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静かに、しなやかに、鬨の声があがる

行間の深み、というものがありますが、まさに「ジーンブライド」にはコマ間の深み、というようなものがあります。

中心のテーマの奥底に流れる作者さんの強い想い、というような。
しかもそれは、これから大きく爆発する予感をひしひしと感じさせます。
一読したら最後、新刊を待ち焦がれる日々がはじまります。

登場人物達が話し、動くにつれて、読み手の中にあったもやもやとした名前のない、けれども重く降り積もっていたものに輪郭が与えられ、やがてはっきりと色が付き、押し込めていた本心を激しくゆさぶる――。

そんな静かな力を秘めた作品です。

あるものをないものとして、苦しいときに無理やり笑い、捨ててはいけないものを捨てて――
けれどもそんな生き方の果てには自分自身の人生の喪失があるのではないか――
そんな静かで、激しい呼びかけが、ページいっぱいに響いています。

「私の少年」の中にも、その片鱗はあったように感じます。
後半、聡子の中で過去と現在、未来までもが入り交じり、まるで読み手の体験にリンクするように肉薄してくる臨場感。

人間の手による漫画だからこそできる、漫画にしかできない、深い共感と共鳴。
登場人物達とともに、読者の心の伴走がはじまる、そんな心揺さぶられる作品です。
新刊が出たばかりですが、次刊が楽しみでなりません。

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