2020年のキーワード「食サ分離」について

ラーメンとスマホ、パーソナルスペースがあればいい!?
「食サ分離」というキーワードが告げる外食新時代

沖縄出店で学んだものとして、前回は「いい仕組みづくりができた」ことを書きました。今回はもう一つのテーマ「食サ分離の可能性が見えたこと」にフォーカスしてみましょう。

「ソラノイロOKINAWA」、そして、宮崎千尋プロデュースの「島豚ヌードルズ」が入っている沖縄元祖ラーメン横丁はフードコートという形態で、セルフサービスでラーメンを提供しています。

僕は出店側としてはじめてフードコートに挑戦し、セルフ型の楽しさ、未来を感じることができました。ご存じの通り、呼ばれたらできあがったラーメンを取りに行く。バッシング(下げ膳)もお客さんが自分で行なう。そのちょっとした手間こそありますが、いろんなラーメンを同じ席で食べることができますし、他の店のビール、メニューも持ってこられる。そんな楽しい食環境が生まれています。

それが「食サ分離の可能性が見えた」ということ。

食サ分離――これは外食業界で注目を集めているキーワードで、食(料理)とサービスの概念を分けて考えるということ。食サ分離に気づきを得るなら、飲食業界は慢性的な人材不足に陥っていますし、フードテックをはじめとするIT化も進んでいる。こうして食を巡る環境が激変する中、今まで通りのフルサービスをただただ提供するのは思考停止に陥っているんじゃないか? ということです。

僕が思うに、今のお客さんはフルサービスの提供を求めてはいないんじゃないかな。おいしいラーメンとスマホ、そしてパーソナルスペースさえあればいい。そうやって安心できる環境があれば、店員が必ずしも介在しなくても満足度は高まります。

今のラーメンシーンは『とみ田』『飯田商店』『蔦』など、手厚いフルサービスを提供する店が先導しています。その流れがある一方、食サを分離したフードコートスタイルのラーメンが、これから一定の関心を集めるようになるでしょう。

『一蘭』が走りですが、既にそのスタイルは全国各地で登場しています。一幸舎グループが『博多 一幸舎 慶史』を福岡で始動させ、静岡では『くりや製麺直売所』がお客様に支持されているんです。

第一、街の食の一端を担うコーヒーショップはセルフサービスがメインですが、それに誰も疑問も不満も持たず、当たり前のように利用している。セルフうどん、セルフ焼き肉もそうでしょう。

キャッシュレス決済が当たり前になり軽減税率が導入され、店舗は禁煙になる――昭和、平成では考えられなかったパラダイムシフトが令和の世の中になって、どんどん進んでいます。トップマネジメントでブレイクしたステーキチェーンが苦境に陥り、同じくカリスマ的なトップが牽引していたコンビニチェーンも時短、営業縮小の波に乗れているとは言い難い状況。時代の流れ、波を読むことの難しさを感じます。

僕たちも、これまでの店舗はフルサービスをしっかり守っていますが、この「食サ分離」のムーブメントを注視しつつ、エリアと用途、ターゲットによっては営業形態を柔軟に変え、ラーメンを提供していきたいと思っています。

ラーメン店はフルサービスじゃなきゃいけない。これも昭和・平成の常識かもしれない。これまでの成功体験にすがることなく、新たなサービスを模索し、創っていく。そんな時代になっているのではないでしょうか。

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