音楽ニュース:ザルツブルク・フェスティヴァル2020、ザルツブルク・フェスティヴァル2019のようす


新型コロナ・ウィルス感染拡大の中、ヨーロッパのほとんどのクラシック音楽のフェスティヴァルが中止に追い込まれる中、ザルツブルク・フェスティヴァルの決定が注目されていました。
5月25日、フェスティヴァル事務局は開催の発表をしました。しかし大きな計画変更を余儀なくされています。

世界的に有名なザルツブルク・フェスティヴァル(Salzburger Festspiele、ザルツブルガー・フェストシュピーレ)は日本では『ザルツブルク音楽祭』として知られていますが、音楽だけではなく演劇はとても重要な部門です。第一回は1920年、ホーフマンスタール作≪イェーダーマン≫劇の上演でした。

今年はそれから100年記念の年、同祭は大規模なプログラムを発表していました。7月14日~8月30日、44日間の開催期間中、16会場で200公演の予定でした。
オペラ公演だけでも、R.シュトラウス作曲≪エレクトラ≫(新制作)上演回数7回、モーツァルト作曲≪ドン・ジョヴァンニ≫(新制作)7回、プッチーニ作曲≪トスカ≫4回、モーツァルト作曲≪魔笛≫7回、ノーノ作曲≪イントレランツァ1960≫4回、ドニゼッティ作曲≪ドン・パスクヮーレ≫5回、ムソグルスキィ作曲≪ボリス・ゴドゥノフ≫(新制作)4回、ヘンデル作曲≪メサイヤ≫2回というものです。
コンサートにはもちろんウィーン・フィルも登場する予定でした。

チケットは今年初めに総数18万枚、24.5百万ユーロ(約30億円)が売れていました。

しかし、8月1日~30日、30日間に開催期間を短縮して、6会場で30公演に変更になりました。プログラム詳細は6月初めに発表の予定です。
なお、オペラ公演の予定はなく、今年上演予定だったものは来年に持ち越しの予定です。
https://www.salzburgerfestspiele.at/

さて、昨年のザルツブルク・フェスティヴァル開催中、8月14日、ジャック・オッフェンバック作曲≪地獄のオルフェ≫プレミエに出かけました。2019年はオッフェンバックの生誕200年で、多くの劇場がオッフェンバック作品をとりあげましたが、同祭も同様でした。

≪地獄のオルフェ≫は、日本では≪天国と地獄≫として知られ、フレンチ・カンカンの音楽は私の通った小・中・高校では運動会でいつも流れていました(今から思うとどういう選曲だったんでしょう?)。というわけで、ご存知の方も多いと思います。

しかし作品は当時のフランス社会の偽善を鋭く痛烈に風刺しています。ギリシャ神話のオルフェの悲しい愛情物語ではなく、仮面夫婦だったのに、社会的体面のために死んだ妻に会いに行くオルフェの姿を滑稽極まりなく、皮肉たっぷりに描いています。
これを音楽・オペラ・ファンだけではなく、ハイソサエティの人々が集まるザルツブルク・フェスティヴァルで取り上げたわけです(ちなみに『劇場は社会の鏡』と言われます)。

以下、当日の様子です。

公演の場所は『Haus für Mozart』(ハウス・フュア・モーツァルト、モーツァルトのための家)でした。これは劇場前です。ここは以前、『ザルツブルク祝祭小劇場』と呼ばれていました。2006年、モーツァルト生誕250年を記念して改名されました。座席数は1495です。有名な祝祭大劇場と隣接しています。写真中央奥の小高い丘に『ホーエンザルツブルク城』が見えます。

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隣接の大劇場です。
ちょうどマセラッティで到着した客がいました。

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劇場に入ったところです。

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劇場の2階にあるバルコニーです。客が見ているのは劇場前部分です。

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劇場前はバルコニーからは次のように見えます。

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≪地獄のオルフェ≫プレミエのカーテンコールです。指揮者と演出チームが登場すると、期待に反して(?)大ブラボーでした。バリー・コスキーの演出はエロ・グロ満載でとても辛辣、ザルツブルクの観客には合わないのでは、と思っていたからです。しかし演出と歌手はスピーディでスタイリッシュ、コスキー色満載でした。

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公演後のプレミエ・パーティーです。
ザルツブルク・フェスティヴァルのインテンダント(監督、総裁)マルクス・ヒンターホイザーさん(黒のスーツで、マイクを手にしています)が挨拶を終えたところです。左で拍手しているのは≪地獄のオルフェ≫の演出を手がけたバリー・コスキーさんです。

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パーティー会場は劇場の最上階でした。バルコニーからはこのように見えます。8月中旬は、まだまだ日が長く、暗くなるまで時間があります。

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写真:©Kishi

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