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【7】ちひろ、巫女になる

巫女になる為にモデルを辞めると決意しましたが、
実際に辞める事は簡単ではありませんでした。

後輩が入ってきたとはいえ、年間の撮影予定はメインである私をベースに組み立てられていましたし、有難いことに強く引き留めても下さいました。

「せめて今年度までは在籍して欲しい」と会社から言われてしまったのです。

早く辞めたい気持ちと、お世話になったので最後まできちんと務めたいという思いに板挟みになりそうでしたが、最後までやり通す事にしました。

『責任は、果たそう』
そしてスッキリと卒業して、巫女になる方法を探そうと考えたのです。

自分の目指す方向が決まると、
不思議なもので仕事がスムーズに進みました。

自分に似合っていないかもと戸惑ったコーディネートも・・・
『似合うように見せたい』
『可愛いと思われたい』
そんなふうに意識を変えることで、楽しく撮影できました。

『いつか巫女になったなら、こんなふうに色々なお洋服を着て撮影してもらうなんてできないから、いろんなことを今のうちに体験しよう』

私の気持ちの変化は写真にも現れるようで、スタッフさんたちから褒められることが増えていきました。

「辞めるのはもったいないよ」と声をかけてくれる方もいましたが、
私の心は全く揺らぐことなく、約束の年度末にきっぱりと引退しました。

そして20歳の春、私は晴れて無職になったのです。

退職した次の日から、
失業手当を貰いながらすぐに巫女への就職活動を始めました。

色々な神社へ足を運び参拝を行いつつ、
掲示板に求人が貼られていないかを確認し続ける毎日。

でも、求人はほとんどありませんでした。
あっても、アルバイトのような形態のみで常勤の募集を行っている所は皆無だったのです。

実は巫女は常勤で働いている人数は少なく、普通規模の神社で常勤は1人~2人程度。
年末年始などの特に忙しい時や土日祝や神事の際に臨時アルバイトで賄っているような形が大半だと思います。

皆さんが知っているような大規模な神社だと増えますが、
そういった有名どころは人気でなかなか求人が無いんです。

七五三で行った、あの大好きな神社への電話を掛けたましたが・・・
残念ながら求人はありませんでした。

常勤求人のあまりの少なさにすぐに常勤を目指すのは辞めようかとも思うようになってきました。

普段はアルバイトを行い、土日祝日のみ巫女をして、
「まずは経験を積もうかなぁ」と考えていた頃でした。

私はその日も、いつも通り神社へ求人募集が無いかの電話を架けていました。

【徳護井(とくごい)神社】※仮称
そこは過去にも何度か訪れたことのある神社で、
今回の就職活動の際にも訪れていたんです。
しかし、掲示板にはアルバイトの募集すら無かった事を確認済みだったので参拝のみ行い、現地では忙しそうだった事もあり聞かずに諦めた場所でした。

当時の私は、巫女の求人があまりにも少なかったので、
そういった求人が出ていない神社にもダメ元で電話を掛けていました。

徳護井神社に電話を掛けたら、
「ちょうど、来月で産休に入る巫女がいるので求人を掛けようとしていた。まずは面接に来てほしい」という内容を頂けました。

これまで1ヶ月近く、毎日何件もの電話を架け続けてきましたが、
このような反応を貰えた事は初めてでした。

…面接は3日後。

それまでにとにかくその神社の事を調べ上げました。
自分で足を運ぶことは勿論、祀っている神様の事やホームページ、SNSで検索するなど隅々まで情報を得て面接に臨みました。

緊張しすぎて面接で何を聞かれたのかは覚えていません。
でも、モデルの経歴を評価して頂いた事や、巫女に合いそうな外見であると褒められ・・・
『ここでご奉仕したい』という想いが強くなったことは覚えています。

よく聞かれるのですが「処女であるか?」の質問などはありませんでした。

絶対に合格したい!その一心で色々な情報を集めて思いを伝える事ができたこともあり、無事に合格を頂く事ができました。

ただし最初は・・・
【産休に入る巫女さんが1年後に復帰を予定しているので一旦それまで】という条件付きでした。

しかし、結果的に1年後にもその巫女さんは復帰することなく退職されました。

その事もあって、私は常勤として永続的に雇用される事が決まり、今でも約3年間巫女としてご奉仕に就く事が出来ています。

憧れだった巫女の舞も踊れるようになり、
まだまだ拙いですがご朱印も書けるようになってきました。

長くなりましたが、ここまでが私のこれまでの人生になります。

ここからは少し【巫女】についてお話していこうと思います。

巫女の制約は神社によって異なります。
よく言われるのが・・・
「処女でないといけない」
「年齢制限がある」
「彼氏を作ってはいけない」
「結婚したら退職」

色々なことが言われていますが、
実際にはその神社によってまちまちのようです。

もっと詳しく実情をお伝え出来れば良いのですが、面接に進んだのも、他の神社でご奉仕したことも無いので徳護井神社の事しか分からないのです。。。

また私はこの神社と神様に巫女の生涯を捧げるつもりなので
これまで『他の神社はどうなんだろう??』と気にした事もありませんでした。

ですので、徳護井神社だけの話になるという事を予めご承知下さい。

徳護井神社の場合は、男性関係の制約は少ないようです。

彼氏さんがいる巫女もいますし、前述した通り子供を産んだ後も戻ることも可能なようです。
ただ、こうした巫女は神職資格を持たず、ご朱印を授与するしたり巫女の舞を披露することもできなくなってしいます。

ですので、主に受付や案内を担当することになる為、結婚を機に退職するか、次第に別の役割に移るようです。
(私が入ってから結婚されている方はいないので、聞いた話になります)

こういったプライベートな部分は、職業柄暗黙の了解の風潮があり、あまり表立って言わずに直接宮司さんと話して決める形となっています。

仲の良い巫女同士だと少しだけ男性の話をする場合もありますが、
【皆がいる場面では大っぴらに公表しない】そういったイメージです。

ただ、私としては神様にお仕えしていることもあり「未婚女性が巫女の役を担うべき」という伝統的なしきたりを重んじたいと思っています。
もし、私が結婚出来た場合には退く覚悟を持って務めています。

ここまでお読みいただきありがとうございましたっ!!

エピローグとして、後日最後にもう1章だけ書きたいと思っていますので、
あと1章だけお付き合い頂けますと幸いです(*´ω`*)♡

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