オリパラから見えたみらい@2021

東京2020パラリンピック競技大会が閉幕した。

パラリンピックは、様々な障がいのあるアスリートたちが、公平に個性や能力を発揮し活躍できる世界最高峰の競技大会です。
（公益財団法人東京オリンピック･パラリンピック競技大会組織委員会HPより）https://education.tokyo2020.org/jp/games/about/paralympic-games/

オリンピックの熱もまだ冷めやらぬ8月24日。パラリンピックの開会式が華々しく行われ、これからどんなドラマが繰り広げられるのかという期待とともに、世の中が進化する足音がすぐそこまで聞こえるかのようにも思えた。メディアでは、選手たちの頑張りはもちろん、パラリンピック競技や選手それぞれの障害というものに、理解を深め親しみを感じてもらおうと、わかりやすく解説をしながら、暖かみのある番組構成が印象的だった。が、なぜか私はどこか喉に小骨が刺さったままのような違和感を覚えていた。その原因が何なのか答えが見つからぬまま、閉会式を迎えていた。

閉会式から数日が経った頃、たまたま見かけたSNSでひとつのnote記事が目に止まった。

このしらいわよしこさんが書いたnoteは、パラリンピックに感動したおばあちゃんが言った「次郎もがんばればしゃべれるようになるんやないんか？」というタイトルで始まる、しらいわさんの母である「おばあちゃん」と息子の「次郎くん」にまつわる話である。（ぜひ読んでみてね）

障害者と一括りに言っても、スポーツができる人できない人、表舞台に出ることができる人出られない人、自分の状況や考えを発信できる人できない人、100人いれば100通りの状況に置かれている人たちがいる中で、障害者＝がんばりやさん、やればできるみたいなイメージに流されていくのは違うよな、後者の当事者や家族はどのような気持ちでパラリンピックを見ているのかなということがずっと気になっていた。

しらいわよしこさんは文中でこんなことも記していた。

“パラリンピックで障がい者のことを知ろうと思っても、それは無理だ。なぜなら障がいのある人の大多数は、パラリンピックと無縁な生活をしている。健常者の多くがオリンピックと無縁に生活しているのと同じように。”（しらいわよしこさんnote記事より抜粋）

もちろん体に障害があったとしても、その誰もが競技で記録を更新する、メダルを獲得する、スポーツを通じ己の限界を超える場があるのは現代を生きる人々の権利であると思っている。だが、常々私が感じていたことは、そもそもオリンピックパラリンピックと分ける必要性がどこまであるのだろうかということだ。

実は、男子陸上100mの世界記録は、9秒58（2021年8月現在）、 義足ランナーの男子陸上100mの世界記録は10秒57*（2021年8月現在）。この義足ランナーの10秒57という記録は、なんと女子陸上100mの世界記録3位に食い込めるタイムなのである。ちなみに私はどう頑張ったところで一生このタイムで走ることはできない。おそらく全世界の99%の人々も同じであろう。※世界陸連（IAAF）記録参照

もちろんパラリンピック競技の中には、車椅子バスケのように車椅子必須の競技もあり、すべての競技を同じフィールドで競うのには無理があるが、パラ独自の競技を残しつつ、競技によってはもうオリパラの壁を無くすことだって不可能ではないところまできているのである。今後どのようなみらいをつくっていくのが理想的なみらいに、より近づくのかを考えたとき、オリもパラもない、ひとつの大会があたりまえの文化となり、オリンピック憲章にもあるこの一文を本当の意味で叶えることができるのではないだろうか。

オリンピック・ムーブメントの目的は、いかなる差別をも伴うことなく、友情、連帯、フェアプレーの精神をもって相互に理解しあうオリンピック精神に基づいて行なわれるスポーツを通して青少年を教育することにより、平和でよりよい世界をつくることに貢献することにある。（オリンピック憲章より抜粋）

それから、理想的なみらいにより近づくためにもうひとつ。開会式での各国の入場を見ていたときに、頭から離れなかったことがある。それは、国や地域によっては、まだまだ障害者の人権はないに等しい扱いをされていることもたくさんあり、障害者の人口自体カウントされていない国や地域、一生暗い古屋に閉じ込められたままだったり、治療もされず死を待つだけのこともあるだろう。保険や福祉がない国や地域だってたくさんある。私たちが住む日本だって、まだまだ障害者に対する意識や理解が低いと言われて久しく、バリアフリーが整っていない場所もたくさんある。そんな世の中を今回のパラリンピックを機に、たくさんの国や地域に理念が届き、意識や価値観や文化として根付き、1日も早く1人でも多く、理想的なみらいにより近づくことを願ってやまない。