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淡々と、静かに進む、おそろしい物語

ペコさんファンなら誰しも、この「恋じゃねえから」のページをめくった瞬間「おや」と小さなひっかかりを感じたかもしれません。
フラットで穏やかなのに、ひんやり静かなページの奥にはなにか、灼熱のものがあるような――。
そんな不思議な冒頭です。

誰ひとり声を荒げるわけでもない。
泣き叫ぶわけでもない。
責め立てるわけでもない。
けれども、なぜ、徐々にこの激痛は高まっていくのだろう――。

ひとつひとつのセリフが、時間差で効いてくる、不思議なこの感じは、ペコさんの真骨頂。
けれどもこの作品ではさらに磨きがかかっている感じです。

傷は、痛みは、どれほど時間が経とうとも、忘れようとしても忘れられず、決して薄れていくことはない。
誰もが経験上知っている、残酷な人生の真実。
それが、丁寧に丁寧に、ひとつひとつすくい上げられていく、深い筆致。
少女たちは大きなものを失い、おとなになってからも、ことあるごとにぶりかえす痛みと傷を背負っていく。
男たちは、なにひとつ失わず、変わらない――。変わらないからこそ、ごく当たり前のこととして少女の傷と痛み、秘めたるプライバシーを衆目にさらし、さらには高額で売りさばいてしまえる、何というむごさ、おそろしさ。

ひどくおそろしい。けれど、実際にはいたるところで起こっている、このおそろしい物語を、ペコさんはどう導いていくのか――。
目が離せない作品です。


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