが明らかになった。研究をもう一歩先に進めたら、機械エンジニアは空間視覚思考タイプで、工業デザイナーは物体視覚思考タイプと推定できるだろう。

ビジュアル・シンカーの脳|著 テンプル・グランディン|訳 中尾ゆかり|P133-134

↑ 2010年代に教授とこの話をして進路を選んで、改めてこの話をしていたのだなと。


営業vs現場

技術屋がビジネスパーソンを嫌うのは、物の作り方を知ろうとしないからだ。とにかく仕事を片付けて欲しいと思っている言語思考のビジネスパーソンは、えてして一般化しすぎるが、それが視覚思考の技術者には何よりも腹が立つ。一般化は、技術屋にとって死に等しい。取るに足りないような詳細がことごとく重大な結果を招くからだ。一般化でいちばん困るのは、事業の完了にかかる時間を少なく見積もること。ビジネスパーソンの自我が大きくなるほど、台無しになることが増える。

ビジュアル・シンカーの脳|著 テンプル・グランディン|訳 中尾ゆかり|P156

ここで言う技術屋=視覚思考タイプの人のことで、「仕事を片付けてほしい」だけで話しかけられると本当に腹が立ってましたね。(私は技術屋でした)なんでイラッとするか言葉になってなかったけど、この文章を読んで腑に落ちました。
オーダーメイドが得意だし、意にそぐわないものは虫唾が走るので、具体的にするためのヒアリングには応えてほしいですね。技術屋はその瞬間の解決だけでなく、現場での実運用や数年先の運用までが自然と守備範囲になっているので。ビジネスパーソンがそこを軽視しているとは思わないけど。ビジネスを成立させるのも大事だし。

職場でどうしたら相互理解に繋がるかはパターンが無限にあるので一旦脇に置いて、思考タイプの違いから起きるもやもやポイントだけ。
何となくね、言語思考タイプの人にとっては、曖昧で、再現性がなくて、冗長な話が怒りポイントなのかなと思っていて。実際はどうなんだろう?(主語が大きい)

ちなみに私が、言語思考タイプ × アグレッシブなスタイルの人と話してた時、嫌な言い方をすると、断定的に、理屈をつけて、簡潔に"圧縮する"と地雷を踏まず話が先に進むな〜と思ってました。
明確に、図面や写真などで再現性を担保して、箇条書きで要点をまとめてから話すとも言う。
要約できたらいいんだけど、要約ではなく"圧縮"です🤷🏻

話を聞いてもらうためにかなり訓練してきたし、箇条書きだけで60点は取れるものも、本人としては大事なことを8割削ぎ落としてるので粗すぎて違和感がすごい。

訓練してきたし分かりやすさに定評もあるけど、それでも自分の主な表現方法ではないので疲れます。心底疲れたので最近はその癖を投げ捨てました。

…とはいえ、私もあまりに冗長すぎる話を聞くのはしんどかったです。時と場合、要約の粒度と精度が合うのはもう相性かなぁ。
合う人は余裕を持って1時間枠で打合せ時間を確保しても20〜45分ぐらいで完了するし、合わない人は2時間確保+1時間延長しても永遠に終わらなかったですね…(遠い目)

言語思考マッチョの極み💪🏻みたいな会議に自分の考えを持っていくときは、言語思考タイプ × アサーティブなスタイルの人に出力して、上手く要約してもらってました。もう昔々の話ですが。


ひらめきが訪れるとき

ひらめきが訪れるときも思考タイプによって異なる。

物体視覚思考者は、ほかのタイプの脳の持ち主なら、やたらと複雑にしそうな解決策をシンプルな形で思いつくのが得意だ。
〜中略〜
特注の高価なロボット義手より、自分で考えた間に合わせの単純な解決策のほうが役に立つことに気づいた。
〜中略〜
これが物体視覚思考タイプの発想だ。一方で、ハイテクの義手は何でもできるように設計されているが、上手にできないこともけっこうあるらしい。
〜中略〜
これまでに私が見た本当に革新的な道具は、同じ仕事を全く新しい方法でするように設計されている。よりシンプルで、よりよく作動し、メンテナンスもより簡単なことが多い。こういう成果を得るには、道具を作る物体視覚思考者とロボットをプログラミングする空間視覚思考者の両方の頭脳が必要だ。

