見出し画像

子をあずかり育てるということ

こんにちは! いつも読んでくださりありがとうございます🌟

 前回は「社会的養護(養育)」のなかの、里親やファミリーホームといった「家庭養護」についてお話しましたね。今回は、その「里親制度」の現状と課題について知ってほしいことを少しお話していきたいと思います。

里親制度の現状と課題

 以前お話したように、「家庭養護」が主流の他の先進国と比べて日本はまだまだ施設養護が主流となっており、里親の委託率は圧倒的に少ないです。(下記図参照。また、2020年現在も低い現状がある)  

【里親委託率の国際比較(2010年)】画像1

 政府は今後、「家庭養護」を基本としていくという方針を出していますが、今の現状から考えると実現にはかなりの時間と労力がかかることが容易に想像できるでしょう。(2018年に厚生労働省は都道府県等に対し、「7年以内に就学前の子どもの里親委託率を75%まで引き上げる」などの国の目標を念頭に置きつつ、各地の実情に合った計画を策定するよう求めました。このときには現状とあまりにもかけ離れた目標設定に現場からはかなりの反発の声が上がりました。)

では、なぜ日本の里親委託率は低いのか、について、私の考えをお話します。

①そもそも里親制度の認知が低い

 そもそも里親制度について知っているという方はどのくらいいるでしょうか。最近では里親制度について、街頭で普及活動をしたり、テレビで見かけることもちらほらありますが、「里親」という言葉は知っていても、「里親制度」について知っているというかたはかなり少ないと思います。施設などでも「里親支援専門相談員」という専門職をおいたり、児童相談所でも「里親制度」専門の人員をつけたりして、里親委託に力を入れ始めたのがここ10年内くらいです。里親委託の盛んな国と比べるとかける時間もお金も不足しており、まだまだ普及啓発活動は大きな課題があります。(みなさんも街頭や、公共施設などで見かけた際にはぜひ覗いてみて下さい)

 また、日本では里親というと「養子縁組」のことをイメージすることが多く、養子縁組を考えているような人でなければ積極的に情報収集したり、興味を持ったりする機会は少ないでしょう。知る側からのアプローチが少ない話題であることも関係しているでしょう。

 一方で、一番知ってほしい(普及してほしい)のは前回最後に説明した「養育里親」です。養育里親は一時的に家庭で子育てを引き受けるという形になるのですが、まさに「社会全体で子どもを育てる」という社会的養護を担ったものになります。日本での家庭養護を普及させるにはこの「養育里親」が増えることが要となります。

②実子がほしいという気持ち

 先程話したとおり、里親を希望する人には、里親制度を活用する目的が(主に、実子ができないので)「子どもがほしい」という気持ちに基因していることが多い、という現状もあります。(いわゆる養子縁組) こういった場合は、なるべく低年齢のうちに迎え入れたいという希望から(0〜6歳未満なら特別養子縁組によって戸籍上も「実子」として縁組することができることもあって)、乳幼児が望まれることが多く、小学生以上の子を望むケースは少ないです。(特別養子縁組は人気のため、順番待ちをしていることも多い。)そのため、マッチングがなかなかすすみません。また、この場合は縁組をせず一時的に預かるという「養育里親」という関係には難色を示すことも多いようです。(育ての親ではなく、「パパ・ママ」と呼ばれたい、ずっと親子関係でいたいという気持ちが強い。)

③実親の親権・意向が重い

 日本は他の先進国に比べ、親の親権(子の財産を管理したり、子の代わりに契約をする、子の住む場所や、子が就職するときに許可するかどうかなどの権利と義務)や、親の意向が強く反映される傾向にあります。また、児童虐待に対する罰則も他の先進国より軽い傾向にあります。そのため、虐待などで親子を分離した後、施設に入所するのも、里親へ委託するのも基本的に実親の同意が必要になるのですが(その後の親子関係の再構築も考慮して強行突破はしにくい。強行する場合は裁判。)、里親委託をすすめたい子がいても実親の同意(納得)が取れずに委託ができない(またはかなりの年月を要する)というケースが多くあります。

 これに比べ他国では、緊急一時保護と同時に親権停止の措置がなされたり、1年ほどたっても家庭に戻れる状況でなければ里親委託を進められるなど(子どもに早く安定した養育環境を提供するために)、かなりスピーディーにことが進んでいく仕組みになっている国もあり、里親の委託率も高くなっています。日本も徐々に世界の標準に寄りつつはあるのですが、親優先ではなく、「子供の権利を尊重する」ということに関してはかなり遅れている現状があります。

 また、実親さんも、里親委託をすると子どもと会えなくなるのではないか、自分より里親に懐いてしまうのではないか、実家と里親宅を比較されるのではないか等の心配から、委託に同意しないケースがよくあります。 養育里親への委託は一時的なものですし(期間はケースによる)、親子の関係は継続するよう支援していくので面会もできるのですが、まだまだそういった周知や理解も足りない現状にあります。

④子育て環境に課題が多い

 そもそもの話ですが、里親でなくても今は「子育て世代に厳しい社会」といわれることもよくありますよね。子どもが複数欲しくても経済的に厳しいとか、妊娠・出産・育児で仕事環境が大きく変わってしまうとか、ワンオペや育児の孤立化とか、一般家庭でも人一人育てるのにかなり負担が大きい現状があります。自分の子どもの子育ても精一杯なのに、他人の子を預かる余裕なんて生まれないですよね。

 少子化を防ぎ、子どもたちも親も生き生きと生活していくために社会が抱える課題は多いと思います。でもだからこそ、社会全体で「子どもを育てる」ということに真剣に向き合い、みんなで課題に取り組んでいく、そして、どの子どもも親も孤立化させず、取りこぼさずに見守っていくことが大切だと思います。


さて、今回は里親について私が考える課題等をお話しましたが、いかがでしたか?養育については色々な考え方やあると思いますので、皆さんの考えや意見も聞かせてもらえると嬉しいです。

最後までありがとうございました🌟


 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?