シェアハウスの庭に生えてるみかん食レポ

 シェアハウスの庭にはキンモクセイのほかに、みかんの木がある。ちょうど今頃が、実がなって黄色く色づく季節だ。

 毎朝洗濯物を干す際に様子をうかがい、「まだか……いや、もうちょっと色が濃くなってからだ……」などと悠長に構えていた。しかしおそらく野鳥に皮をはがされてしまった一つのみかんを見て、「ああ、今が食べごろなんだ!」とようやく気付いた次第である。

 木の上の方がより鮮やかな色だったので、二階ベランダの柵の隙間からひいこらと手を伸ばした。やっとの思いで一つもぎ取り、洗ってしばし眺める。

 もいだところから、柑橘系の見知った香りが鼻を抜ける。皮は分厚く、全体はずっしりと重い。指で押し込んでみると強く跳ね返してきて、皮の中に実がぎゅっと詰まっているのがよくわかる。これはいいみかんに違いない。

 お尻の方から丁寧かつ大胆に皮をむいていく。実のオレンジと白いすじのコントラストが美しい。大きめのすじをいくつか取り除きながら、房を一つもいで食べる。

 さわやかな甘さだった。スーパーで売っているオレンジのみかんのような、万人受けする強い甘さではない。しかし酸っぱさとのバランスがちょうどいい、野生に近いみかんの味だった。野生のみかんは食べたことないけれど。

 黄色いから、てっきりもっと酸っぱいのかと思ったけど、全然想像と違った。甘酸っぱくておいしい。これはみんなにも伝えなければ……住人用のLINEグループで、「みかんが食べごろだよ! うまい」とみかんの絵文字を添えて送った。

 木の全体を見たところ、結構な数がなっている。しかし、これでも少ない方らしい。

 前の住人に話をうかがう機会があったのだが、このみかんの木は変わった周期があるらしい。食べきれないほど実がなる年と、その年に比べると明らかに少ない年があり、今年は少ない方の年だと言っていた。

 ということは、来年はもっと多くのみかんが食べられるということだ。こうなったら指がまっ黄色になるまで食べてもいいかもな、みかんを使ったデザートなど料理にもチャレンジしてみたい。

 まあまずはその前に、今年のみかんを喜ぶべきだろう。しばらく、朝のデザートはみかんになりそうだ。

 障害年金で暮らしていると食費も結構カツカツで、デザートを買う余裕はまるでない。だから、こういうサプライズはとても嬉しくてしょうがないのだ。栄養バランスを考えても喜ばしいことだろう。

 万年腹の調子が悪いので定期的にヨーグルトを買っているのだが、みかんヨーグルトにするのもいいなあ。簡単だし。今クラシルのアプリでざっと見繕うと、みかん飴やサラダ・酢の物なんかが出てくる。なるほど、おかずにも使えるのはすばらしい。食べたい。和菓子に精通した友人がいるので、彼女を招いてみかん饅頭を作らせてもらえないだろうか。

 想像は膨らむばかりだが、みかんの木は風に揺れながら何も言わず佇んでいる。ありがたい自然の恵みを受け取って自分たちは生きているんだなあ、と実感した。

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