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知らない人と海を見ていた

 先週の木曜日夜に非常事態宣言が全国に拡大した。明日から保育園は登園自粛。子どもとの二人体制の日々に備えて、今日は子どもを夫に任せて、自由時間をもらうことにした。
 といってもどこに行けばいいのか。お店や図書館では過ごせない。屋外にずっと座っているにはまだ寒い。それで、車で移動して、外に出たり車に戻ったりすることにした。

 家を出て、車で海を目指した。死ぬ可能性が高くなっている気はしないと前に書いたけど、そんなことはないと思い直した。富山では病院での院内感染で感染者数が増えている。いま交通事故を起こしても、十分な医療措置を受けられない可能性がある。COVID-19については身体に任せるけど、ほかの病気や事故に関しては医療に頼りたいなんて都合よくもいかないのだと思った。何かあっても致命傷にならないように、普段からノロノロ運転だけど、いっそうのノロノロ運転を心がけた。
 車からはランニングしている人やサイクリングしている人が見えた。走っている人は誰もマスクをしていなくて、少し安心した。

 視界にパッと海が開けると、心もパッと晴れやかな気分になった。天気が良かったので、海は青々としてすごくきれいだった。
 海に面した道路には車を停めて景色をみられる分離帯みたいなのがある。わたしはそこに車を停めて、窓を開けて、朝ごはんを食べた。波の音が気持ち良かった。展望スペースまで歩いて、海を眺めて、ストレッチをした。それから車に戻って、助手席に座ってPCを開いた。
 車があれば景色の良い場所で、海を見ながら仕事できる。車は動くプライベート空間だ。部屋と部屋が動いてすれ違ってるって面白い。

 昼食で一度家に帰って、午後はまた違う海辺に行った。富山湾にしては珍しく波が高くて、サーファーが2人波に乗っていた。富山湾にサーファーがいるのをはじめて見た。
 海沿いには歩いている人がいて、波打ち際に座っている人がいて、とはいえそれは数えるほどの、混んでしまうような量では全くなくて、でも停まっている車の量はいつもよりずっと多かった。
 車の中から海を見ている人がたくさんいた。
 車を横付けして、それぞれ車の中から、知らない人と一緒に海を見ていた。

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