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勝手にプログラムnote

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コントラバス奏者として演奏会やレッスンを通して出会った曲の魅力を書いていくメモ。プログラムノートの参考にもどうぞ。
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音楽で描く超豪華列車の旅。F.スパーク/オリエント急行 Orient Express

こんにちは。コントラバス奏者、吹奏楽指導者、指揮者の井口信之輔です。 クラシック音楽を中心にコントラバス奏者として活動するほか、中学高校の吹奏楽部やオーケストラ部、大学サークルでコントラバスの講師を務めたり、アマチュア楽団の指揮・指導にあたったり、茨城県にある取手聖徳女子高校の音楽科でコントラバスの講師を務めています。 また、SNSでは日々の活動や音楽家のキャリア展開の仕方などを発信しています。 久しぶりの更新となりました自分の好きな曲を好きなように解説する勝手にプログ

華やかな響きに憧れて。S.ライニキー/蘇る火の鳥 Rise of the Fire Bird

スウェアリンジェンやライニキー、バーンズと中学高校で吹奏楽をやっていた人なら一度は聞いたことある名前の作曲家。華やかな響きと疾走感あふれる音楽はとても心地よく、そして懐かしい。 そういえの、こうした響きに憧れて吹奏楽が好きになったよなとふと思う。 最近、頭の中によく流れているのがアメリカ合衆国の作曲家スティーブン・ライニキーの『蘇る火の鳥』という作品で、約2分40秒ほどかなり短い中にライニキーの魅力がたっぷり詰まっている。 コンサートの幕開けにおすすめ! 冒頭のティン

イエス・キリストの生涯を描いた超大作。F.フェラン/交響曲第2番「キリストの受難」La Passio de Crist

コントラバス奏者、吹奏楽指導者、よこはま月曜吹奏楽団指揮者の井口信之輔です。 オンラインコミュニティ「コントラバス研究室BASSROOM」の運営をしたり、オンラインでもレッスンをしたりしています。 さて、僕は歴史や神話、伝説などを描いた吹奏楽作品を好んで聴くのですがその中でもトップクラスに好きな作品が、スペインの作曲家フェレール・フェランの交響曲第2番「キリストの受難」 フェランは作曲家、指揮者、ピアニストとして活躍していますが日本では吹奏楽作品が多く知られており、この

美しきメロディは世代を超えて。J.スウェアリンジェン/ロマネスク ROMANESQUE

親しみやすいメロディ、分かりやすい楽曲構成が印象的なスウェアリンジェンの作品は1980年から90年代にかけて日本の吹奏楽シーンに大きな影響を与えた。 吹奏楽をはじめて一番最初の演奏した曲がスウェアリンジェンの作品だったという人はどれくらいいるだろうか。 僕は初めて聴いた吹奏楽作品がスウェアリンジェンだったように記憶している。中学校のオーケストラ部でコントラバスを弾いていて、小学校のブラスバンド部に所属していた友達の口から「インヴィクタ」という言葉が出て、その「インヴィクタ

【楽曲レポート】スコアを眺めてると思い出す、懐かしき景色と当時の面影。J.スウェアリンジェン/センチュリア序曲 CENTURIA

「音楽」と「香り」と「記憶」は結ばれると思っていて、この曲を耳にすると「記憶」の部分が鮮明に蘇ってくる。 J.スウェアリンジェン(1947〜)はアメリカ合衆国の作曲家で、日本の吹奏楽の世界で最も親しみのある作曲家としても挙げられる一人。 スウェアリンジェンの作品は、アマチュア音楽家やスクールバンドの学生を意識した親しみやすく、技術的にも演奏しやすい作品が多い。 A.リードやJ.バーンズ、R.W.スミスに並び吹奏楽に青春を捧げてきた人たちにとって身近な存在であったのではな

【楽曲レポート】空の王者だけが知る景色。S.ライニキー/鷲が舞うところ Where Eagles Soar

アメリカ合衆国の作曲家スティーヴン・ライニキー(1970〜)の作品で、メイン州にあるアカディア病院から創立10周年を記念して委嘱され誕生した作品。 メイン州はアメリカ合衆国本土およびニューイングランド北東部に位置し、同州の美しさ、壮大さを描写したというメッセージが残されている。 この曲との出会いはよこはま月曜吹奏楽団第三回演奏会で、演奏会のオープニングとして取り上げたことがきっかけだった。 吹奏楽作品を集めた人気シリーズ「ニュー・ウインド・レパートリー」2004年のCD

