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240307

「早川千尋」の誕生日を迎えて

 お祝いに、東京都町田市にある椿屋カフェを訪れた。せっかくなら「早川千尋」に縁のある江ノ島あたりに行った方が良いような気はしたが、それはまた次の機会にする。椿屋カフェは以前謎解きの際に訪れたが、お店のレトロな雰囲気も良いし、お食事も美味しかったので、下手に江ノ島に行くよりは良いのかもしれないと思っている。
 職場の派遣社員に勧められたものを注文し、美味しく頂いた。食事の感想は後日派遣社員に伝えることにする。
 カラオケにも行った。「早川千尋」のイメージに合うような曲を選んで歌い、感傷に浸っていた。

イラスト:かのじ様

 さて、彼が生まれてから、気づけば8年の年月が経った。

 最初はTRPGという、ルールに基づいてオリジナルキャラクターを動かす遊びのために作ったキャラクターだった。TRPGをやるにあたって、キャラクターシートという、キャラクターの能力や情報を纏めた紙をこさえる必要があるのだが、それをこさえてまとめ役の人間に提出したのが2016年3月7日の出来事であった(原案自体はそれ以前から存在していた)。遊んだゲームの世界観もあり、想像したものを具現化できる能力を持っていたり、神と人との混血だったりと、次から次へととんでもない設定が生えてくるのだが、その境遇で思い悩む「弱さ」のようなものを僕なりに考えたものだった。
 そういうわけでポジションとしてはラスボスに近かったように思える。現に「貴方はラスボスである」といった旨のことが書かれた秘匿情報(TRPGでは他の人間に公開されない情報が渡されることもある)が渡されたこともある。望まぬ破壊や殺戮といった部分ではヒロインの要素もあったのだが。

 しかし、キャラクターが成長していくにつれて(これは能力面だけでなくキャラクターの心の持ちようといったものも含まれる)、そして作者自身が国試浪人と就職を経て環境が変わったこともあり、TRPGに彼を登場させることに難しさを感じるようになっていった。彼の舞台は「定期更新ゲーム」へと移っていったのである。
 定期更新ゲームでは、自分のオリジナルキャラクターを作り、期日までに作ったキャラクターに進行方向、会話、戦闘、成長等について指示を出す。そして、期日になれば参加者のキャラクター全員が一斉にプレイヤーの指示に従って動き、結果が出力され、プレイヤーは結果を見て一喜一憂したり、次の作戦を考えたりする。

イラスト:ゆふ様

 『LastOrder』という定期更新ゲームとの出会いは運命に近かった。『LastOrder』のキャッチコピーは、「星の行方を託された"もうヒトリ"の貴方へ」だった。これを読んで、ちょうど3年前(当時)に作ったあのキャラクターが居るじゃないか、と思い、過去の画像やらpdfやら紙媒体のキャラクターシートやらを引っ張り出してきた。
 この頃の「早川千尋」は、自分の中に「"もうヒトリ"の自分」を内包しているキャラクターであった。一方、『LastOrder』には「BUG」と呼ばれる参加キャラクターのコピーが登場し、それらと戦うシステムになっていた。「"もうヒトリ"」という共通点がさながらジグソーパズルのピースのようにぴたりと嵌まった。「早川千尋」が辺境の惑星(『LastOrder』の舞台)に旅立った目的は「"もうヒトリ"の自分を探し出して殺すこと」であった。また、『LastOrder』の世界では想像したものを具現化することがある程度可能であったことから、元のTRPG時代の設定とマッチしたのだ。

 『LastOrder』が彼と噛み合ったのは、『LastOrder』における戦闘データの組み方もあったのだと思う。「鍛錬」というシステムでキャラクターを成長させていくのだが、幾つかの「学科」とよばれるものを選択しキャラクターに学ばせることができる。そして、学んだ「学科」の習熟度や組み合わせによって、技を習得することができるという仕組みだ。そして、「学科」の習熟度、組み合わせ、習得した技も、そのキャラクターらしさというものを如実に表していた。
 「神と人の混血」という設定からある程度の強さを担保し、他のどのキャラクターと組んでもうまく立ち回れるように技を使うタイミングを設定し、彼の好きなものや興味のあるものを学ばせた。これが綺麗にハマった。

 そして、『LastOrder』の舞台である「辺境の惑星」では、憎んでいたはずの"もうヒトリ"と対面し、自分自身を託すという形で長い長い冒険を終えた。その後も何度か「早川千尋」を動かしたが、あくまで後日談という位置付けになった。
 2020年、彼は無事に地球へと帰還し、作者の肉体のほうの誕生日に、TRPGのほうでお世話になっていた方から、彼の神としての名前を頂いた。「天八十昏日乃彦命(あめのやそくらひのひこのみこと)」という名だ。こんなに印象深いお祝いはかつてなかったと同時に、神になったことで彼の冒険はここでピリオドを打つことになってしまったと感慨深さのようなものも感じた。

イラスト:ぽっとん様

 「早川千尋」を通して、色々な世界を特等席で見せて頂いた気持ちだ。本当はここに書いてあるよりももっと色々なものを一緒に見てきた。それらを全部ここに書き留めようなどと思えば、その度にあれがこうでといった説明をしなくてはいけなくなるので割愛するが、楽しい思い出であったと共に、きっと多くの方々に迷惑もたくさんかけてきたと思う。今は作者共々「卒業」を迎えたわけだが、きっとこれからも、形は変わったとはいえ一緒に歩んでいくのだろうと思っている。

 「早川千尋」は、今年で26歳になる。かなり人生において寄り道をしたキャラクターなので、今年の3月に音大を卒業することになる(その寄り道の原因には作者の設定ミスもあるのだが)。その後の彼の人生については言及するつもりはないが、明るく穏やかなものではあるつもりでいる。


よひつじの森

 実は誕生日を精神的なほうに設定してある。生年だけは筆者の年齢と辻褄を合わせた形ではある。
 ヨルとソンノから誕生日を祝われた。本当の誕生日ではないためどこか不思議な感覚だった。

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