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『20160118』を読んでみて思うこと

鈴木おさむさんの『20160118』を読んだ。電子ではなく、敢えて紙の本で。全部読んで、当時心に詰まっていたものの答え合わせはできた。鈴木おさむさんやスタッフさんの苦悩が見えたし、私たちが感じた通りの「異常」だったと理解した。そして、益々彼ら5人を愛おしいと思った。2016年から心が癒えない人が世の中にたくさんいる。私もその1人だった。
しかし、小説を読んで答え合わせができたところで腑に落ちるわけでもなく、心が癒えたわけでもない。ただ、鈴木おさむさんという彼らに近いフィルターから見た、ひとつの答えだけは知ることができた。そこには彼らへの愛があることがよくわかった。
でも、何で「今」だったのだろう。そんな疑問が残った。

2016年11月、私は会社を退職した。退職したのは、自分の体調不良が原因だった。別にアイドルグループの解散との因果関係はないが、ある大手企業のクレーム対応窓口のSVをしていた当時、7年間遅刻早退欠勤もなかった私の身体に異変が起きたのは事実。
私の仕事は、簡単に言えばクレーム対応をするスタッフのケアがメイン。もちろんそのストレスはゼロではないが、片道36分間の電車の中で聴くあるアイドルグループの音楽が、いつの私をリセットしてくれていた。しかし、2016年8月以降、私はそれを聴けなくなった。電車内で聞いていると急にめまいに襲われる。通勤途中で3度救急車に乗った。その年の8月末日、部長に呼ばれ、私は引継ぎと有休消化を含め三か月後に退社することが決まった。
大好きだった彼らの音楽も映像もグッズも、全てを部屋の奥に仕舞い込んだ。
私の中で唯一信じられたのは、歌の最後に掲げられたリーダーの右手。その右手を逃さず抜いてくれたカメラマンさんに感謝して、体調を崩し、職を失った私の2016年は終わった。

2022年リーダーが動き出し、私は仕舞い込んだ様々なグッズを再び手に取った。それはもう、本当に久しぶりに。
その日のうちに、子供から操作方法を教わって、自分のパソコンにiTunesを取り込み、iPhoneに彼らの曲を取り込んだ。懐かしい歌声、今聴いても心に響く。毎日聴いていてももう体調は崩さない。
InstagramやTwitterにある、彼らに関わる投稿も積極的に閲覧した。2016年以前のような日常を少しずつ取り戻していた。
自分が意識し始めたからなのか、テレビから彼らの曲が流れてくることが急に増えてきたように思った矢先、この世で一番大好きな人が休養に入り、娘が大好きなアイドルグループの脱退退所報道が流れた。そう、あの時の光景がフラッシュバックする程、衝撃的なFC動画。娘に誘われて、半年前に私もこのアイドルグループのファンクラブに入っていたのだ。5人並んだ姿が大好きな彼らに重なり、InstagramやTwitterには、私と同じように「あの時」を思い出した人たちが騒ぎ出し、私は再び体調を崩した。心配した娘が、12/7の渋谷ヒカリエで開催される個展のチケットを買ってくれた。大好きなグループの末っ子本人が今目の前にいる、それだけでワクワクできた。

そして、小説『20160118』が出た。これが、希望の未来へ向かう布石ならいいと願う。私の大好きな彼ら6人の交わる道に続いているならいい。
私は、再結成や歌って踊ることを望んでいるわけではなく(もっと先の未来にそれがあればいいとは思うが)、ただ、テレビという画角の中に5人、いや6人が同時に映ってくれたらいいと願っている。一つのグループに戻らなくたっていい。ただ、ひとつの画面に全員がおさまって、笑ってくれたらいい。あのお腹を抱えて笑うほど楽しかった、5人、6人。それが見たい。
そして数カ月、数年先に、また新しい音楽を創り出してくれたら嬉しいと思う。私が今聴いている彼らの歌声に、彼らの権利がなくたっていい。揃ってさえくれたら、また新しく創り出せるのだから。

鈴木おさむさんが「小説」と言った『20160118』。小説ならば、明るい終わり方がいい。本人たちの夢がたくさん詰まった、この続きを読ませてほしい。それは、私たちがワクワクするようなストーリーだったら嬉しい。
私は自分でも小説を書く。自分が書く小説は、読み終えた最後に前を向けるように終わらせることを意識している。読んでくれた人が、ちょっとでも優しい気持ちになれたら、ちょっとでも希望が持てたら。いつもそんなことを考えながら書いている。『20160118』もそんな小説であってほしい。だって小説なんだから。
だから、happyな続きの物語が欲しい。

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