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敬語は西を封じる

わたしの夫の出身地は三重。わたしは神奈川。なのでわたしたちは西と東の夫婦だ。三重は近畿ではあるが関西ではなくて東海、みたいな微妙な立ち位置なので、西のど真ん中ではないが、どちらかというと西マインドではあり、さらに夫は大学4年間を兵庫で過ごしてるのでさらに西が濃くなっている。

夫はツッコミ待ちの言葉、いわゆるボケをいう。それがわたしにはボケに感じられなくてただただイライラさせられる。

たとえば、引っ越して以来手をつけてなかった棚を時間をかけて整理したとき。「整理したよ!」というわたしに対して、「おーきれいになっとるやん。さすがオレやな」という夫。

はあ?と、イラっとしないだろうか。しかし夫的には、「ちゃうやろ!わたしやろ!」と言ってほしいらしい。そのやりとりをしたいらしい。それいらないと思ってしまうのはわたしが東の人間だかららしい。でもそんな面白くないし通じないボケ、松本人志がするだろうか?マインド的には西かつあまりセンスがないのかもしれない。そういうつまらないボケをやめて欲しいとは言うのだが、しみついてきたものを変えることは難しいらしく、よく小競り合いになる。

夫はこれまでも東の人と話していて、たとえば「わたし全然ダメなんだよね〜」という自虐発言に対して、ツッコミ待ちで「ほんとだよね〜」と返して、シーンとしてしまうことが多々あったという。それが西東の違いなんだと、私とケンカしてやっとわかったと言っていたのが2年前。そこから特に何も変わってなくて、わたしは今もやっぱりイライラしてしまう。

もうひとつ、わたしは文化系マインドなのに対して、夫は体育会系マインドの持ち主なので、親しくなった人にも、相手が年上である限り敬語を崩さない。なので、友人夫婦と話していて、わたしはタメ口、夫は敬語というのがよくある。

わたしは夫よりもひとつ年上なので、夫の体育会系マインドの発揮により、つきあうまでは敬語、つきあってからも結婚するまではずっと遠距離だったので物理的にも距離が遠く、おそらく年上として敬意が払われていて、西東の違いから来る違和感を感じることはなかった。夫の西は発揮されてなかった。

それが結婚してわたしは夫の身内になり、さらにボケにイジリが追加された。西には距離の近さの裏返しとしての身内イジリてのがあるんですよね。

これ、されると普通に頭にくる。何やってもダメやなとか。いいとこ何もないなとか。ブッサイクやなーとか。けっこうぐさりとくる言葉を言われる。言葉だけみたらモラハラみたい。これまた夫のセンスの問題なのかもしれないが。そして名誉のため書いておくとそれらも完全に冗談であって、夫はモラハラマインドは全く持っていない。でも言われると頭には来る。

体育会系との掛け合わせにより身内になるまで発揮されなかった夫の西。結婚するまでほんとに全然気づかなかった。私の友人たちは彼にはほとんどが年上になるから、体育会系マインドは今も発揮され続けていて、それはもうなんかすごく腰の低い好青年なので、もしこれを読んだら「えー!」と意外に思うだろう。

敬語だと標準語になるから、西マインドがあらわれにくい。敬語には西が乗りにくい。標準語は言葉だけじゃなくてマインドも標準化するのだね。

「わたしは子どもとの結びつきが一番強いから、大変なときもあるの」
「そうかな?俺も同じくらいじゃない?」
「っ!(イライライラ)どうしたらそう思えるわけ?」
「冗談冗談、そんなん太陽は昇らないゆうてるのと同じようなことやん。自明すぎてどう考えても冗談てわかるやろ」
「松本人志はそんなわかりにくいボケしないよね?」
「そのレベルに達してないんやからあたりまえやろ…
…ウケてるやん」

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