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日記 2023/03/30 ギターと少女漫画(主に麻生みこと「路地恋花」)

2023/03/30(木)
昨日早帰り出来なかったので今日は残業はほどほどに切り上げる。ギターを弾く。空も飛べるはずを初心者コードで弾いている。夫が隣りにいて、歌ったり失敗を笑ったりしてくれないから上手くのって練習できない。一方一人だからこそ運指や右手と左手の個別の練習など地味でミスすると恥ずかしい練習ものびのびできるなと思った。人目を気にしていたのか、私は。ひさしぶりにサニーデイ・サービスのセツナも弾く。奏法の名前は忘れたけど右手で弦を叩いて音を切るのが、リズムをとっていて楽しいし、音が面白い。エレキギターなのにずうっとアコギの遊び方をしている。心の何処かで、姪や甥らが我が家に遊びに来てギターが見つかったときに一曲二曲弾けなくてどうする、という焦りがある。エレキギターをアコギのように使うのはやややりにくい。でも、たった30分でも音楽をやってるのが、夫婦でたまにそれを共有できるのが、楽しい。アコギもほんとは、ほしい。バンドもやりたい……。サッカーだって観てるよりやってみたい。絵も描きたい。友達と同人誌出してみたい。刺繍や織物にも興味ある……。句会にも……。
節操なくて、いいんだ。ベランダに出てコーヒーを飲むときの幸せと同じで、自分の胸にちゃんと風が吹くのを感じていたい。でもやっぱり、一番心にガツンと来るのは、少女漫画を読んでるときかもしれない。
谷川史子の「はじめてのひと」がすきだったんだけど、やはり1〜3巻の面白さに最新巻は勝ててないかな……と思ったり。この人の漫画は昔読んでも、絶対好きにはならなかっただろうな。個人的には谷川史子の作品はそこまでドハマリできなくて、惜しいという感じ。たまにすごく刺さるエピソードがある。はじめてのひとは、1巻かな?博物館の絵の修復士をされてる与ちゃんの話がとてもありふれているのに、とても印象に残っている。

麻生みことの「路地恋花」がすごかった。自分のために描いてもらったのかと思うほど、ツボだ。同じ作者のアレンとドランも好きだけど、あれはかなりドタバタサブカルラブコメという感じで、路地恋花はもっと落ち着いていて、有り体に言えば地味なのだけど、久々に本当に大好きだなと思う漫画に出会った。何がツボなのか。リリシズムの加減がいい。京都のやや奥まった路地にある長屋に駆け出しの職人さんたち(彫金師、綴じ本屋、ろうそく屋、時計屋、革靴屋……)が店子として暮らすオムニバスの形式。だから、すごく個々の技術や想い、慎ましい暮らしや若いクリエイターの悩みなどを、全体的に地に足が着いた雰囲気で描いてる。そこで起きる人情話が、妙に親近感がわいて、妙に艶っぽい。なかなか濃い、今日日聞かないくらいの京言葉の人物ばかりなんだけど、気が抜けてほんわかはんなり職人さんの日常パートのテンポから、急に湿度を感じるやりとりが始まる。この漫画は結構思うように行かない話も多く、そんな日常とそれを生きる人の心の動きがとても繊細に、堅実ながら美しく描かれていて、それが私の好きな作品のテーマの人間讃歌を感じさせる理由なんだと思う。無理に褒めるとか、嘘をつくのではなく、ありのまま前向きにも後ろ向きにも暮らしや人を愛でる物語が好きだ。

この作者はとても映画や文学やたくさん出てくるけど、その使い方が滅法上手い。全然嫌らしくない。多分めちゃくちゃ好きなんだろうな、作者が作中で言及する作品のこと。小道具的な扱いではなく、しっかり作品のキーになってるというか、登場人物の感情の変化や物事の捉え方に作品が影響しているようで、効果的に、そして大事に使われている気がする。
路地恋花では、1巻の谷崎潤一郎の陰翳礼讃や痴人の愛を扱った、壮年の男とロリータ女学生のやりとりがとてもよくて気に入った。綴じ本屋の女性の話もかなりいい。。いや、画家の話も、シルバーアクセサリー作家の話も良かったなぁ……。男性目線の漫画は正直あまり好きなものがないが、麻生みことのはかなり面白いなぁと思った。女性を見つめる気持ちにもとてもナチュラルに感情移入できる。男女ともにどこで何故心が揺れてしまったのか、本当にしっくりくる。
小花美穂より、もっとしおらしくて文化的なんだけど(小花美穂はそのパワフルさと陰鬱さがいいのだが)、そのポエティックさ、ロマンチックさは読後感としては通ずるものを感じた。なんだかんだ、私は男女の物語がめちゃくちゃ好きなんだろう(こだわりが強すぎるのか受け付けない話も多いけど……)。久々に生きてる実感のわく漫画タイムであった……。思い出すたびにニヤニヤするいい漫画をありがとうございました。

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