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23|排水と水を巡る白山水系の旅 大野

エコロンシステムの見学で、GWに福井の大野へ行った。

エコロンシステムも、仕組みは毛管浸潤トレンチと似ている。どちらも土中に、まず汚水をためる沈殿槽があり、その先に微生物繁殖資材があり、上に土をかぶせて、表面には植物。全ての層にいる生き物が汚物を浄化(分解)してくれて、さらに分解された養分を含む土が植物を育てるという、その場に循環をつくりだしてくれる装置。

毛管浸潤トレンチは、沈殿槽と繁殖層を横につなげるから広い設置面積(4m×10m)が必要なところ、エコロンシステムは上下に重ねるから、深く掘るけれど、設置面積はそこまでいらない(といっても1.5m×10mくらい。なんだかんだ要るやんて話ではあるが、横幅4mと1.5mはけっこう違う)。

毛管浸潤トレンチの仕組みを、製品としての完成度を高めたのがエコロンシステム、という感じがする。わからんけど。

エコロンシステムはエコロジーコロンブスという会社の商品で、電話して問い合わせたところ、代表の富安さんが北陸で使っている人として、Sさんを紹介してくれた。これまたSさんに電話をすると、ぜひぜひどうぞと受け入れてくださった。

使っている人がぜひ来てくださいと言ってくれるのだから、それはもう良いんだろう。どんな良いものなのか見たい。

ここのところずっと排水システムを調べている私に比べて、夫の理解度や関心はまだ低いところで、一緒に出掛けたくもあった。時空を共有しないと、ただwebサイトをみせて説明しても伝わらない。



目的地は岐阜に隣接した福井なので、高速を南下していく。富山はフレッシュな新緑がしっかりした緑に変わっていく時期だったけど、山が深まるにつれて、緑が新緑になり、場所によってはまだ枯山だったりして、季節が戻っていくみたいだった。

途中で西へ曲がって、福井に入っていく。Sさん宅は、九頭竜湖から北上した川沿いにあった。エコロンシステムが設置されているのは車を降りてすぐの、駐車スペースと家の間の空間で、地上部分は畑のために畝だてされていた。

本体は地下に埋まっているから、物自体はみえないが、管が何本か地上に伸びていて、浄化された水と汚泥層とにそれぞれアクセスできるようになっている。

浄化された水をみせてもらうと、透明かつ無臭。BOD値は5ppm以下だという。にわかの知識ではあるが、凄いことだと思う。合併処理浄化槽も、一般家庭がつながっている下水処理場も、BOD値は10前後だとか(自治体や年によってもけっこう違う)。

非電化・無薬品なのに高性能、というよりも、だからこそ、なのかもしれない。トイレを調べているときにも感じたが、土とつながって、生態系の一部になってるってことは、分解力=浄化力が強い。

ただ、日本の法律では、屎尿を土中に導くことは認められていないので、エコロンシステムは法的には認められないらしい。うーん。

合併処理浄化槽は、土中に埋めるものだけれど、頑丈なFRPでできていて、土と接続していない。土や生態系と切り離しているんだと思う。

土と接続するってことは、クリティカルに危険なものを流した場合、危険物質が土の中に残り続けるリスクがあるから、そのリスクを回避しているのかもしれない。

ただ、危険物質が流れる可能性は、トイレより生活排水の方が高そうなのに、そっちを縛る法律はないので、エコロンを認めない法律の整合性や正当性はよくわからない。

合併処理浄化槽でも、下水処理場でも、水は浄化されるが、浄化槽内には汚泥という塊がのこる。汚泥の多くは焼却されるか、埋め立てられるらしい。汚泥は汚物のまま、目につかない場所に隠される。

とはいえ人がエアポケットをつくれるわけではないから、処分される場所は、どこまでいっても自然界の一部ではあるよね。埋め立てがどういうことで、先々どうなっていくのか、私はよくわかっていないが、生態系に、しいては長い目でみたときに人社会に、何も影響がないってことは、ないよね。

屎尿処理の歴史をたどっていくと(参考:「ウンコはどこから来て、どこへいくのか----人糞地理学ことはじめ」湯澤規子)、現代の仕組みは、人が集まって住む都市化になんとか対応してきた、生態系にかなっているかどうかは二の次なものだと感じる。

人口が減っていく中で、散らばって住むことは電気水道下水の都市インフラ維持コストがかかりすぎるから、集約して住むほうがいいとよく聞くけれども、都市インフラがそもそもそこまで理にかなってないとしたら、それを基準に考えるのも違うのかもしれない。

屎尿排水処理でみると、オフグリッドで非電化・無薬品の浄化には、ある程度の土地の広さがいる。密集して住んでいると、分解が排出に追いつかない。



Sさん宅は、広い土地の中にぽつんと建っていて、敷地内には山水を引いている、じゃばじゃば出しっ放しの水道があった。止めると水が腐ってしまうから、出しっ放しにするらしい。

敷地の道を挟んだ反対側には川が流れていて、Sさんはその川が大好きで、川を汚したくなかったから、エコロンを導入したらしい。合併処理浄化槽から流れ出る水は臭くて、その水を川に合流させたくなかったそう。

設置が難しいのは、送電用の鉄塔の近くと、田んぼの近く。鉄塔が近いと微生物の働きが弱く、田んぼは地下水が干渉してくるらしい。うちは田んぼの隣だな…

川の周りを少し歩いて、案内してもらった。気持ちの良い川のある、気持ちの良い場所で、遊びに来たみたいだった。夏になったら本格的に川で遊ばせてもらう約束をした。

エコロンシステムは良いものだと思った。下水処理法を探している人がいたら、積極的に紹介したい。合併処理浄化槽以外で水洗トイレが接続できて、商品としてわかりやすく販売しているものって、たぶんこれしかない。



Sさんにおすすめされて、帰り道の途中で、白山中居神社に立ち寄った。

鳥居があって、杉の巨木が立ち並び、川を挟んだ向こう側に、白山山塊を背景に宮社がある、白山信仰の神社。

川は結界で、結界を通じて山の恵みそのものを伝える設計になっている。そういうふうに、しっかりデザインされている。なんて格好いいんだろう…これ以上のものって、ないと思う。


地域全体に侵し難い空気があった。ピンとなにかが張り詰めていた。

山の集落の方が、海の集落よりも不寛容な傾向がある。数日前に、そんな雑談をしたことを思い出した。どちらかというと、山の方が移住のハードルが高い気がしますよねと。

ここにきて、規律が厳しくてももっともだと、軽々しく話していたなと反省した。山に住む人は、水源を守る人なのだ。水源で何かあれば、流域全体に影響する。

この日まで知らなかったけれど、私が飲んでいる水も、水源は白山だった。

富山県西部の上水道は、白山水系から取水している。白山から、庄川が富山、手取川が石川、九頭龍川が福井、長良川が岐阜を流れて、それぞれ海に注ぐ。日本海と太平洋それぞれに、それぞれの川を通じて、水が流れていく。

汚水処理の情報収拾をしていたら、知らずに、飲み水の水源に来ていた。



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ライター|重文指定絹織織物「結城紬」産地で働いた経験を元に工藝や地場産業のライティングを行う|『ぼくたちはケアして表現するサル?』書籍化奮闘中|神奈川出身、茨城、札幌を経て富山在住|www.chieyabutani.com