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幼いころの記憶。

最初に出てくる光景は、
暗闇とテープレコーダーだ。

夜。
暗くてひんやりと染み込んでくる

喘息のときは、
あのを見つめていた。

苦しくて、悲しくて、虚しくて。
どうしようもなくて、
ただ、そのを見つめているしかなかった。

『あのとき、どうして走ってしまったんだろう』
『お母さんの言うとおりに、もっと早く寝ておけばよかった』

と、
頭が後悔でいっぱいになっていく。

その後悔の中、

その、
何かが恐ろしいものが生まれそうなに、
飲まれて浸りながら、
幾度(いくど)となく荒い呼吸を繰り返す。

ひゅーひゅーと、
喉に空気が引っかかって耳障りな
闇にゆっくりと溶けていく。



お母さんが
「少しだけ」といって仮眠を取るとき、
わたしは闇と1つになる。

そのあと、
その場を支配するのは、

荒い息遣いのと、
最後までわたしのそばにいるテープレコーダーだけ。

テープレコーダーは、
わたしの辛さなんて
まったく気にせずに話を紡ぐ。

何度も何度も同じ話を、
同じ調子で紡いでいく。


自分の荒い息遣いを聞きながら、
わたしはお話の世界に飛び出していく

そこには
暗闇なんて1つもない。

がさんさんと降り注ぎ、
登場人物たちが自由に動き回っていく

家にいるのに家ではない場所。
幼い頃の、わたしが最も多く過ごした場所。


不思議で、
不気味で、
それでいて暖かい、
私だけの場所。


 その感覚が、
本を開けば鮮明に蘇ってくる


喘息のときと同じように、

落ち込んでいるとき
あの場所がわたしを迎えに来る。

だから、
わたしは今でもおはなしが好きだ。

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