もう母には怒らない、と決めた話

私は子供の頃、母に忘れられ、本屋に置き去りにされたことがある。

立ち読みしていたら本屋から出ていく母が見えたので、追いかけて行った。

母は車に乗り込み、エンジンをかけ、そのまま走り去っていった。

すごくびっくりして、私は本屋の隣のコンビニに走り、公衆電話で家に電話をした。

まだ携帯電話がなくてポケベルの時代だったと思う。

家に電話しても誰も出ない。母はどこへ行ったんだろう。不安で涙が出てくる。

コンビニで泣いていると、母の車が通った。

お母さん!!!!!!!!!!!!!!

『あ〜、ごめんごめん!!あなたと一緒に来てたことをすっかり忘れちゃって、お母さん家に帰ろうとしちゃったわ。あはは!!』

信じられない!!!自分の子供を忘れることなんてあるの?!!!嘘つき!!きらい!!お母さんのバカ!!!!!!!

一生恨んでやると思った。

それから25年程経った今。今度は私が子供たちのことを忘れそうになっている😂

5歳、2歳、0歳の私の子供達。

私一人で3人連れてると、脳ストレスがヤバイ。忘れ物なんてしょっちゅうあるし、考えられない状態になってくる。

特に一番迷子になる確率の高い次女を、忘れてしまうんじゃないかと不安になる。3 m以上離れるんじゃないよと思う。

そしてあの時私を置き去りにした、母の気持ちがわかった。嘘つきでもなんでもない、本当に私を忘れただけだったと。

だからこれから何があっても、何を言われても、母には怒らないと決めた。母に怒っても、意味がないと思ったから。

25年かけて、やっとわかった。

以前は何度も同じ話をする母に対して、正直うるさいなあと思っていた。同じ話を何度もしないでよ、と怒っていた。

でも母に怒るのをやめた。

今私は産後うつで、実家で療養している。

だから母と毎日話している。

そして母が同じ話を何度もする時がある。

母は自分の気持ちが収まるまで何度も話す。

でも母の前には、最後まで話を聞く怒らなくなった私がいる。

いつもだったらその話何度も聞いたよ!!と言っていたところだけど、じっと母の話を聞いてみた。

ていうかめっちゃ面白いじゃん、、、

母は同じ話でも、5パターンぐらい話し方を変えていることに気づいた。

伝えたいことと要点と結論は一緒なんだけど、話し方が違う。結論から先に話したり、ドラマティックに話したり、起承転結の道順通り話したり、順番を入れ替えて言葉を変えたり、一言だけで惹きつけたり、同じ話でもこんなに話し方や伝え方があるのかと思うと、聞いていて勉強になる。

ちなみに母はたまに人前に出て話をする機会があるんだけど、台本はない。

その場にいる人たちの顔やエネルギーを見て当日にぶっつけ本番で話す。

台本があるとその通りに喋らなきゃいけなくって、思うように話せなくなるらしい。

勝間和代さんもそう言ってたな。(私は勝間和代さんの大ファン)

お母さんには怒らないって決めたから、これからも気にせずに私には何でも言っていいと伝えた。

『ふーん、あそう。なんか私お前がうつ病で家にいるのが楽しいわ。お前と一緒に居ると健康になってくる感じがするの。毎日話せて嬉しいわ。』

なんだか嬉しかったから、今のうちに母とたくさん話しておこうと思った。






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