音楽のお知らせ:シュトゥットガルト・オペラの《ニーベルングの指環》ストリーミング

コロナ時代に多くのオペラ劇場が公演のストリーミングをしています。

いよいよシュトゥットガルト・オペラのワーグナー作《ニーベルングの指環》の無料ストリーミングが始まりました。

これは『ミレニアム・リング』と呼ばれ、1999年~2000年にかけ、《ニーベルングの指環》を構成する《ラインの黄金》、《ワルキューレ》、《ジークフリート》、《神々のたそがれ》の4作をそれぞれ違う演出チームで制作するという史上初の試みで、大絶賛されました。

まず≪ラインの黄金≫ストリーミングが始まりましたが、これは7月10日までです。
https://www.staatsoper-stuttgart.de/spielplan/oper-trotz-corona

これには現在、大スター・テノールのヨナス・カウフマンの前夫人マルガレーテ・ヨスヴィーヒがラインの乙女の一人フロスヒルデ役で出演しています。当時、カウフマンもシュトゥットガルト・オペラのアンサンブル所属でした。

その後の予定は以下の通りです。
《ワルキューレ》 7月10日17時~
《ジークフリート》 7月17日17時~
《神々のたそがれ》 7月24日24時~

《ニーベルングの指環》は全4作の合計上演時間が約15時間、登場人物も多く、オペラ作品の中でも最も敷居が高いかもしれません。
でもこのプロダクションはとても面白く、時間が経つのがあっという間です。私は、実際の上演を何回見たかわかりませんが、そのたびに発見があり、約20年経った今でも新鮮に感じます。

このストリーミングで感じをつかみ、さらに深く知りたいなど興味を持った方にはDVDをお勧めします。ストリーミングは字幕なしですが、DVDには日本語字幕がついています。私もDVDのライナーノーツを書いていますので、ここにご紹介します。

《ラインの黄金》(Das Rheingold)字幕:舩木篤也
・山崎太郎:密室の運命共同体 ー ヨアヒム・シュレーマーの《ラインの黄金》
・来住千保美:ツェーライン、シュレーマー、そして〈ムジーク・タンツ・テアーター〉

《ワルキューレ》(Die Walküre)字幕:松原良輔
・梶本章:字句自解 シュトゥットガルトの《ワルキューレ》
・来住千保美:〈ひん馬の庭〉シュトゥットガルトの女たち

《ジークフリート》(Siegfried)字幕:吉田真
・梅津時比古:哲学としての「ジークフリート」
・来住千保美:演出家とドラマトゥルク - 光と影

《神々の黄昏》(Götterdämmerung)字幕:山崎太郎
・吉田真:ペーター・コンヴィチュニー演出の《神々の黄昏》
・来住千保美:音と言葉 ー 始まりと終わり

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2002年秋、シュトゥットガルト・オペラはこの《ニーベルングの指環》チクルス上演で開幕するという、これも滅多にない大胆な上演をしました。シーズン開幕はまだ休み明けで、音楽家の調子も上がっていないので、わりと小ぶりの作品で開けるのが通常だからです。
さらに技術陣の負荷もとてつもなく大きいからです。

上記DVDライナーノーツ執筆者の内、山崎太郎さん(現・東京工業大学教授)、梅津時比古さん(現・桐朋学園大学学長)、梶本章さん(当時・朝日新聞社勤務)、その他の方たちと一緒にチクルス上演を観ました。
シュトゥットガルトでは毎年秋、3週間にわたり、「カンシュタッター・フォルクスフェスト」(Cannstatter Volksfest)というお祭りが開催されます。ミュンヘンの「オクトーバー・フェスト」と並んでドイツでは有名なお祭りです。
公演のない日には、みなさんとこのお祭りに出かけたり、近郊の街を訪れたり、楽しい1週間を過ごしました。公演後は劇場の関係者食堂で、支配人のクラウス・ツェーラインや指揮者のローター・ツァグロゼク、出演者や裏方たちと夜遅くまで激論を戦わせたり、楽しく歓談したり、タフな日々でした。

ちなみに、この頃のシュトゥットガルト・オペラについては、6月24日付で、以下のようにお知らせしています。

★★★

(6月半ば発売の)『音楽の友』7月号に掲載されている私の記事は以下のとおりです。

①海外レポート・特別編
「ドイツ音楽物語」シュトゥットガルト州立歌劇場ーミレニアムを挟んで 144ページ

★★★

こうして《リング》(《ニーベルングの指環》を略してこう呼びます)は、いや《リング》に限らず、芸術は人と人を結び付けます






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