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契約職員ってなんなの

結婚を機に夫の地元に移り住み、実家の自営(建設業)に入社。
事務員として働くこと六年半。
最後は、舅姑とのトラブルにより退職した。

その後、私はとにかくすぐに新しいところで働きたかった。
そして、彼らと関係のないところで生きていきたかった。

就職活動を始めた。有期雇用でもなんでもよかった。
雇われ方なんてどうでもいいと思った。
すぐに働くところを決めないと、ほら見ろ、お前に行くところなんかないんだ、と舅姑にバカにされ、自営に連れ戻されるかもしれないと怯えた。

現在の職場への応募動機は、職務内容が独身時代に正社員として10年以上取り組んできたことと同じものだったので、なじみがあったから。
結婚を機に退職してしまったけれど、もし結婚しなかったら続けていただろうから、業務内容が懐かしくて、もう一度やってみたい、と思ったから。

入社してすぐにわかったことは、この会社は「正職員」と「契約職員」をものすごく区別して扱っているということ。
そしてそれを「契約職員」たちは敏感に感じ取り、自分たちを軽んじられていると不満を持ちながら勤務しているということ。

「契約職員」の一員となった私は、「契約職員」という言葉を聞かされずに過ごせる日がない。
はじめは驚きもしたが、言っている内容は理解できることもあるのでいちおう聞いていたが、それはあまりにも頻繁で、日々を過ごすうちにうっすらとした違和感からしだいに不快感に変わった。

職員はいいよね、職員だけだもんねいろいろもらえるの、私たち契約だもんね。
「契約職員にここまで仕事させるんだもんね」
「また職員だけで打ち合わせして契約職員はのけもの」

正職員の不在時を狙っては誰からともなく集まり、愚痴大会がはじまる。
さんざん、自分たちの現状を嘆いたあげく、落としどころは毎回同じ。
「契約職員にここまでさせる」のは「私たちができるから」とオチをつけて、笑っておしまい。私たちが我慢するしかないとか、私たちのほうが貢献してるとか、そういう自分たち憐憫が呪いの言葉に聞こえ始めた私は、これ以上ここで過ごすことを選ばないことにした。
今年度をもって退職することに決めた。

業務がいやなんじゃない、そういう負け犬根性みたいなものを植え付けてこようとする環境が辛い。

正職員になりたいのなから正面から挑むしかないのに。
そんなにも嫌なのなら、きっぱりと退職すればいいのに。
契約職員として十五年勤務している人なんてザラにいて、だからこそなのだろう、自分たちの力でこの組織が維持できているという自負もすごい。

だけど、満たされない欲求、たぶんそれは自分たちの能力を認めてほしいというものだろうが、長年それを積もりに積もらせてしまった人たちからは、「悪臭」がする。どことなく甘ったるい、腐敗臭というか。

私は、自分の人生に十年前に起こった、「結婚を機に知り合いの一人もいない夫の地元に移り住む」というリセットをくぐり抜けているから、辞めることも次に行くことも、雇われ方を気にしないことも、全部できる、軽々と。
あれ以上のリセットは、もしかしたら今後起こらないかもしれないと思える。

雇われ方なんかどうでもいい。契約職員ってなんなの。
非正規雇用だからなんなの。有期の私より無期の自分たちが上なの。
ぐちぐち言うなら辞めればいいのに。
あんたたち、退職する勇気がないだけじゃん。
このごろは、あと数か月一緒に働く彼女たちを、こういう冷めた目で見始めた自分がいる。


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