そう聞こえない問題
ベートーヴェンのロマンス、ト長調(G-Dur)有名なベートーヴェンの“2つのロマンスのうちの1つです。この曲の大きな特徴は、
「拍子感」
“ソーファーソーーラシーレードシーラ“
素直で美しいメロディー。でも楽譜には、なんだか仕掛けがありました。
“ソーファー“ はアウフタクト(弱起) で、次の“ソー“が小節の1拍目(強起) あれ?そうなんだ?じゃあ、そう聞こえる様に弾けばいい?
・・・??
ヴァイオリンの独奏で始まるこのメロディー。誰がこの冒頭の “ソーファー“ が1拍目から始まって い な い と予想しながら聴くでしょう。
私は、友人でベートーヴェン大好きピアニストの斎藤龍くんに電話をしました。彼は何度もこのロマンスの伴奏をし、私より遥かに詳しいことを知っていたからです。「この作曲方法、どういうこと?普通こうは書かないよね?こういう作品他にあったりする?1拍目の扱い方は?半小節ずれてる感が・・・」
電話越しにギャーギャーピーピーうるさい私の下手な説明を汲み取り、彼は答えてくれました。
「そうだね、1拍目強調したところで、「それでもそう聞こえない問題」ね。」
それ、それが言いたかった。「それでもそう聞こえない問題」
歌ってみる。 「ソーファー、 ソーーラシーレード、 シーラ・・」
・・・
アウフタクトと1拍目を無理やり強調してしまうと、そもそも持つこの素直なメロディーの性質を壊してしまうことになります。
結論から言うと、別にそれは「そう聞こえなくていい」
1拍目が何処かを見せることが、この音楽の理解には繋がりません。
素直で美しいこのメロディーが楽譜上、半小節ずれている形で表示されていることで、演奏家が受ける影響とはどんなものか。
その上でどんな演奏を求められているのか。
着眼点はそこなんです。
真面目で論理的なベートーヴェンさんのこの仕掛け。裏を読んで読んで、結局たどり着く答えは、
彼が仕掛けた楽譜トリックに、実は最初から「感覚的」には反応し、既に思い描いていた大きな膨よかなメロディーラインでした。
恐れ入りました。
このロマンスは、今月25日本番です。
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