ビジュアル・シンカーの脳|著 テンプル・グランディン|訳 中尾ゆかり|P160-161

どっちタイプかな〜と思って読んでいますが、プログラミングは全然できなかったですね。これ以外にも異なる思考タイプの人たちのコラボレーションの事例が載っていて、一つずつ読んでみました。面白いよ!!
ここまで読んでみると物体視覚思考寄りだなあと思いつつ。


第5章 天才と脳の多様性

視覚思考と特異な才能が結びつくとき

アインシュタインの脳と天才になったわけについては、数多くの論文が発表されてきた。脳の検査では、プロのヴァイオリニスト同様、運動野が肥大していたことがわかった。音楽をつかさどる部位は空間視覚思考と同様に右脳にあると考えられている。数学でも音楽でも、パターン化と抽象思考の土台として空間視覚思考が使われる。

ビジュアル・シンカーの脳|著 テンプル・グランディン|訳 中尾ゆかり|P183

音楽は空間視覚思考のほうを使っているのか〜へー。パターン化…変拍子…笑
数学はめちゃ得意まではいかないけど、理系に進むと決めた高2からマンツーマンの個別指導をつけてもらい、何となく分かるぐらいまでは勉強しました。
推薦で進路を早めに確定して、塾で線形代数を予習で教えてもらってました。


天才の脳の多様性

脳の多様性は、診断のレッテルを通してではなく、異なるOS(オペレーティング・システム)として考えられるべきだとして、「かつてオタクだとか頭でっかちと言われていた子が、おとなになって未来の設計者になる」と言う。

ビジュアル・シンカーの脳|著 テンプル・グランディン|訳 中尾ゆかり|P189

危険が"見える"

視覚思考者の私(著者)の場合、この能力は精密に調整されている。危険な崖が見えるだけでなく、墜落した結果が一連の鮮明な画像になって頭に浮かぶのだ。言語思考者なら同じ状況を言葉で理路整然と説明するだろうが、私には何枚もの絵がユーチューブの動画みたいに鮮明に見える。

ビジュアル・シンカーの脳|著 テンプル・グランディン|訳 中尾ゆかり|P198

何がトリガーで、何を言ったら逆上するか、勘みたいなものはあります。みんなあると思うけど。8割方その人の地雷を踏まないし、無効化する作用もあります。昔は100%絶対地雷を踏まないような振る舞いをしてましたが、今は残りの2割はそもそも私と相性が悪いので諦めようと決めました。

私は長年、設計畑で仕事をしてきたから、設計では何の知識のない人を基準にしなくてはいけないことがわかっている。誰が操作しても腕を挟まれないように装置を設計してきたのは、操縦する人の腕が装置の動いている部分と壁の隙間に挟まれる光景が頭の中で見えるからだ。航空エンジニアは必ずしもこれがわかってないという気がする。自分自身が現場に出ないから、飛行機を操縦する人の能力を課題評価してしまうのだろう。737MAXも、ベテランではなく、並のパイロット向けに設計されるべきだったのだ。

ビジュアル・シンカーの脳|著 テンプル・グランディン|訳 中尾ゆかり|P220

これ、すごい同意する、めっちゃ分かる。
危険が浮かぶものはすぐ回避するから目に見えるケガは滅多にしないし、設計思想はまさにこれ。並の人も使いやすいもの。


言葉がなくてもわかる

動物は感覚に基づく世界で暮らし、視覚や嗅覚、聴覚、触覚で考える一方、わたしたち人間は言葉を重視する世界で暮らす。言葉は感覚をあざむき、感覚情報を素直に受け取る妨げにもなる。

ビジュアル・シンカーの脳|著 テンプル・グランディン|訳 中尾ゆかり|P256

感覚ね、本当に大事だよねぇ。


近しいことをして一周して返ってきた今、改めてこの説を読んで、次は何をしようかと考えるこの頃です。先人は海外にいた。

10年以上前にこの話を聞いてやってきたけど、今の日本に需要あるのかな?
今ってどんな感じなんだろうね。実際。


読んでみてよかった!面白かった!と思ったみなさま、活動のご支援をお願いいたします🌞

  • 本記事下部にある「記事をサポート」からご支援(ブラウザAppのみ)

  • OFUSEからご支援

いつも温かいサポートありがとうございます。いいねも励みになっています。これからも心が動いた時に記事を追加していきますので、温かく見守っていただけると幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。