【楽曲レポート】夏の思い出の写真を眺めながら聴きたいナンバー。やまかわたくや/Like a milk tea -latte with extra milk-

先日、マンドリンアンサンブルに参加した時に出会った作品。 音源をいただき譜読みをしている時、Instagramにアップした夏の思い出写真を仲間と眺めながら「そういえば、夏もここ来たよね」って会話をしているシーンが浮かんだ。 海の家が立ち並び水着を着た人たちが行き来する夏の海は、夏が終わると誰もいなくなり海の家は片付けられ静けさが残る。 遊園地やプールが併設されたレジャー施設への最寄駅に出来たバスを待つ長蛇の列もなくなり、車が溢れていた駐車場は閑散とし営業を終了したプール

【楽曲レポート】ファンタジーの世界をマンドリンの響きで描く。F.メニケッティ/劇的序曲「魔女の谷」(呪われた谷)

僕はファンタジーの世界が大好きので「魔女」というキーワードが曲の中に出てくると高確率でテンションが上がる(だいたい魔女が出てくる物語ってファンタジー系だよね?) ご縁あってマンドリンアンサンブルの中でコントラバスを弾くことになり出会った曲。まず「魔女」というキーワードを見て「この曲まだ聴いてないけど絶対好きだ」と思った。そして聴いたらドンピシャにハマった。 そして、曲について調べはじめたらあまり情報が出てこなかったので自分なりの解釈でまとめてみることにしました。 マンド

【楽曲レポート】故郷と母親への思いを音楽に乗せて。P.グレインジャー/コロニアル・ソング

今年の冬に出演する演奏会のプログラムの譜読みをしていると、色褪せたアルバムを一ページ、また一ページとめくっているような気持になる懐かしさを感じさせる曲があった。 この曲は『コロニアル・ソング』という曲で、作曲者はオーストラリア生まれのピアニスト・作曲家として活躍したパーシー・グレインジャー(1882-1961) イギリス領だったオーストラリアのメルボルンで生まれたグレインジャーは、ドイツでピアノ演奏と作曲を学び、19歳になると母とロンドンへ渡った。この時期に才能が開花した

【楽曲レポート】音楽を耳にして頭の中に広がる景色は?R・ミッチェル/大草原の歌

「平日休みでも吹奏楽がやりたい!」というコンセプトものと去年、神奈川県に平日吹奏楽団という市民バンドが立ち上がった。 バンドは月曜・火曜・水曜と分かれており僕はご縁あって月曜日に活動する吹奏楽団の指揮・指導を担当させていただくことになった。最初は2人しか集まらなかったメンバーも最後は30人近くまで増え演奏会は無事終了。 お話をいただいた時には演奏会のプログラムは既に決定しており、月曜吹奏楽団の記念すべき第一回演奏会では1980年代に流行った吹奏楽作品、いわゆる懐メロを特集

【楽曲レポート】三日月の向こうにあるものは…夜の雰囲気漂うファンタジーな作品。高橋宏樹/三日月の彼方-Over the Crescent Moon-

吹奏楽指導の仕事をしていて何より楽しみなのが、新たな曲との出会い。 毎年新しい作品が生まれ、まだまだ知らない曲がたくさんあるからこそ、レッスンを通して色々な曲に出会えることがあります。 去年の夏、とある学校の自由曲で『三日月の彼方』という素敵な作品に出会いました。 この作品の作曲者は、2014年の吹奏楽コンクール課題曲「勇気のトビラ」の作曲者でもある高橋宏樹さん。 高橋宏樹 |作曲家 1979年5月東京生まれ。専門学校にて映像音楽やポップス理論などを学ぶ。主に吹奏楽曲

【楽曲レポート】魔女狩りの嵐が吹き荒れる!吹奏楽伴奏によるミュージカル。B・アッペルモント/サタンの種(ZAAD van SATAN)

自分が吹奏楽の世界が好きな理由の一つに、多くの作曲家が生きていることが挙げられる。 生きていれば次々と作品が生み出され「◯年◯月××の交響曲第◯番が初演!」といったニュースをリアルタイムで感じることができる。 毎年、誰かの作品がどこかで初演されCDとなって発売されたり、作曲家と演奏者の距離が近いのがこの世界の魅力だなと感じています。 新しく生み出される作品に触れている中で知ったのは、キャッチーなメロディとドラマティックな音楽が魅力の作曲家ベルト・アッペルモント。(197

【楽曲レポート】演奏会のオープニングからコンクールの自由曲。E・ハックビー/アクラメーションズ

吹奏楽コンクールに向けたレッスンで色々な学校へ行くこの時期、まだ知らない作品にたくさん出会えるのがとても楽しみだ。 去年の夏、合奏講師を務めた講習会で印象残る曲に出会いました。なんというか吹奏楽のあのキラキラとした響き、昔から好きだったあの感じ。とても抽象的ですがそんな感じの響きに魅了された曲でした。 E・ハックビー/アクラメーションズアメリカの作曲家エド・ハックビー(Ed Huckeby 1948~)の『アクラメーションズ』という作品がとても印象に残り、ハックビーについ